日常生活
「朝ごはんまだ?時間ないんだけど!」
バターがいい感じに茶色くなったころ
食卓の方から何度も耳にしたことのある
声とフレーズが聞こえた
私は牧野あかり38歳
2つ歳上の会社員の夫と、15歳になる息子がいる
夫は大学の先輩で、大恋愛の末
私が大学を卒業したタイミングで結婚
翌年、息子が産まれた
夫はそこそこの稼ぎもあって私が働く必要もなく
毎日、夫と息子の帰りを待つ生活
料理、掃除、洗濯、買い物をしたら少し昼寝をして
唯一の趣味と言ったらいいのか
ピアスやネックレスをハンドメイドで作っている
ノルマとかがあまり好きじゃないから
好きな時に好きな物を作っては
たまに、ごくたまにネットで販売している
コーヒー代くらいにしかならないけど
仕事じゃないんだから、別に気にもならない
「母さんまだ?俺、朝練ある!」
メープルシロップとかかけておしゃれにしてみよう
と思って作り始めたものの、急かされたから
そのままなんかの景品の白い皿の真ん中に
トンと乗せて目の前に出した
数口でそれはもう無くなり洗い物が残されただけ
「いってきます!!」
バスケを小さい頃からしている息子は
何を入れてるのかよく分からない程の大きさの
リュックを背負って出かけていった
「母さん、俺は普通の食パンで」
もう一人の息子
いやいや、夫は昔ながらの昭和の男というのか
家事は妻のやるものという考えを持っていて
基本的に家では何もやらない
40歳ともなれば、働き盛り真っ只中で
仕事で帰りが遅いことがほとんどだ
息子が高校生なこともあり育児を手伝って
と思うこともなく
夫が何をして、何を考えていたって何にも思わない
食パンがいいのなら食パン焼きますよ
私もあっさりとした性格ながらも
大事な人には尽くすタイプみたいで
仕方ないなと思い通りにしてみせる
ありがとうと一言言われたら
それでいいかと思えてしまうのは
私の長所だと自負している