01 試験中に思い出すとか反則です。
王立学園入学試験の日。
「貴族じゃなければ、絶対に来ないわ」
いわゆる成り上がりの伯爵家の長女として、貴族の義務である王立学園の入学試験をやる気も大した下準備もなしに受けに来た。
ちなみに私は、第一王子殿下の婚約者という位置付けだ。
初対面の時の、第一王子殿下の微笑みは、今も私の人生の重大事件のひとつだけれど、ただそれだけだ。なぜ選ばれたのかについては、今も闇に包まれている。
「ずっと一緒にいようね。ルルーシア」
「えっ?!」
初対面の会話だ。王太子妃候補に、選ばれる要素は、特になかったと思う。
周りの貴族令嬢や令息たちの熱気がすごいなぁ。なんて、緩く構えながら着席し、試験問題を表に返した瞬間異変は起こった。
――――私、この問題、知っている。
なぜ知っているのか不思議に思いながらも、知っているものは仕方がない。調子に乗った私は、次々と問題を解いていった。
「え? 満点でもおかしくないよ?」
私は、何も知らない七歳の子どもだった。
試験の答案用紙が回収されるその瞬間までは。
試験の解答用紙がスローモーションで回収されていく中、私はすべてを思い出す。
「あっ……あぁぁぁああ?!」
おいおい名前でも書き忘れたのか? とでも言いたげな、周囲の視線なんて気にならない。
だって、私は気がついてしまったのだ。ここが、前世で大好きだったあの小説の世界であることを。
そして私は、第一王子の婚約者にして、悪役令嬢ルルーシア・フリーディル……らしいことを。
子どものころから、なぜか貴族のあこがれである王立学園に興味を持てなかった。いや、むしろ第一王子の婚約者にも関わらず、なぜか避けていたように思う。
父は、「自由にすればいい」という主義の人だった。だから私は、魔力測定試験を兼ねていることで貴族の義務になっている王立学園の入学試験を、準備もやる気もないままに受けに来た。
今にして思えば、記憶を取り戻していなくても悪役令嬢へのフラグを無意識に避けていたのだと思う。それなのに……当日にこの仕打ち。私は運命の神様を恨んだ。
いや? まだ、悪役令嬢避けられるんじゃない?
成績上位者は、所属クラスを選択することができる。
ルルーシアは、優秀な貴族が所属する特待クラスだった。
つまり、それ以外のクラスを選べば……。
はっきり言って私は体育会系だ。
令嬢の鑑を目指して、ヒロインたちに『ざまぁ』するのはたぶん無理!
ファンタジー世界に来たら、どんな役割になりたいかと考えたこと、みんなあると思うけど、私はお姫様より冒険者になりたかった。倒したドラゴンのステーキが食べたかった。
「目指すのは、庶民の登竜門。冒険者クラス!!」
実技試験をある程度の成績でクリアできれば、おそらくクラスの選択権を手に入れることができるだろう。このままでは自動的に特待クラスになってしまう。
こうして私は貴族令嬢は通常免除される実技試験を受けることを決意した。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「ルルーシア? 何で実技試験受けてるの?」
ところで、何で第一試合から私は第一王子と対戦しているんですか?
第一王子の疑問はごもっともだ。私も首をかしげる以外にできない。
でも、もう引くことはできないのだ。私の楽しい冒険者ライフのために、お手合わせ願います。
悪役令嬢ルルーシアは、闇の精霊魔法の使い手。
いかにも悪役と言った魔法だけれど、精霊魔法の使い手は国に手厚く保護されている。
といっても、私は今まで一度も召喚に成功したことはない。むしろ、チャレンジしたことすらない。おそらくこれも無意識で、悪役令嬢に繋がるフラグを避けていたのだと思う。
でも、そうも言っていられない。ここで負けてしまっては、クラスの選択権が得られないかもしれない。
なんでもいいから、闇の精霊! 来てください。私は、手を組んで祈りを捧げる。
『運命に抗うか?』
「え?」
その声が、鼓膜を揺らした瞬間、黒い剣が私の手の中に現れる。剣は踊る。勝手にクルクル私の体を操るように。
「ひっ……きゃああああ?!」
私の混乱と裏腹に、王国騎士団直伝の美しい王子の剣を華麗に捌く黒い剣とそれに操られる私。そして、体育会系の私は、だんだんとタイミングを掴んでいく。
「楽しくなってきたぁああ!」
肉体の年齢に精神は引っ張られるのかもしれない。だって、冷静な判断をするならば、こんな風に優勝候補に勝ってしまうなんてダメに決まっている。
ましてや相手は第一王子なのだ。殿下なのだ。不興を買ってしまっては、明日の断罪に繋がる。
最終的に、剣を弾かれた殿下が物凄く悔しそうに「参りました」と言った。
そして私は、初めての召喚魔法のせいで魔力が空になってしまい、アレス殿下の腕の中に、倒れてしまった。
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