上限の書ほしーーーーーー
武道会でボコボコになった翌日。筋肉痛の体を労わりつつ、宿のベットの上で目を覚ます。
前の日に開けていた窓から入る風が心地よく、すっきりと目覚めることが出来た。
前の日の自分を心の中で称えつつ、ベットから体を起こす。
朝食としていつの間にか机の上に置かれていたパンを頬張り水で流し込む。
小麦の風味が自分をなんとも言えない気分にしてくれる。宿の古ぼけた扉を開け、埃っぽい手すりに
体重の1割ほどを預けながら階段を降りる。一歩歩くたびに階段の木が音を立てる。音に慣れてくると階段が
途切れた。目の前には扉。そのドアノブを握りゆっくりと回す。見慣れた街並みが広がり、さっき感じた風が頬を撫でる。
少し欠けた石畳の街並みを眺めつつ、歩を進める。目的は町外れの富豪の家。腰にはずっしりとした重みを感じる。
少し時間が経ち、目の前にいかにも金持ちが住んでいそうな屋敷が現れた。さっき見た宿の扉とは比べるのも勿体無いような扉のドアノッカーに手をかけ叩く。
すると、奥から執事の様な風貌の男が出てきた。
「…何の用でしょうか?」
「ここの主人を出して貰おう。取引がしたい。」
「成程…ではこちらへ。」
そういうと執事はさっさと屋敷の奥へ進んでいった。執事の後を追いかける。
屋敷の長い廊下には高そうな壺などが置いてあり、少し神経質になる。
「この部屋です。どうぞ。」
そう言われて中に入ると小太りのおっさんが椅子に座ってこちらを見てくる。少し筋肉質で、目元は
威圧感を感じさせる。
「なんの用だね…小僧。」
「突然の訪問失礼します。突然なんですが…これ、見てくれんませんか?」
そう言って腰につけていた袋の中身を机の上に出す。大きい金属音が反響する。
「何だ…金貨か。」
「はい。この金貨であなたの持っている上限の書を譲ってはもらえませんかね?」
「どこで私が上限の書を持っていると知った?」
「闘技場で耳にしましてね。あなたが武道会の優勝者から上限の書を買っていると。」
少し悩む様な表情をした後、おっさんはため息をつく。
「わかった。上限の書は譲ってやろう。」
「ありがとうございます!」
「ただし…」
「?」
「少し私の用事に付き合って貰おう。」