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俺はミレノアのサポートのかいもあり、スイスイとデビルスへと近づくことができた。


しかし、デビルスの周りには巨大な龍のようなモンスターやバカでかいケンタウロス、三首の恐竜と、どう考えても強いモンスターを配置していた。


その数、ざっと50体ほど。このクラスのモンスターを操っているデビルスの魔力というか、魔武器のペンダントの威力は計り知れないものがある。


「・・・デビルスらしいなぁ。小心者だからな。デビルスは。そのくせプライドだけは高い。絶対的な冒険はしない。自分の周りは強いモンスターを配置して安全を担保してやがる」


今の俺なら勝てるのだろうか?アレフはそっと自分の手を見つめた。そして、つぶやいた。


【ノーマル魔法 魔法ぱんち】


アレフの手が魔力で覆われる。その大きさはさほど大きくはない。しかし、そこに詰まっている魔力の密度は異常なレベルであった。


「・・・やばい。あれは、どう考えてもおかしい。アレフの魔力レベルではない」


数十メートル先に光るアレフの右腕。異様なまでの光り方をするアレフの右手。普通なら魔力をまとうと黄色く光るのだか、アレフの右手は光りすぎて真白であったのだ。


「あんな光り方、見たことないぞ。ピーナッツでもあんな光り方してなかった・・・」


デビルスは一斉にアレフに向かってモンスターたちを向かわせた。


「いけ!いけ!いけぇぇぇぇぇぇ!!!」


アレフは血眼になってむかってくるモンスターたちを冷静に見つめていた。ダンジョンオタクであり、モンスターの生態に詳しいアレフであったが十年もの間でダンジョンの生態系が大きく変化していることを感じていた。


今目の前に向かってくるモンスターたちは今まで見たことのないモンスターであった。


しかし、1つだけわかることがあった。


それはこれが本来のモンスターの姿ではないということ。


デビルスに無理やり動かされ、攻撃させられているモンスターたちをアレフは不憫に思ったのだ。


この状況で。まだ自分の力がどれほどで、どれくらい太刀打ちできるのかわからない状況で。


もしかしたら、このモンスターたちに殺されてしまうかもしれないという状況で。


アレフはモンスターのことを思っていたのだ。


「すまん・・・多分死んだりはしないと思うから・・・」


アレフは向かってくるモンスターに拳を突き立てた。向かってくるモンスターの腹部に向かって右手をそっと差し出した。


その瞬間、モンスターたちは膝から崩れ落ち、ぐったりと地面に倒れていった。


「いけいけ!殺せ!頼む!やってしまってくれ!!!」


デビルスは目を真っ赤にしながらモンスターをアレフの元へと向かわせる。しかし、それをそっと優しくなぎ倒していくアレフ。


モンスターたちはみな、気絶しているようだ。


「すごい・・・。俺・・・やっぱり魔力が・・・上がりまくっている・・・ダダのパンチなのに」


アレフは次々とデビルスが送り続けるモンスターをなぎ倒していった。


そして一歩一歩、デビルスの元へ向かっていった。


「やべぇ!なんであいつがあんなに!なんで捨て石がここに!なんで捨て石が!なんでこんなに強いんだ?!」


アレフはとうとう無防備のデビルスの前に立った。


デビルスは魔武器のペンダントを握りしめて、ガチガチと震えていた。その大きな目がより大きく見えた。


立派な白装束の服が、アレフは滑稽に見えた。あまりにも今のデビルス似つかわしくないからだ。


「まだ・・まだおわりじゃねぇからな!!!アレフ!!あっちを見てみな!!」

「何?」


アレフが後ろを振り返ると、ミレノアの一人がヘドロのようなスライム状のモンスターに体を捉えられていた。粘着質のそのモンスターの体に一度捉えられると、抜け出すのは困難に見える。


「あの子の命が惜しけりゃ、俺を見逃すんだな。アレフ」


デビルスの口元がねちゃりと粘っこく動いた。

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