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コレラの兵士たちは、興奮する緑系民族を抑えるべく武器を手にとった。


「おい!お前ら静まらんか!デビルス騎士団長が殺されたなんてあるわけがなかろう」


兵士たちはまだデビルスが殺されたことを信じることはできなかった。そんなことは、天地がひっくり返るほどありえないとされていたことである。


騎士団長クラスがやられるというのはそれだけとてつもない影響を及ぼす。


「これを見よ。虐げられた緑系民よ。ここにデビルスが所持していたペンダントがある。これがなによりの証拠だ。もはや我々がコレラ政府に弾圧を受ける理由はなくなった」


兵士たちは銃や魔法、剣を使い労働を放棄した緑系民族たちを再び制圧しようとする。


「お前ら。今は労働中だろうが。さっさと持ち場に戻らんか!」


振り下ろされる剣、鳴り響く銃声、爆音が響く魔法弾。あたりは一気に戦争の模様に様変わりした。


「俺達はもう・・・お前らの言うことを聞く必要はない」

「我々はもうあの魔武器に怯える必要はない」

「我らを解放していくれた【おじさん革命軍】の名にかけて、緑系の自由を取り戻す!」


モンスターとのハーフである人外と呼ばれる種族。彼らは普通の人間と比べ、身体能力が高い傾向にある。それ故に基礎魔力も高い。


「すごい・・・武器を持った兵士たちを押している・・」


アレフは一気に変わった眼の前の風景を呆然と見ていた。


さっきまで長閑な田園地帯であったはずなのに、いまや革命を起こす民族達の熱い熱気に包まれている。


「女と子供は避難させるんだ!魔力の高いもの、そして戦えるものは兵士の制圧を」


緑系民族たちがコレラの兵士に対し上回っているところは身体能力だけではなかった。


それはリーダーの存在である。


デビルスという指揮官を失ったコレラの兵士、それに対し緑系にはバレルがいた。


バレルはミレニア同様、【植物魔法】を使用することができるようで、多人数に分身し、指揮をとっていた。


避難をさせるバレル、女子供を守るバレル、戦況が不利になりかけたところに現れるバレル、そしてすべてを統括し指示を与える屋根に登ったバレル。


アレフが確認しただけでバレルは5~6人に分身し、躍動していた。


「すごい・・・バレルのやつ、こんなにできる人間だなんて・・・」

「アレフさん、大丈夫ですか?流れ弾とかあたっていませんか?」


バレルの分身の1人とミレノアがアレフの前に帰ってきた。


「おぁ・・・お前、すごいリーダーシップだな」

「兄さんは普通にしてても10人には分身できるからね。私はおじさんの魔力分けてもらって6人が限度。まぁあの時は回復にほとんど魔力当てたわけだけど」


ミレノアが得意げに胸を張る。


「いや、お前がえばることじゃないだろ。あと、【おじさん革命軍】ってなによ」

「私達のグループ名的な感じです」

「勝手に何作ってるんだよ!ほら、あそこ見てみろよ」


アレフが指差した先には緑系の男集団が天に拳を掲げながら「おじさん!おじさん!

おじさん!」と叫んでいた。


「なんか俺死んでないのに神格化されてきている気がするんだけど・・・」

「いいじゃない、おじさんは私達緑系にとってそれだけ大きなことをしたのよ」

「申し訳ないですが、アレフさん。神格化に対しては私も賛成です」


思慮深そうにバレルがいった。彼が言うならなにか理由があるのだろう。


「アレフさん。このペンダントはすごいです。すごすぎます。魔力が溢れ出てきます。私は今、15人に分身して戦況をコントロールしていますが、本気を出せば50・・・いや80人くらいにはなれるかもしれません。ですので、ここに関しては制圧することは時間の問題だと考えます」

「バレル・・・すご」

「ですが、先程も言ったとおり私達が心配しているのは【このあと】です。いくらここを制圧したといっても他の騎士団長クラスがまたここに来たら、今の私でも勝てるのかわかりません。ですので、大切なのはコレラにとってアレフさんを驚異に感じてもらうことになります。アレフさんにコレラの戦力を注視させることがビシソワーズ全体の革命に繋がります」


ん・・・あれ・・・いつの間にか・・・ビシソワーズ全体の革命の話になってきているぞ・・・。


アレフは思った。アレフの目的はただ自分を裏切ったやつに復讐したいそれだけなのに・・・。なにやら話がどんどんと大事になってきているような、そんな予感がした。

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