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十字路の悪魔  作者: 愛嬌
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二話

「ふふ。そんなに脅えなくても、大丈夫ですよ。」男は微笑みながらそう呟くと扉を開き手招きをする。「さあ、おいで。」俺は脅えながらも男の後を追いbarを出るとそこは街灯が消え切った街ではなく広く清潔感のある玄関だった。「こ、ここどこだ、」「ここは私の家だよ。」「じゃなくて!さっきまでBarにいたんだぞ!?なのになんでお前の家に、」「細かい事は今説明しても分からないでしょう。また追々話すのでとりあえず上げってきてください。」男はリビングに続く扉を開く。俺はリビングから見える光景に唖然とした。場所は東京。建物全てを見下ろせる絶景がそこにはあった。普通に生活していれば見ることも出来ないであろう絶景に感動する中で非現実に足を踏み入れてしまった事に対する恐怖感は消えはしなかった。「綺麗だろう。君も住めばいい。ここじゃなくても何処でも君が住みたいところに行きたい場所に行けばいい。君を縛る金も時間も、もう君を縛りはしない。」「住めるのか、、こんな場所に。行けるのか行きたい場所に。」「ああ。行けるとも金は無限にある時間も無限に等しいほどある。」「、、、」現実感のない非現実は、いや。現実は僕の欲望を増幅させる。(ここから見えるもの、いや全てを手に入れる、、)「ははは!いいね!もっと出せよ!殺してきた感情を欲望を!」男は声を荒げ笑い出す「ははは!実にいい!欲望の香りがする!最高にハイな気分だ!!」「、、、これが、悪魔の囁きか。」俺は口を開き呟くと男は冷静な顔に豹変し微笑みだす。「そうだね。君がもし人間ならばこのまま契約に持ち込むだろう。だけど君は違う。もう人間じゃないんだから」「悪魔、、なんだよな。」「ああ。あの時君が「「やれるもんならやるよ、失うもんも未練も何もねえからな」」あれが契約書のサインで、握手が拇印だ。」「はっ。これが悪魔のやり方か。で?こんな所に連れて来て何をさせようって言うんだ?悪魔の仕事か?」「ええ。それもあるんですが、とりあえず。その安いスーツを脱ぎましょうか。」「え?」「さあ。こちらへ。」男は広いリビングを後にクローゼットへ向かった。これまた広いウォークインクローゼットだった。クローゼットの中には山ほどのスーツが左右横並びにされていた。「ん~君に似合うスーツはどれかな~。あ、欲しいのあったらあげますよ。」「って。言われてもな、、」悩みながらも横並びにされているスーツを辿り歩いて行く。(ん~ここまで多いと何が良くて何がダメかわかったもんじゃねえな)悩みながら歩んでいると一番奥に辿りついた。そこには傷一つない時計が並べられていた。「す、すげえ」ブランパンの時計が並べられ上からの照明が反射し輝きを放っていた。「ああ、そうだ。時計も差し上げますよ。」「え?いいのか?」「ええもちろん。何か欲しい物ありました?」「いや、ここには並んでないんだが、、」呟きながら男の左腕に目を向ける。すると男は微笑みながら左腕に着けていた時計を俺に差し出した。「どうぞ?差し上げますよ」「ほんとか!?」「ええ」男から時計を貰い左腕に着ける。初めて着ける高級時計の重さは冷や汗すらかかせた。「ふふ、そんな脅えなくても大丈夫ですよ。ただの時計ですラジウムは使われてません。名前はブランパン ヴィルレ デイデイト。2017年に出た物です。値段こそそう高くはないがこのシンプルなデザインは自分自身の魅力を真に引き出す、良い時計ですよ。あ、このスーツどうですか?」男が手渡してきたのはBrioniのスーツだった。「こ、これか。」(シャドーストライプか)「シャドーストライプはお嫌いですか?」「いや。嫌いって訳じゃねえけど、、似合うか?俺に」「ええ。一度着てみればいい。着終わったら呼んでください」そそくさとヨレヨレのスーツを脱ぎBrioniのスーツを着る。姿見の前に立つ。左手にはブランパン。シャドーストライプのスーツを着こなした俺がそこに居た。「おい!