04:スタンバイ・レディ
支店に戻るとそのまま端末に向かった。よし、やるぞ、と背伸びをしてカタカタしばらくやってると表の方がなんかうるさい。
「ねーねー、なんかかなり大きな火の精霊の匂いがする〜」
火の精霊? ここは特に火を使う場所なんて給湯室くらいしかないと思うんだけど。喫煙所は行内禁煙だから外だし。その給湯室も当然ながら誰もいない。私、無意識のうちに呼び出してないよね?
「どこから?」
「えーと、本体の方から」
本体……フロアの方だよね。どんな様子なのか見えたらいいんだけど。
「水鏡出してくれたら映像送るよ〜」
あ、はい。集中して水鏡を空中に浮かべた。映りこんだのは三人組で覆面をしてて、手には……銃。強盗か! さっきおばちゃんが言ってた密航者かなんかかな? もー、なんなのよ、もっと大きい銀行行きなさいよ! じゃなくて、これヤバくない?
「あ、火の精霊が大きくなった」
銃声が響いて「偽モンだとでも思ってんのか」って怒鳴り声が聞こえてくる。先輩完全に怯えてるよねえ。何とかしたい。セクハラから助けて貰った恩返しに……係長撃たれてからでもいいかな? ってそれはないかー。撃たれるとしても先輩か誰かが盾になった後だよね。私は意を決してドライアドに話しかけた。
「よし、じゃああれ、何とかしたいんだけど魔法で何とかならないかな?」
「んー、魔法使わなくても火の精霊にお願いすれば?」
あ、そうですか。まあそれなら弾飛ばないよね。……じゃなくて!
「いや、あいつら捕まえたいんだけど」
「んー、じゃあ火の精霊何とかしてくれるなら私が蔦で捕まえるよ」
よし、じゃあ交渉に入ろう。とりあえずフロアへ!
フロアは騒然としていた。他の客は殆ど居ない。まあ日頃から店頭に来るお客さんなんてあまりいないんだけど。そんな中、三人組で目出し帽被った奴らが先輩に銃を突きつけていた。
「ねえ、火の精霊さん」
交渉開始だ。
「アァん? なんだ珍しいな、姉ちゃんオレが分かるのかい?」
「まあ今朝からね。それよりも危ないからそれ動かさないで欲しいんだけど」
「言いたいことは分かるが、この炸薬ってのが美味でな。口の中ではじけて止められねえんだよ」
コーラか! まあ火の精霊だけに刺激物が好きなのかもしれない。ううーん、それなら……
「私作った魔力入りとかどうかな?」
火薬の作り方……調べたら分かるよね?
「おお、魔力入りかあ、そいつはガマンする価値がありそうだな。いいぜ、大人しくしといてやるよ」
簡単だったけど交渉成立だ。これで反撃開始だね!




