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85話

「もう小細工は無しと行こうや」


 誰の声だっただろうか、そんな言葉が聞こえた瞬間意識していなかった訳では無いのだけど、リオスが飛び出したのが見えなかった。

 次に気付いた時にはリオスの右腕がコウイチを貫いており、血の雨を降らすコウイチを乱暴に投げたリオスは、見覚えのある黒い槍を取り出し黒い肌が蠢くコウイチの後ろに見える黒髪のコウイチに突き付けるが魔法により弾かれてしまう。


「おいおい、そんなに急ぐなよ。」


 コウイチの言葉が俺の耳に届いた時には、黒い肌が蠢き再生していくコウイチが禍々しく巨体になったカールさんの拳に押し潰される。


 髪の色が薄くなったフォルスを大事そうに抱えたハヤトは、明確な殺意を宿した目をコウイチに向けているし、シズネさんもいつでも動ける状態にあるようだ。

 俺は一人出遅れた感を感じつつ、潰れたコウイチを見ていた。


 潰されながらも蠢き続ける黒くヒビ割れた肌は、薄気味悪い逆再生のようにコウイチの体を元に戻していく。


「ったく、再生能力は魔王クラスかよ」


 忌々しげに呟くリオスの言葉を聞き、元に戻ったコウイチは気持ちの悪い笑みを浮かべると


「当たり前だろ、魔王を喰らってチカラを貰ったからな」


 さも当然とばかりに自信満々に吐き捨てるコウイチの言葉を聞き、何を思ったかリオスが大きく笑いだした。


「リオスどうしたっ! 」

「「リオスさん? 」」


 俺とハヤトにシズネさんが声を上げる中、少しばかり目を細めたコウイチがリオスを睨み付ける。


「何が可笑しい? たかだか吸血鬼が……気でも触れたか? 」

「いやいや、魔王ねぇ……まぁ良いんじゃないか。取り敢えず魔王のチカラとやらを見せてくれよ」


 リオスはコウイチに言葉を返しながら、チラリと巨体になったカールさんに一瞬目をやると槍を構え飛び出した。

 リオスに続き飛び出した俺の目の前でリオスの槍を魔方陣で受け止めたコウイチの口角が嫌らしく上がる。


 俺は斬撃の予定を『剣山』に変え少しばかりの距離を取る。

 リオスごと数百本の剣がコウイチを貫いていくが、笑みを崩すこと無くコウイチはリオスに何かをする。


 リオスの背と乱立する剣に邪魔され見えなかった攻撃はリオスを貫き、吸血鬼の始祖、国落としの膝をつかせた。

 吐血し傷口から盛大に血を噴き出すリオスのオールバックの銀髪を掴んだコウイチを忌々しそうに睨み


「……髪が乱れるだろうが……離せよ人間」

「タフだね。さようなら吸血鬼」


 この期に及んで軽口を叩くリオスにボソリと呟いたコウイチの手が金色に光り出す。

 慌てて飛び込む俺とシズネさんの剣撃を魔方陣で受け止め、トドメをさそうとするコウイチが巨大な拳に吹き飛ばされる。


 カールさんの拳に吹き飛ばされたコウイチの着地点にハヤトの射る矢が雨の様に降り注ぐ。

 殴り飛ばされた影響か、魔方陣の展開が遅れ何十発かの矢の直撃を喰らってたたらを踏むコウイチに俺とシズネさんの『剣山』が襲い掛かる。


 顔が潰され、矢と剣や刀に全身を刺し斬られたコウイチだがまたしても肌が蠢き、修復していく。


「ありゃ本体を殺らないと駄目だね」


 面倒臭そうに呟くカールさんの言葉に、ハヤトとシズネさんが目を開き俺を見てくるが何て説明したらいいのか……

 ヒビ割れた肌を蠢かせコウイチがゆっくりと立ち上がり、俺達を見回すと


「見えるんだ、凄いね。けど無理だよ」


 ニタリと嗤うコウイチの口が横に大きく裂けギラギラとした無数の歯が覗く。

 唾液でテラテラと光る歯を見るだけで、コウイチがもう人間で無いことはいやがおう否が応にも理解出来てしまった。


「コウイチあんたどこまで堕ちるつもりなの」

「堕ちる? まさかオレが王になるのさ」

「そう、哀れね」


 シズネさんはコウイチと少しばかり問答した後、俺達に目配せして斬りかかる。

 コウイチはまるで稽古に付き合うとでも言うように、展開した魔方陣から剣を取り出し斬り付ける。


 あのヒビ割れた黒い肌になってから少しずつだが剣が上手くなりつつあるコウイチは、人間とは思えない身体能力を発揮し、明らかに剣では格上のシズネさんと渡り合っている。


 俺達も乱入するべきかとハヤトに目をやると、大きく頷くハヤトを他所にリオスと巨体のカールさんに左右から引っ張られてしまった。


「「見えるコウイチは任しといて、後ろの殺るぞ」」


 ハモる二人に引っ張られつつも、そう言う事ならと剣を構え加速する。

 見えはするが後ろの実体の無いコウイチにどう攻撃を加えていいのか分からない俺は、二人を参考にしようと駆けながら見ているのだが、おもむろに飛び掛かったカールさんが黒髪のコウイチを黒い肌のコウイチから引っ張ろうとし、リオスが槍で刺そうと振り回しているが、本当に実体が無いのか掠りもしない。

 何度となく攻撃を仕掛けているが、どうにか出来そうな気配すら感じれない。


「おいっ! どうすりゃいいんだよっ! 」


 俺の叫びに振り返ったリオスが苛立ちを見せつつ、ディアナの木を指差し


「いい加減、魔女を起こせっ! いつまで寝てるんだお前の女はっ! 」

「眠る姫の起こし方は分かるだろっ! 」


 リオスとカールさんの叫びに付いていけない……

 話が見えないまま俺はディアナの木に走った。



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