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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【一般】現代恋愛短編集

一目惚れしたクラスメイトの女子に告白したら『女の子が好きなの』って断られたけど神様に願ったら女体化した…………のに

作者: マノイ

「ごめんなさい。私、女の子が好きなの」

「僕も!」

「当たり前でしょうが」


 女子に告白しているのに男が好きなわけが無いだろう。


「同じものが好きなんて気が合うね。付き合おうよ」

「あれれ、話が通じないぞ。男にも君にも興味が無いって言ってるんだけど」

「そうなの!?」

「分かった。君、馬鹿でしょ」


 この男、倉知くらち 雄馬ゆうまは馬鹿ではない。


「てっきり僕の事を女子だと勘違いしているのかと思った」

「えぇ……」


 大馬鹿だ。


 倉知は体こそ小柄であるが、むさくるしい見た目であり中性的ですらない。

 誰がどう見ても男にしか見えない。


「それじゃあ水無瀬みなせさんは本当に男に興味が無いの?」

「うん」

「僕を振るための口実じゃなくて?」

「凄い。それを察せられるなんて」

「わーい褒められた」

「褒めてないから」


 呆れたように嘆息するのは倉知のクラスメイトの水無瀬 瑞樹みずき


 可愛い系の顔立ちだけれど髪をベリーショートで格好良い系にまとめているので可愛さと格好良さが同居している風貌だ。

 男としては顔よりも破壊力抜群な大きさの胸の方が気になってしまうかもしれないが。


 そんな水無瀬と倉知は高校二年に進級した直後に出会い倉知が一目惚れ。

 その日に勢いに任せて告白しているというのが今の状況である。


「それに口実じゃなくて本当だよ。私、生粋のタチだからね」

「タチ?」

「ふ~ん、知らないんだ。それならそれで知らない方が良いよ」

「??」


 タチは簡単に言うと『攻め』のようなものだ。

 色々と種類があるので興味がある人は調べると面白いかもしれないが責任は取らないぞ。


「とにかく、私は男の人と付き合う気はないの。君が私好みの可愛い女の子だったら付き合ってあげても良いけどね」

「分かった!女の子になる!」

「え?」


 倉知は一目散に走り出した。


「女装じゃダメだからね!」


 しかし背後から水無瀬に言葉をかけられた直後、綺麗にヘッドスライディングした。


 女性服を入手するつもりだったのだろう。


 あまりにも単純である。


「くっ、それじゃあどうすれば!」

「諦めなって」


 水無瀬は地面に伏せる倉知の元へと歩み寄り、ハンカチを差し出した。


 好きな女の子に優しくされた男子が理性を保つことなど出来るはずが無い。


「やっぱり好きだああああ!」

「おっと」


 衝動的に抱き締めようとするが軽やかに避けられてまた綺麗にヘッドスライディングする。


 審判からセーフ判定を引き出しそうな程の勢いだったが、行動は完全にアウトである。


 リクエストの必要すらない。


「そんなに私の事が好きなの?」

「うん」

「どこが?」

「顔と体!」

「えぇ……」


 優しいところ、というテンプレですらなかった。


 だが当然である。

 見た目での一目惚れであるため、それ以外に理由など無いのだから。


 とはいえ言い方を工夫すればもう少し印象良く出来たかもしれないのに。


 しかもこの男、更に余計なことを言い放った。


「水無瀬さんとえっちなことしたいです!」


 この時点でアウトどころか警察沙汰になってもおかしくない。


「う~ん、欲望に忠実だね。大減点だよ」

「水無瀬さんの体を好き放題したいです!」

「なんでもっと酷い言い方に変えたの!?」


 倉知は下半身に忠実な男だった。


 それなのに水無瀬は倉知の最低な告白に律儀に付き合ってあげた。


 聖人だろうか。


「でも気持ちは分かるかな」

「え?」

「私だって私みたいな女の子が目の前にいたら襲っちゃいそうだもん」

「ですよね!」


 性人だった。


「じゃあ僕が襲ってもおかしく無いですよね」

「おいこら」

「ふぎゃ!」


