特別編:世界樹の降臨
世界樹=ユグドラシルでは無いんですけどね、厳密には。
「お待ちなさい」
その時、ふしぎなことがおこった!……じゃなくて里中に透き通った声が響き渡った。まるで十七歳教の教祖様の様な。
「こ、これは!?」
「えーと、なにこれ?」
頭にはてなマークを浮かべていると一人のなんか神々しい人に出会った。なんか向こうまで透けてるし、少し緑っぽく光ってるけど。
「ようこそおいでくださいました。私は世界樹の意思。あなたを歓迎します」
「なっ、世界樹様が直々にこの者を歓迎したじゃと!?」
「あれ? 私の事知ってるの?」
「はい、私もあなたのようなものですから」
良く話が分からない。説明してもらってもいいかな?
それから場所を移すことにしました。呼ばれて案内されたのは世界樹の幹がある場所。里長は「聖域に立ち入れん」と入れなかったので私一人。私はいいのかと思ったけど、世界樹自身が招きたいと言うなら仕方ないというところだろうか。
「あなたの事はこの世界に来た時から感じています。私はあなたの世界の世界樹たるユグドラシルとも繋がっています。というかむしろ同一の存在と言っても過言ではありません」
んん? ユグドラシルなの? この人。
「一応私を通れば元の世界に帰ることは出来ます。もちろんあなただけですが」
「フレースヴェルグでも帰れるよね」
「ええ、まあ、一応は」
一応なの? 帰れるって言ったよ?
「あなたの身体だけならば可能です。帰ってもすっぽんぽんですが」
「なん……だと!?」
どうやらこの世界の服やら装備やらはこの世界の神が与えたものなので向こうに持って帰れないんだって。なんか税関みたいなので取り上げられるらしい。
いや、でもこっち来た時は装備とかあったよね?って思ったらそこは澪ちゃんが何とかしたんだとか。つまり、フレースヴェルグで帰るのはその澪ちゃんに逆らう事になるのでアウトなんだって。澪ちゃんに頼めば何とかとか思ってたからそれは出来ないみたい。あくまで管理者であって世界の権限は無いんだと。
「私を通って行けば行き来出来ますので魔王が倒せなければこちらからお帰りください」
「あー、まあそれは良いんだけど、魔王を倒せなかったらどうなるの?」
「澪様以外は私を通って帰れます」
「澪ちゃんは?」
「……問題解決までこの世界の女神をやる事になっております」
なんでそんなこと知ってんのかというと、この世界樹が前任の女神様に言われたそうな。ったく何とも迷惑な。
「じゃあ魔王倒してもらわなきゃいけないのね。やっぱりやるしかないか。そういう事なんで神託でもなんでもいいから一人選出して貰える?」
「分かりました。私の巫女候補で魔法も弓もそこそこに使える、外の世界に興味を持ってる者がおりますのでその者をお連れください」
おおっ、弓も使える巫女さん! うんうん、遠距離攻撃も大事だよね。
「アストラマリウ、居ますか?」
「お呼びでしょうか、世界樹様」
世界樹の声に呼ばれて出て来たのはささやかなる胸の外見年齢十二歳くらいのちっちゃいエルフの女の子。まあ美人さんである。
「あなたは世界樹の巫女として勇者たちの旅に同行するのです。詳しい事はそこのお方に聞きなさい」
「はっ!」
アストラマリウさんがちょっと嬉しそうな顔をしたの。なんて一瞬の微笑み。私じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「あの、なぜ、世界樹様はこの者に敬称を?」
「それはこの方がハイエルフだからです」
「ハイエルフ!? あのはるか古代に滅びたと言われる!?」
この世界でも滅びてんの、ハイエルフ?




