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「コレラの注目をなんとかアレフさんに向けさせ続けるには、私達がアレフさんの傘下であるとコレラ側に思わせることが一番手っ取り早いです。」
バレルは周りの戦況に気を配りながらアレフに説明を続ける。
「ミレノアが言い出したのは偶然に過ぎませんが、私は遅かれ早かれアレフさんをトップに置いた組織でなければ、先はないと思っています」
バレルの先を見据えた組織作りにアレフはただただ感嘆するばかりではあった。
だが、同時に自分個人の復讐の話がなんだか大きな話になってきていることが奇妙であった。
「勝手ではございますが、わたくしバレルはおじさん革命軍の【幹部】と名乗らせてもらいますこうすることでアレフさんを背後に感じるコレラ政府はうかつに我々に反撃してはこないと思います」
遠くの方では分身のバレルがコレラの兵士を倒している。
「我々に反撃をする前にデビルスを殺したアレフという謎の脅威への対策を施したいと考えるはずです」
バレルの話は筋しか通っていなく、わかりやすく、アレフはただただ頷くだけであった。
「お・・・おっけー、バレルを幹部にします~」
アレフは言われるがままにバレルを幹部にした。
「すいません、あまり長々と話している時間はこれ以上なさそうです。とりあえず、今勝たなければ先はありません」
「たしかにそうね」
ミレノアは大きくうなずく。
「ですので、援軍が来る前に、アレフさん、そして実質デビルスを殺したことになってるミレノア、二人はここから早く立ち去ってほしい。そうすれば、コレラ側はこの第5労働場に戦力を固めることができなくなる」
ミレノアがアレフの手を握った。そして、駆け出した。
「おじさん!いこう!」
「えっ?おまえ、いいのか?別れの挨拶とかさ・・・」
「今そんな状況じゃないでしょ~」
アレフはミレノアに引かれる形で、駆け出した。ミレノアはもう、振り返るつもりはないようだ。
「アレフさん!妹をよろしくおねがいします」
バレルが深々と頭を下げた。その姿は、おじさん軍団の幹部なんてものではなく、妹思いの兄であった。好青年の姿そのものであった。
自分の好きなように復讐をしていけばいい・・・そう考えていたアレフはここで【責任】が生まれた。
絶対にミレノアを死なすわけにはいかないと頭を下げるバレルを見て、その時のアレフは思ったのである。
「任せろ!俺はデビルスを殺したおじさん軍団隊長のアレフだ」
「隊長ってなんかダサいよ」
涙声のミレノアが言った。
猛スピードで走るミレノアに手を引かれてアレフも走る。
そのアレフの肩になにか冷たい水滴がかかる。
「ダサいかな・・・じゃあ隊長以外になんかある?」
「おじさんはおじさん。おじさんが隊長って意味だよ、もう」
「意味わからん」
「あはは」
二人は走る。
銃声や爆音が鳴り響く戦地を背中にして、地面をける。
「アレフさんは次階の騎士団長を討伐にいかれたぞーーー!!」
バレルの分身の一人が叫ぶ。湧く緑系たち。
いつの間にかバレルの復讐は、革命としての役割を担うようになっていた。
「そのまま、やすやすと行かせるかよ!」
ドゥゥン!
アレフ達の背中に向かって一発の弾丸が放たれた。
しかし、アレフたちはそんな銃声に気づくことができない。辺りは喧騒につつまれている。
弾丸は、アレフの背中めがけて、一直線に飛んでいった。
「アレフさん!後ろ!」
バレルが直撃寸前で気づき叫ぶと。
だが、叫んだときにはもう遅い。
弾丸がアレフの背中を突き抜けていった。
アレフは膝から崩れ落ちた。
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