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87話

「危ないっ! 」


 コウイチの目の前の魔法陣が光を放ち、ディアナの前に立つ俺の左手首から先を消失させる。


 斬れた訳でもなく燃えた訳でもない、突然消えた手首を見ながら痛みよりも驚きの方が勝っていた。


「……何、したんだ……」


 驚く俺達を横目に掠れて朧気に見える実体の無かった黒髪のコウイチがはっきりとした実体を持ち、静かに一歩踏み出してくる。


「何あれっ! 足が現れたんですけど……」


 あぁシズネさん達にはそう見えるのか。

 見えない空間から、見える空間に足を踏み出したコウイチの足元だけが見えるらしく、シズネさんとハヤトが身構えている。

 ゆっくり出て来るコウイチの顔が少しずつ出て来た辺りで俺は片手で横凪ぎに腹を目掛け斬り付けた。


 続くリオスの槍が胸を貫きカールさんの拳が右肩を抉り取るが、血の雨を降らせはするものの動じる様子も見せずにコウイチはゆっくりと歩みを進めている。


「離れてっ! 」


 ディアナの魔法が上空から一本の太い帯状の雨を降らせ、コウイチを押し潰す。


 紫の煙を上げる石畳を抉り粉砕した雨はまるで滝の様で、コウイチの状況を確認するのは難しい程に姿を隠してしまった。


「潰れたか? 」


 リオスの呟きにハヤトが肩を不自然に跳ね上げたのを、何だ? と見る俺達の視線がハヤトに集まり、口を開けようとしたハヤトを遮るように声が聞こえて来た。


「フラグ立てご苦労様」


 ディアナの魔法が消え去り水飛沫が消えかけた中から、所々に血を滲ませつつも不敵な笑みを絶さないコウイチがのそりと現れた。


「魔王とか言うの取り込んで見たけどあんまり役に立たないね、あれ」


 蔦に絡まれ身動きのとれない()()を指差し、そう吐き捨てたコウイチはニヤリと嗤うと


「まぁオレは女神から貰ったチートがあるしな。偽チートはとっとと消さないとややこしい」


 そうはっきりと俺の目を見て言ったコウイチは、ゆっくりと俺の元に歩いてくる。


「随分と余裕だな人間っ!」


 悠々と歩く血だらけのコウイチの影から現れたリオスは、背後からコウイチの体をその腕で貫く。

 赤黒い血が胸から噴き出しながらも歩調を緩めず歩くコウイチの体から、リオスの腕が自然と抜ける。

 歩きながら魔法陣から剣を抜き、グルグルと回しながら近付いて来たコウイチはマジマジと俺の顔を見ると

 

「なぁその髪色やっぱり転移者だよな。あれから色々調べたんだよ」


 俺の髪を手にした剣で指し示しつつ、斬りかかってくるのを右手で構えた剣で受け流しながら、転移者……転移者としつこいな……と些か苛立ちを覚えつつ斬撃と怒声を放つ俺に


「だから、記憶が無いって言っただろうがっ! 」

「はっ! 転移者には俺達みたいな神の悪戯で来たタイプと、召喚されて記憶を奪われるタイプがいるらしいぜっ! 」


 危な気に俺の剣を躱したコウイチの、不恰好な横凪ぎを蹴り飛ばしてやるが、飛んで行く剣の代わりを新たに魔法陣から引っ張り出し声を上げ斬り付けてくる。


「てめえは意図的に召喚されて記憶を奪われてるんだよっ! 」

「だからなんだよっ! 」


 口元をニヤけさせ、汗と血を撒き散らしコウイチの不恰好な剣撃が続く。


「古い魔女を信仰してる奴等がしてるとかなんとからしいぜっ! 」

「何が言いたいんだよっ! 」


 いい加減苛ついて来た俺は『剣山』を腰だめに構えた剣から放ち、コウイチの足元に数百本の剣を乱立させる。

 土埃を上げ、泥まみれになりながら転がり避けたコウイチは急に真面目な顔をして


「オレならお前の記憶を取り戻してやれるっ! 」


 コウイチの叫びに俺の剣が止まる……

 え? ……何て言った? ……記憶を取り戻す……だと……

 動きの止まった俺に剣を投げ捨てたコウイチが近づいて来る。


 真っ直ぐに俺を見て歩いて来るコウイチから目が離せない……

 俺はそんなに過去の記憶が欲しかったのか?


 思考の迷宮に堕ちそうな俺の鼓膜に誰かの声が届く……

 ……届く……とどく……トドク……く……



 ーーーーー


 クロの一方的な、まるでいたぶっている様な攻撃の合間合間に、何やら大声で会話をしている二人の手が止まったのはクロが『剣山』を放った後だったわ。


 コウイチのヤツがクロの記憶を戻せるって叫んだ途端、まるでそれを焦がれ待っていたかのようにピタリと止まってしまったの。


「魔女よ、ありゃ不味い」

「クロの奴、何かの暗示かなんか掛けられちまったね……」

「ふむ、しかしコウイチの話は本当でしょうか? 」

「クロさんやばく無いですか? 」


 全く、あんなヤツの言葉に乗るなんて……

 ニヤニヤと腹立たしい顔のコウイチが()()()()()()()をブラブラ遊ばせながらクロの目の前で立っている……


「っクロっ! しっかりしなさいよっ! 」


 私の呼び掛けにすら反応しないクロの前に居る、コウイチが魔法陣に手を差し込み私の背よりも大きな厚く重そうな剣を取り出す。


「ディアナさん援護よろしくっ! 」


 その尋常じゃ無い大きさの剣を目にしたシズネちゃんが飛び出して行く。

 っ……クロ後で説教よっ!



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