着たぞ」男は扉を開き俺の姿を見て動きを止めた。「おお。予想以上に似合いますね。後はそのだらしない髭を剃れば完璧なんですけど、もう時間がないようだ。」「も、もう行くのか。」「ええ。悪魔の仕事と言うのがどんなのか見せてあげますよ」男の一言に唾を飲んだ。これから悪魔の仕事をすることを心身が脅えている。「最初の方は私に付いて来て見て仕事を覚えてください。緊張しなくても大丈夫ですよ。ただ私が人間どもと契約を結ぶところを見とくだけでいい。」「あ、ああ。」俺は男の言われるがままに付いて行く。玄関に行き男が扉を開けるとまたもやそこは廊下ではなく夜の町中だった。「また知らない場所かよ!どこだここ!!」「京都です」「京都!?、さ、さっきまで東京のど真ん中にいたじゃねえか、どうなってんだ。」驚きながら周りを見渡すと後ろには高層マンションどころか見知らぬ一軒家の玄関前だった。「あれ!高層マンションが一軒家になってやがる、、」「さあ。こっちです」「お、おう」見向きもせずに男は歩き出す俺は何処に向かっているか分からないまま暗い夜道を男と共に歩んでいく。(静かだな、、町の住民たちは寝ちまってるんだろうか)「どこに向かってるんだ?」男に問いかけると男は時計を確認しながら喋りだす「十字路です」「十字路、、」俺はロバートジョンソンのクロスロード伝説を思い出した。真夜中の12時。十字路でギターを弾くと男が話しかけてくる。そいつにギターを渡すとギターをチューニングし、一曲弾き。また持ち主に返す。ギターを渡された人間は信じられないほどギターが上達したと言う。(本当だったのかあれ、、)「さあ。着きましたよ」男と共に着いたのは十字路。だが誰もいない。「あれ、誰もいねえけど。」「ええ。後10秒後に来ます。」カタ、カタ、カタ、カタ。暗闇の中から足音をたたせて一人の男がこちらに向かって歩いてくる。「なんだ、誰か来たぞ。」「今回の仕事はあの人と契約することです。」「あいつとか。」暗闇から顔を出してきたのは物凄い剣幕の髭面の男だった。男は俺たちが立っている十字路の真ん中に立ち止まり生き急ぐ。「はやく、、はやく!!」男は苛立った様子で時計を見ながらアルコール臭い吐息を混ぜながら呟く。「はやく、!」「お、おい!どうしたんだ、、」思わず話かけたが男はピクリとも反応せずジッと時計を見続けた。そんな男を見て俺は驚き口を開く「なんだこいつ、目の前にいる俺たちに見向きもしねえ。どうなってんだ。」「私たちの姿はまだ彼には見えてないんですよ。」「え?、そりゃどういうことだ」「彼はまだ踏み込んでないんですよ。死の直前に。本来人間と言うのは悪魔やらが見えない生き物。そんな生き物が悪魔と契約するには。どうするか。そう。十字路に立ち深夜0時直後に悪魔を呼び出す。すると人間は少しだけこちら側に近づけるんですよ。、、生きながらね。」「死に近づく、」「おっと。そろそろですね。12時直後になるとこの男に私たちの姿が見えるはずです」「緊張するな、、」時計がちょうど12時を差し髭面の男が物凄い剣幕で言い放つ「おい!悪魔ッ!!どこだ!早く出てこい!!!契約してやる!」男が言い放ちあたりを見渡した後。目の前にいる俺たちに気づいた。まるでいきなり目の前に現れたように男には感じるのだろう。男は俺たちの姿を見て驚きのあまり数秒硬直したのだ。すかした悪魔の男は言い放つ。「何が望みだ。なにが欲しい、お前の望みを叶えてやる。」悪魔が呟く。囁くように気味の悪い笑みを浮かべさせながら。髭面の男は悪魔の声に続く「お、俺の望みは、、」男が何かを言おうとした瞬間。なんとも言えない香りが漂ってきた。独特な癖になるような香りが頭を包み込む。鼻から続き、肺。脳へと循環していく。感情が高ぶりだす。(なんだ、これ!これは、何なんだ、、)高揚感に包まれ戸惑いながらも男の言った言葉を思い出した。、、)(ははは!いいね!もっと出せよ!殺してきた感情を欲望を!ははは!実にいい!欲望の香りがする!最高にハイな気分だ!!)(これの事か、これが)「欲望の香り」和成は笑い出した、悪魔のような笑みで。


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