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天使の奇跡

作者: 秋村 楼

5分くらいで読めるので気軽に暇があったら読んでください

この世界には奇跡というものが存在するが、実は奇跡は意図的に起こしている。

その存在は天使だ。天使達は日々、人や生き物に奇跡を送り続け「幸運」「ラッキー」は全て天使のおかげなのである。


また、幸運だけではなく不運も存在する。

天使に相反する悪魔だ。悪魔達もまた「悲劇」、即ち不運な出来事を全生物に送っている。交通事故に遭ったりやタンスに小指をぶつけたのなら、それは彼らのせいだ。


不運は邪魔な事象ではあるが、二つがあるからこそ世界は成り立ち均衡を保っている。


しかし運に左右されない事象がある。それが運命だ。


そんな中一人のある天使がいた。強い力や地位を持っているわけではなく悪魔の力が持つ悲劇を引き起こす天使である。名をシェムと言う。彼女自身全く望んでいなかったもの持ち、他の天使に堕天使だの忌み子だの陰で言われてきた。実際奇跡を送るはずの天使が不運をもたらすなど前代未聞の存在だ。そんな彼女に一つの使命が大天使様に命じられた。


「ただいま参りました。話とはなんでございましょう。」


「あなたに一つチャンスをあげたいと思いましてね」


「チャンスですか…。」


「そうよ。あなたができるかはそんな期待してないけれどもね。」


じゃあ何故呼んだのだとシェムは思ったけれど口を閉じて話の続きを聞いた。


「あなたには人を救う仕事してもらいたいの。とある病気を患った青年がいてね、生存率は2%どの天使が奇跡を送っても効果が無かったの。手術は5日後、それが彼の運命の日。このままだと彼は死ぬわ。だから最後の希望としてあなたに頼みたいの。」


つまり汚れ仕事を任されたというわけである。彼女達は救済できないと判断して失敗してもしょうがないと流すことができる私を採用したということだ。

確かに私は実際のとこ助けることはできない。悪魔とほとんど変わらないのだから。逆に殺してしまうのでないか、そんな考えもあった。


しかし、彼女が心の底から抱いていた思いは悔しさ。天使達に一切期待されず、こうやって嫌な仕事ばかり押し付けられる。シェムは自分を嫌いそして自分の存在をものすごく憎んだ。


「わかりました。この使命、必ず遂行させてみせます。」


それでも希望を持っていた。過去の自分とはさよならをしてこの仕事を成功させ私を嫌っていた奴らに衝撃を与えてやると。そんな決意を込めて大天使に言い放った。


「そう、じゃあ良い報告を待っているわ。それでは神のご加護があらんことを…」


そう言って大天使は消えていった。


彼女は早速青年を救うために仕事へと取り掛かった。


〜4日後〜


案の定何の成果も得ることはできなかった。シェムがどんなに奇跡を送ろうとしていても全く力は出せなかった。自分でもわかっていた、この結果になることは…。


ただただ自分を肯定し続けたかった。できるんだと、やれるんだと、でも何も変わらなかった。天使の皮を被った悪魔なのだと。今にも涙が落ちてきそうな表情をした。


ほとんど諦めかけていたシェムは彼の最後くらいは看取ってやろうと下界へ降り、彼の病室まで来た。深夜、雲行きの怪しい暗い暗い夜だった。


寝ている彼のそばで口を開いた。


「ごめんなさいね。私が力不足なあまり助けることができなくて。」


そう言うと彼は突然起き出した。シェムはあまりの衝撃に「ヒャッ」と声を上げた。


「誰か…どこかにいるのかい?」


青年は喋り出した。眠りが浅かったのか、シェムの声が聞こえて起きたらしい。


「一応いる…わよ…。私の姿が見えるのかしら。」


彼女も何故彼が私を認識できているのか知らないが応答はした。


「姿?どこにもいないけど…でもいるのか、君は誰?

僕はシュウ。」


「私?私はシェム…天使って言ったら信じてくれるかな?」


嘘をつくべきであったが彼の命ももうないため真実を話した。


「天使かぁ。すごい現実味が無いけど僕は信じるよ。ここは夢の中かもしれないしね。」


「ありがとう。あなたはとても優しい方なのね。」


「そ、そうかい?照れるなぁ。それより何故天使様がこんなところへ?もしかしてお迎えに…。」


「ち、違うわよ!あなたに謝罪をしに来たのよそして…」


「何で君が謝る必要があるんだ。」


シュウは柔らかい表情から真剣な表情へと変わった。


「だって私が奇跡をあなたに送れなかったから…シュウはもうじき死んでしまうの。私は他の天使と違って奇跡を送れない、その代わりに悲劇をもたらす。私は皆んなと違うのよ!私はどんなに努力したって変わらなっ」


「君は僕が死ぬと何故わかるんだ予知能力でも持ってるのか?」

シェムの話に割って入り少し怒りが入った口調で喋った。


「シュウが生き残る確率は2%よ!そんなの無理だわ。手術なんて成功するはずがない…」


彼女は目を潤わせながら発した。


「確かにそうだね。僕も最初聞いた時は正直ダメなんじゃないかなって思ったさ。でもね、シェム…決して0じゃないんだ。僕は100%で死ぬわけじゃないんだ。生きることが1%でも0.1%でも0より大きいのなら僕はその大いなる数字を信じても良いんじゃないかと思ってる。今回は運良く2%生き残ることができる。限りないが未来はあるんだ!」


彼にはとてつもない「生きる」という強い執念があった。シェムはそれに圧倒された。


「シュウ…あなた優しいだけでなく強い男でもあるのね。私には見るだけしかできないの。」


「いいや、シェムもできるじゃないか、奇跡を起こすということを…」


「私はもう迷惑かけたくないの。どんなに頑張ろうと思っても周りからはお前にはできないとか無駄な足掻きはやめろだとか、散々言われてきてやっとわかった自分がどれだけ惨めなのか…。」


「それでも、自分を信じてみないか?シェム。君の可能性も0ではないと僕は思うよ。」


「こんな堕天使でも、できるのかしら…」


「シェムならできるさ!僕は信じるよ!」


シェムにとって初めての言葉だった。生まれてきて頼れられるという行為、信用されるという行為に。今まで努力や意志が報われた気がした。


一人の天使が病室で膝から崩れ落ちた。

そして外では雨が降り始めた。


その後彼女がどう成長していったか、どう変わったのかは誰にも知ることはできない。ただ、一つだけ分かることがある。


それが奇跡なのか運命なのか


手術は成功した。


〜終わり〜

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回で二作目ですがあんまりできの良いものとは実際のところ思ってませんでした。

天使が人間と恋をするという最初の土台から作り上げ、最終的には全く違うものとなってしまいました。

シェムが成長して彼を助けたのか、それとも彼女の力無しでも手術は成功したのか、これに関しては私でもわかりません。だからこそ読者の方々の想像力で彼らの未来を考えて欲しいです。

私的には後者を望んでますけどね。

それではここで終わりにしたいと思います。

また、どこかで。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 幸せと不幸という概念的なものを、天使と悪魔というある意味人格的なものに投影するという発想が面白かったです。 [気になる点] 「交通事故にあったらタンスに小指をぶつけたり」のところが逆の方が…
2019/05/20 23:52 退会済み
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