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バイラと呼ばれるその青年はミレノア同様、肌色が薄緑色である。緑系の人間と呼ばれる類の人類なのだろう。
アレフの顔とは異なり、バイラは爽やかな風が吹き通るかのようなイケメンであった。そして、ミレノアに顔が似ていた。
「この人は、もしかしてミレノアのお兄さんか?」
「あはは、すぐに分かってしまいますよね?僕たち兄妹ですよ。顔がとても似ているんですぐばれてしまいます」
バイラは笑いながら俺たちの輪の中に入ってきた。背丈は俺とさほど変わらないが、格好が気になる。
エプロンをしている。
「僕はここの長屋で料理をしています。と言っても労働外の時間ですけどね。基本的にコレラの監視は労働者側についているので、長屋で休んでいる間は比較的自由がきくんです」
エプロンの裾で濡れた手を拭きながらバイラはいった。
「あなたが妹を助けてくれたんですね。改めてお礼をいいます。ありがとうごさいます」
「い・・いや、とんでもない。むしろ俺のほうが助けられたんだ。彼女がいなかったら俺は当分まだあの宝物庫にいただろうし」
「宝物庫?」
アレフはバイラに事の顛末を説明した。自分が何年も閉じ込められていたこと。そして、その閉じ込めたメンバーの一人がデビルスであったということ。
本当にミレノアの兄なのか?というくらい落ち着いており聡明な印象のバイラは、時折驚く表情を見せながらも、すぐに事態を理解していった。
「なるほど・・・それで、デビルスが殺されて、今魔武器が目の前にあるということか。おそらくこれはまだ知られていない・・・」
「兄さん!これは大チャンスだよ。私達ずっとこの魔武器のせいで、あいつらのいいなりになってきたんだ。これで力関係は逆転できるよ」
どうやら、魔武器のせいでミレノアたち種族は統治下におかれていたようだ。強大な武力行使でコレラは緑系の人間を支配していったのだ。
「ありがとうごさいます。アレフさん。これでこの階層はコレラの支配から逃れられるかもしれません。でも・・・」
バイラが心配していることが1つだけあった。それにはミレノアもわかっていた。
「大丈夫だよ。お兄ちゃん。私、ここから出る」
「何言ってるんだ?ミレノア?ここから出てどうするつもりだ?」
「あれでしょ?お兄ちゃんが心配しているの、他の魔武器を持った騎士団長クラスがここに来たらどうしようってことでしょ?」
「それは・・・」
「私が囮になってダンジョンを逃げ回るよ。今、コレラが一番驚異に思っているのは私。なんせ騎士団長クラスを倒してんだから」
「いや・・倒したの俺なんだけど」
「多分、アレフさんのことは政府は認識すらしていません。そんな前に宝物庫に閉じ込められた冒険者を覚えているものはいません」
「・・・はい」
バイラは聡明な分、ものごとをはっきりという性格であった。この発言がアレフの心を少しだけ傷つけていたことすら気づいていないのである。
「おじさんと一緒なら大丈夫よ。私達が逃げ回って騎士団長クラスの意識をこっちに向けさせる。そのうちにお兄ちゃんが指揮をとって、この第5労働場をコレラの監視下から開放してよ」
ミレノアが一気にまくしたてるように行った。
「バイラ・・・わしもそう言おうとしてたんじゃ。この魔武器があればこのコレラからの労働から開放される。現実的に無理な量の作物をコレラに納めるために子どもたちを働かせなくてもよくなる。そのために今指揮を取れるのは、どう考えてもお前しかいない」
バイラは逡巡した。おそらく二人のいっていることが限りなく正しい。しかし、それは同時にミレノアを危険に晒すことになる。アレフという男の実体もつかめていない。
デビルスを殺したことから、実力は申し分ない。しかし、復讐にかられている男とともに妹をやって大丈夫なのだろうか。
「いや・・でも・・ミレノアが・・・」
「もう!お兄ちゃん早く決めてよ。政府が私のこと探してるんでしょ?今すぐにでも出ていかないと、ここも時期、役人が捜査にくるよ!」
【ガラガラガラガラ!!!】
その時だった。アレフたちが入ってきた引き戸が乱暴に開かれた。
「おい!おまえたち!何をしている?休憩時間は私語は禁止というルールだろうが!」
オフホワイトの装束を着た男たちがワラワラと長屋に入ってきた。男達の一人が目の前に座っていた小さな男の子を蹴り飛ばした。
「おい、お前。何食ってるんだ?コレラが配給するもの以外食ったら死罪だぞ?この緑系が。ルールも守れんのか」
腹を蹴られた男の子は、バイラが調理したモンスターの肉を吐き出した。
「ここにミレノアがいないか?あいつは死罪だ。デビルス様に逆らったんだからな」
自粛生活をしてて、気づいたのですが、自粛前から私は休みの日、家からでてませんでした。全く自粛生活のストレスを感じることはありませんが、デフォルトの生活が自粛だったことがなんとなく哀しかったです。
これからもこの調子で頑張ります。




