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77話


 賊兵を募り、ついに董卓から兵馬や、将軍である李粛までを并州に引き出した。

 そのおかげで長安は手薄になり、董卓討伐につながったともいえる。


 そして、その賊軍を率いていた勇猛な若き将の名前を「徐晃じょこう」と言った。


 黄巾賊上がりの「白波賊」を率い、更には并州で勢力を拡大。

 并州にて、董卓の息の掛かった地域を度々襲撃しては、貧しい民にその略奪品を分け与えた。


 民の心まで掴んでいたことで、李粛もこの徐晃の軍にほとほと手を焼いていたという。


 そんな徐晃が今、朝廷に、五千の精兵を率いて帰順。

 もとは楊奉の配下であった白波賊の面々を、朝廷も快く許した。


 細い目、冷たい瞳。まるで岩が動いているかのような、遠くからでも目立つ巨躯。

 勇猛な将であると、徐晃を見た群臣達は口々にそう評価した。



 ただ、実際にこの白波賊を動かしていたのは、徐晃ではない。

 并州という土地をよく理解し、戦に身を投じ続けてきた、漢の重臣の姿が裏にはあった。


 片腕を失い、痩せ衰えながらも、その鋭い眼光は往時のまま。

 かの「呂布」を育て上げた、その老将は、名を「丁原ていげん」といった。



「お久しぶりですなぁ、殿下」


「本当に貴方には頭が上がりませんよ、丁原将軍。死にかけた体に鞭を打ってしまい、申し訳なかった」


「この老骨の命を天下に役立てることが出来た、それだけで十分に痛みに耐えた意味があったというもの。ただ、それも今日で終わりですな。兵馬は全て、殿下にお譲りしましょう。特に徐晃は、稀代の名将だ。あれは呂布に劣らない働きをしますぞ」


 実に晴れ晴れとした笑顔で、丁原はカッカッカと笑う。

 まさか、この二人が巡り合っていたとは、俺も初めて聞いたときはすごく驚いたなぁ。


「もう、戦場には出ないのか?」


「勘弁してくだされ。もう、馬に乗るのもツラい身です。あとはゆっくりと、董卓の居なくなった都で、余生を過ごさせてくださいませ」


「いや、実はな、兵を鍛える老練な将軍が都に居ないのだ。恐らく、徐栄将軍も再び戦場に立つことはできないだろう。そこで、二人には近衛兵や涼州兵に、軍規を叩きこんでほしいと思っている」


「やれやれ……死ぬまで休ませてもらえそうにありませんなぁ」


 そう言いながら、丁原は頭を下げ、承諾した。


 徐栄はやはり、思っていた以上に傷が深く、激しい戦場に再び立つことは叶わないらしい。

 官軍第一の将を失ったのは痛いが、その豊富な経験を活かしてもらわないといけない。



「さて、殿下。わざわざ姿を隠していた私をお呼びになったのだ。何か、用があるのでしょうな? まさか、今の世間話が本題ではありますまい」


「いやぁ、恥ずかしい話なんだが、各地の情勢を詳しく知らないのだ。今まで董卓や、涼州豪族に神経を尖らせていた為に、いくらか遅れている。それを聞いておきたかった。こういう場なら非公式だし、気兼ねなく話せると思ってな」


「なるほど、それであれば。まずは儂の居た并州ですが、董卓死後に呂布が現れて、李粛の軍を吸収し、土地を去りました。そうやって空白になった并州を、以前から手回ししていた袁紹が掌握。今や袁紹は、冀州、并州、青州を抑える最大勢力になりました。やがて幽州の公孫瓚も争いに敗れるでしょうから、そうすれば河北の四州を治め、天下統一に動き出しましょう」


「袁術は?」


「揚州一帯と、豫州を掌握し、荊州の劉表との睨み合いを続けております。ただこの争いで、第一の将軍であった孫堅が戦死。今はその長子である孫策が揚州各地に兵を向けて、袁術の基盤を固めています。驚くべきはその年齢で、まだ十八歳。しかしその用兵の巧みさは、孫堅に劣りません」


「小覇王、か」


「よくご存じで。孫策はその武勇にて、小覇王の異名を取っています。ただ、儂の見立てでは、孫策は袁術には服していませんな。独立の意気が盛んです。しかし、袁術はそれを敢えて放っている様で、何やら不気味な気配があります」


 史実では、袁術が帝位を僭称したと同時に、孫策は独立に動く。

 さて、ここでも同じように動くのか、どうか。今のところはまだ、動いてないみたいだ。


 聞いてる限りだと、袁術も中々のやり手に思えるんだよなぁ。


「益州は、分かりません。劉焉が治めている、というのみで、情報が異様に少ない。やはり、唯一の出入り口である漢中の土地を、五斗米道が抑えているのが大きい」


「繋がってるのかな、劉焉と、五斗米道は」


「間違いなく。恐らく益州を、中華から切り離す考えがあるのやもしれません」


 韓遂が逃げ込むとしたら、きっとここだろう。

 今後の戦略を考えても、漢中は視野に入ってくる。


 色々とここに関しては、考えておかないといけないだろう。



「そして、この涼州、長安と並んで、激動の最中にあるのが、兗州と、徐州です」


「曹操、だな」


「左様。元々、兗州の曹操は袁紹の息が掛かっており、徐州の陶謙は袁術の息が掛かり、敵対関係にありました。曹操の父親が陶謙に殺されたことで争いが激化。曹操は瞬く間に徐州を壊滅させ、支配下に治めようとしましたが、ここで動いたのが、呂布です」


「ほぅ」


「曹操が留守にした兗州を掌握しました。裏には、曹操配下であった陳宮、そして盟友である張邈の手引きがあったようです。今は兗州にて、曹操と呂布が争っておりますな。ちなみに徐州では陶謙が病に倒れ、後任に就いたのが、公孫瓚配下であった劉備という男ですが、彼についてはよく分かっておりません。漢気はあるようですが」


「いやぁ、三国志らしくなってきたなぁ」


「殿下?」


「あ、いや、何でもないっす」




これ、書いてて思ったんだけど、地理関係詳しく分からないと、内容分からない話なんじゃないのかなぁ、なんて。


群雄割拠つれぇ(笑)


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