38:私も人間(ひと)だから(いいえ、エルフです)
終わると思った? 澪ちゃん編はもうちょい続くんじゃよ、
精霊をぶつけるのに派手なフォームは必要ないんだけど、ついつい力が入ってしまった。まあ仕方ない、不可抗力というやつだ。
「ハルとは付き合い長いけど昔からパソコンの前にばかりいる子だったね。私は学級委員で面倒を見てるうちに仲良くなった……というかお世話係を押し付けられたのよ。おかげで三年生から高校までずっと一緒」
「あー、そうなんですのね。まあ社会不適合者だけどお金稼ぐ手段は持ってた、と」
「まあアルバイトやってたからそれなりに働けるけど継続できないとは言ってたね。勤めには向いてないのは間違いない」
二人して寝っ転がってるハルを見た。うん、気持ちよさそうというか気絶だね、これは。
「それよりもお姉様の事がもっと知りたいのでどうぞ中に」
そう言えばまだ玄関だったね。ハルは……お付の人に運んでもらおう。それで通されたのは立派な応接室。ソファをはじめとした調度品もかなり高そう。
「紅茶でよろしいですか?」
「任せるわ」
運ばれてきた紅茶はとてもいい香りがした。ダージリンのファーストフラッシュとか? 知らんけど。
「それで、お姉様の事を教えて欲しいのですが」
「んー、まあ前も話したと思うけど朝起きたらエルフになってた。それだけなんだよねえ」
「家系的にどこかおかしな素性の方とかいらっしゃらないのでしょうか?」
「言ってる事は分かるけど微妙に失礼よね。まあでも私の知る限りではそういうのはなかったはずだわ」
というかうちの家系とかよく知らないんだけど外国の血とかは入ってなかったはずだしね。
「可能性としてはあれじゃない? ほら、小学三年の時の」
「ああ、事故? 確かに死にかけて輸血はしたけど」
「その時に集められた血の中にそういうのが入ってたんじゃないかな?」
いつの間にかハルが起きていた。
「そんな事があるんなら私の他にもなってる人が居てもおかしくないと思うんだけど」
「今のところ、国内外を問わず、お姉様の様な症状は確認されておりません」
紅茶を飲みながら澪ちゃん。飲む姿は確かにお嬢様だ。さまになっている。まあ精霊たちからもそんな話は聞いてないから多分居ないのだろう。外国の精霊とかなら違う答えが返ってくるかも。でも英語くらいしか喋れないしなあ。
「ですので当面お姉様はご自分で最大限注意していただかないと」
「そうそう、前も言ったけどかなりなアドバンテージ取れる能力だからね、いろんな場面で」
うーん、そうだよね。そうそう負けることは無いと思うけど二十四時間動ける訳もなし。
「まあ普段は危険が及ばないように見守ってますので」
「そうだね、その方が安心かもね」
と澪ちゃんとハルが言う。気持ちはありがたいんだけどねえ。
「あ、そう言えばさ、初めて澪ちゃんと会った時なんで追われてたの? これだけお付きが居るなら平気だったんじゃないの?」
「あの時は寸前で私を助けようとしたんです。でもその前にお姉様が魔法で……あっという間でしたから」
なるほど。迅速に行動しすぎたから手出しする間も無かったってことか。
「お陰で私は運命の人に出会えました」
と言いつつ熱い目を向ける澪ちゃん。重い重い!
「まあ、私もバックアップするから心配しないでよね」
ハル、貴方の場合は主に私の方がバックアップしてるのよ。お掃除とかお洗濯とか……
「そうですわね……あの高宮さんのお宅の周りの土地の名義が何故か全て貴女の名義に書き換えられてましたものね」
「……は?」
ど、ど、ど、ど、ど、どういうことなの?
「いやー、バレてたか。あれなら私有地内での出来事で万が一の事があっても警察介入させない事も出来たからね」
「お陰で不動産屋へ圧力かけるのもやりやすかったです」
「あー、やっぱり澪ちゃんだったのか」
なんかまた私のわからない次元で話が進んでるような気がする。もしかして、私、ぼっち?
と、そんな時だった。玄関の方からメイドさんが入ってきた。ビバ、ヴィクトリアンメイド!
「お嬢様、来客ですが」
「この状況で? お断りして」
「それが……」
と、耳打ちしている。
「……仕方ないわ。お姉様方少し待っててください」
そう言って澪ちゃんは部屋を後にした。




