1160:パワー。
そういえばなかやまきんに君と私の誕生日一緒なんですよね。生まれた年は違うんですけど。
メディシンマンの敗北により、私たちが一勝を先行した。さて、次は誰だろう?
「オレが行く。ハナからオレが出てれば済んだんだ」
「油断するんじゃないわよ」
「誰に向かって言っている」
出てきたのは巨漢。なんかさ、マント被ってると詳細わかんなくて困るよね。明らかに脱いだらサイズ膨らんだんですけど?
「オレの名はパワーマッスル。アメリカはパワー。パワーこそアメリカ。つまりオレこそがアメリカだ! さあ、どこからでも掛かってこい!」
ああ、脳筋さんかあ。えーと、じゃあ誰が……
「はいはい、私が行きます!」
「楓ちゃん? あ、まあ楓ちゃんなら大丈夫か。ケガしないようにね」
「させないように、ですよ、ひとみさん。では、行ってきます!」
という事で我々の代表は楓ちゃんである。
「随分と小さい様だが大丈夫なのか?」
「あなたみたいな筋肉デブには負ける気しませんよ」
「楓ちゃん! その人の筋肉はデブじゃなくてちゃんと鍛えこまれたものですよ! マッチョ同好会の会員たるあなたがそんな事でどうするんですか!!」
「そんな会入った事ないよ!?」
睦月さん、審判なんだからどっちにも肩入れせずに冷静に見て……あ、ダメだ。ぶつかり合おうとしてる筋肉の塊に我を忘れてる。
「審判交代!」
「ちょっ、霜月さん、なんで!?」
「そんな状態でまともなジャッジ下せるか! ……という事なので篠原さん、お願いします」
「あ、はい、分かりました。仕方ないので睦月先輩はそこで見ててください」
「いいの!? やったぁ! 心置き無く見る見る!」
大興奮の睦月さんを傍目に見ながら二人は再度向き合った。
「は、始めるか」
「そ、そうですね」
「えー、それでは二回戦、始め!」
何となくやりにくそうだなと思ったのか、篠原さんが開始の合図をした。
「それじゃあ先手いただきっ!」
楓ちゃんが助走をつけてのドロップキックをかます。これは普通のやつだと吹っ飛ぶやつ! というか神様も吹っ飛んだな。まさかこんな軽量な楓ちゃんが繰り出すとは思うまい。ほーら、吹っ飛ん……
「なるほど。いい蹴りだ。少しは楽しめそうだ」
パワーマッスルは胸板でドロップキックを受け止めると両足を掴んでジャイアントスイング!
「わわっ、嘘!?」
五回転ぐらい回してハンマー投げの様に放り投げた。
「わっと、あっぶな」
「ほう、受け身くらいはと思ったらしっかり着地したか」
「五回転でやめてくれたからね。あれ以上は三半規管にいくから」
「あれ以上やっていたら遠心力利用して打撃が来たんじゃないか?」
「……そんな事までお見通しなんだね」
どうやら私たちの分からない何かで通じ合ってるみたい。なるほど、これが肉体言語。違うか。
「ならば今度はこっちから行くぞ!」
パワーマッスルがショルダータックルで突っ込んで来た。あれは……アメフト?
「そんな直線的な攻撃なんて!」
いや、楓ちゃんのドロップキックも直線的だったと思うよ?
「甘い!」
楓ちゃんが背中側に避けて攻撃しようとした所に強引に背中から打撃を与えてくる。鉄山靠とかそんな感じ?
「くっ」
楓ちゃんは吹っ飛ばされて今度もちゃんと着地した。
「身の軽さだけは一人前の様だな。しかし! この肉の壁を前にどれだけ粘れるかな?」
パワーマッスルは巨体を揺するように笑った。