 倉知は再度抱き締めようと飛び掛かったが、リプレイを見ているかのような綺麗なヘッドスライディングを決める羽目になった。


「今度手を出そうとしたら二度と口きかないからね」

「うわあああん!」


 対応するのが面倒臭くなったのか、水無瀬はきっぱりと拒絶の意思を示す。


 倉知は悲しみの涙を流しながらどこかへと走り去った。


「変な男の子」


 残された水無瀬はその後姿を見ながらボソリとつぶやく。


「あれが可愛い子だったら全力で愛でたのになぁ」 


 その目には昏い何かが宿っていたが、残念ながら倉知はそれを確認することが出来なかった。


――――――――


 失意の倉知が向かったのは神社だった。


「神様、僕を女の子にしてください!」


 好きな相手が女の子を好きだと言うのなら、自分が本物の女の子になれば良い。


 倉知にはその方法が神頼み以外に思いつかなかったのだ。


 もちろんそれ以外に方法など無いに等しいが。


「お願いします!全財産をお賽銭に入れますから!」


 そんなことをしても当然効果があるわけが無い。


 それでも倉知は願い続けた。


「神様、僕を女の子にしてください!なんでもしますから!」


 いくつもの神社に訪れて必死に願った。


「神様、どうすれば僕を女の子にしてくれるんですか!」


 何故か寺にも訪れて願い続けた。


「神様、僕を女の子にしろって言ってんだろ!」


 願いが叶う気配が全く無いため、倉知は神様にキレ始める。


 神様にとっては大迷惑だ。


「もし僕が死んだら何としてでも神様の能力奪って畜生道に堕としてやるからな!」


 しかも今度は神様を脅し始める始末だ。


「神様より偉い人になってラブコメの世界の負けヒロインに転生させてやる!」


 神様より偉い人って誰だよ。


「超超超偉い人と仲良くなって神様がブラック上神の部下になるように勧めてやる!」


 いつしか倉知は本題を忘れ、神様を脅す為だけに神社に訪れるようになっていた。


 それは最早呪いとも言えるくらいに気持ち悪いものであった。


 しかしそれは決して無駄な行為では無かった。


 まさかの奇跡が起きたのだ。


 ある日、いつものように倉知が神社で神様を脅していると突然目の前が真っ暗になった。


「あれ……僕……」


 倒れた倉知は救急車で運ばれ、気が付いたら病院のベッドの上で横になっていた。


 ぼんやりとした意識が覚醒すると、白衣を着たスキンヘッドの医者らしき人物が自分を見下ろしていることに気が付いた


 その医者は倉知が意識を取り戻したことを確認すると、穏やかな声色で話しかけた。


「良いですか落ち着いて聞いて下さい」


 告げられた言葉はあまりにもショッキングな内容だった。


「君は女性になりました」


 目線を下にやると、そこにはたわわな果実が実っていた。

 下半身のアレの感触も無くなっている。


 倉知は神様の力により女体化してしまった。


 しかもその姿は水無瀬そっくりだったのである。


「イイヤッフウウウ!」


 これで水無瀬と付き合うことが出来る。


 倉知の頭の中はそのことで一杯だった。


 いや、嘘である。


「へぇ~ここってこんな風になってるんだ。あ、ここ触ると気持ち良い」


 真っ先に女体の秘密を確認し、存分に堪能したのであった。


 下半身に忠実なところは変わっていないのである。


――――――――


「水無瀬さん!」


 女体化した倉知は喜び勇んで水無瀬を呼び出した。


 一刻も早く付き合ってイチャイチャしたかったのだ。


 倉知にとって水無瀬の体を堪能出来るのならば、男の体でなくても良かった。


 だが倉知は肝心なことを調べていなかった。


 『タチ』の意味を。


 それを知っていれば最悪の未来を回避出来たかもしれないのに。


「ええ、まさか倉知君なの!?」


 水無瀬を待っていたはずなのに聞こえたのは何故か野太い声。

 やってきたのは見たことのない男だった。


「誰だ!?」


 これから水無瀬とあんなことやこんなことを出来るという期待でワクワクしていたところに水を差される形になり、倉知は苛立ちを隠せない。


 だがその相手こそが肝心の待ち人だったのだ。


「私の事分からないかな。水無瀬だよ」

「え?」


 そんなはずはない。

 水無瀬は今の自分と同じたわわな女の子だったはず。


 その人物の胸元はまっ平なのだから別人だ。


 そもそもどう見ても男なのだが、倉知は胸でしか判断していなかった。


 しかし残念なお知らせがある。


「私も倉知君と同じで性転換しちゃったみたい」

「ええええええええ!?」


 邪悪な呪いを浴びせ続けられた神様がブチ切れて嫌がらせをしたのだろうか。


 さて問題です。


 倉知が女の子になったけれど、好きなのは『女の子の』水無瀬だった。

 水無瀬が男の子になったけれど、女の子が好きなことは変わらない。


 この場合、何がどうなるのでしょうか。


「倉知君は私好みの女の子になったんだね。約束通り喜んで付き合うよ」

「いや、ボクはちょっと……」


 正解は『立場も入れ替わる』でした。


 倉知から水無瀬への片思いが、水無瀬から倉知への片思いへと変わったのだ。


 倉知としては水無瀬の女の子の体をアレコレしたいから付き合いたかっただけであり、相手の姿が男だったら全力でノーセンキューなのだ。


 だが倉知は逃げ出せない。


 何故ならば、先に告白してしまったのは倉知なのだから。


「ボクっ娘きたー!」

「ひいっ!?」


 水無瀬視点では理想の女の子が目の前に現れた上に、その子と付き合える。


 それゆえ目が据わっていた。


 一方、倉知視点では興奮した男にハートマークをした目で見られているようなものだ。


 恐怖でしかない。


「はぁはぁ、たっぷり可愛がってあげるからね」

「怖い!」


 水無瀬は涎を垂らしながら倉知へとにじり寄る。

 こんな大物を逃がすわけが無い。


「付き合ってても無理矢理はアウトだよ!」


 倉知は無い知恵を絞って水無瀬を止めるための意見をどうにか捻り出した。


 確かにこれは普通ならば正しい話だ。


「ぐへへ、無理矢理じゃないからセーフだよ」

「なんで!?」


 しかしそうは問屋が卸さない。


 水無瀬はスマホを取り出してある音声を再生した。


『水無瀬さんとえっちなことしたいです!』


 なんと先日の倉知の台詞を録音してあったのだ。


「な、なな、なんでこの声なの!?」


 しかもその声は今の女の子の倉知の声になっていた。


 あの時はまだ男だったはずなのに。


「不思議だよね。勝手にこうなってたんだ。弄ったわけじゃ無いよ」


 それが本当であるならば、倉知は水無瀬との性行為を自分から望んでいる証拠になってしまう。


 しかも前後の話の流れまで録音されているとなれば、意図的な切り抜き行為で無いことも証明できる。


「あ……あ……」

「ね、何も問題無いでしょ」


 水無瀬は再度倉知に向かってにじり寄り、舌なめずりをする。


 しかし水無瀬はあることを思いつき、歩みを止めた。


「そうだ、倉知君に確認したいことがあるんだ」


 そう言うと水無瀬は穿いていた男物のスラックスを下着ごとずりおろした。


「何やってるのおおおお!?」


 あまりの奇行に倉知は思わず叫んでしまう。

 水無瀬は傍から見れば女の子の前で下半身を露出している犯罪者だ。


「元男として、コレどう思う?」

「どう思うって…………でか!?」


 ソレはあまりにも立派な物だった。

 それこそ元の倉知でも到底太刀打ちできない程に。


 しかもその立派なものは更に立派に反り立っていたのだ。


「なんでビンビンなのさ!」

「雄馬ちゃん見たら興奮しただけだよ」

「ボク……ソレ、入れられちゃうの?」

「ヒィヒィ言わせてあげるから楽しみにしててね」

「嫌だああああ!」


 水無瀬は下半身を露出したまま倉知に再びにじり寄る。


 タチを自称する程に攻めっ気たっぷりの元女の子。


 倉知は彼女の全力を身をもって味わうことになるのだろう。


 一生かけて・・・・・


「私は元女の子だから、女の子を気持ち良くする方法をたっぷりと知ってるからね」

「助けて!」

ハッピーエンド!

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