3日目
ついていない。実についていない。
俺は湧き出る憎悪と怒りを抑え、確かに熱い腹の辺りを恐る恐る確認した。
―――どうやらもう命は長くないらしい。ピラミッド最底辺の頭脳しかない俺でも、そのくらいは流石に分かる。
心当たりはある。帰り道、あれは踏切を渡ろうとしたところ、ギリギリ間に合わず、急ブレーキをしたつもりだったが、恐らく何者かによってブレーキが細工されていたのだろう。自転車が止まることはなく、そのまま電車と衝突してしまったのだ。さながら時をかけそうな出来事だが、生憎そんな能力も、そもそも少女でもない。
死ぬ直前に見るものを「走馬灯」というらしいが、今まさにそれを身をもって体感している。
がしかし、走馬灯、というのはもう少しマシなものではないのか…?浮かび上がってくるのは、最近知り合った女子にシトラスティーを渡したときの出来事、廊下で阿保みたいに騒いでいるクラスメート、そんなものばかりだ。
どうやら俺の人生はその程度のものだったらしい。死ぬ間際にこんな感情になっては生きる気力すら失いかけてくる。そうしてゆっくりと目を閉じ、太陽に手をかざした俺は、こう決心した。
「もし来世というものが存在するのなら、その時は、しっかり仕事しよう」と。