83話
「フォルスたんっ! 」
爆発的に上がる気温とフォルスたんの周りに渦巻く青い炎に瞬間的に体を焼かれ続けながら、回復薬を浴びるように飲み続け走る僕の前に倒れたフォルスたんが居ます。
魔力を放出し続けたのか超高温になりぐったりとしたフォルスたんを、自分の肌が焼け焦げていくのにも構わず抱き締めた僕は大きく息を飲み言葉を失ってしまいました。
ただただ、肉の焼ける臭いが鼻の奥を突き刺しています。
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「なかなか趣味の良い人間だな。こう言う形で分断とはいい性格してるよ、全く」
オレはとりあえず辺りを見渡し、アイツらが周りに居ない事を確認すると被翼のある可愛らしい眷属達を影の中から呼び出し、飛び立たせる。
「さて、蝙蝠達が戻るまでお茶でもしようか」
影の中からテーブルセットを引っ張り出し、紅茶を飲み優雅に過ごすオレの元に一匹の蝙蝠がキィキィと可愛らしい声をあげ帰ってくる。
「はぁ……やれやれ、アイツは馬鹿なのか? 」
状況を蝙蝠から聞いたオレは少々呆れつつも、取り敢えず助けてやるかと煙に姿を変え飛んで行くオレの目の前には、黒い肌の巻き角の女が何かの肉を食らっているところだった。
「よう、魔人」
「ん? 吸血鬼か? 」
オレに気付いた魔人は食べ掛けの肉を放り投げると、大きく伸びをしながら立ち上がった。
「あたいには状況が見えてこないけど、どういう状況だい? 随分と雑な魔法だけど? 」
あぁそう言えばこの魔人はあの状況の中に居なかったな。と、気付いたオレがわざわざ丁寧に説明してやると、数回パチパチと瞬きをした魔人は背中に美しい被翼の羽根を広げ浮かび上がる。
「じゃあ、フォルスちゃんを助けに行こうかね」
全く、この魔人にはドワーフとそのお供位の認識何だろうか?
オレは面倒だなと思いながらも、大きく息を吐き魔人の後ろに付いて行く事にする。
「全く、オレは何やってるんだか……」
オレの呟きが真っ黒な空間に吸い込まれる様に消えていく中、バサバサと飛んで行く魔人の後ろ姿を見ながらふと思う。
「なぁ魔人、お前あれだろ?あれ! 」
「……あれって何だよ……訳の分からん事を言ってないで急ぐよ」
「いや……魔」
オレは言葉を最後まで言う事が出来ず、ただ生唾を飲む。
魔人の奴はオレの言葉を耳にした瞬間、それまでのだらだらとした空気を消し去り、吸血鬼で国落としのオレでさえも身震いする程の剣呑な突き刺さるような空気を醸し出す。
「つまんねぇ事言うなよ……なぁ吸血鬼よぉ」
参ったな……とんでもない奴が仲間に居たもんだ……
静かに頷くオレを見て納得したのか、また弛みきった空気に戻った魔人は進んで行く。
が、しばらく進むとオレ達二人は見えないが、壁であろう物に足を止められてしまう。
「ふうん、あたい達を分断って訳かね」
そう言い、魔人は小さく壁のような物を叩き口笛を吹くと、その姿を禍々しく巨大な物に変えてゆく。
大地に足音を響かせ大きく振りかぶった魔人は『ゴッ』と言う空気を切る音と共に拳を突き出した。
「待てっ! オレの眷属が通れたんだ、どこかに道がっ……」
オレの叫びも虚しく、魔人の豪腕はまるでガラスでも割ったかのような音を残し、壁を消失してしまった。
「よしっ! 」
「よし、じゃねぇっ! すぐそこに誰かいたら死んでるぞっ! 」
全く話を聞く気が無い魔人は元の体に戻り、スタスタと一人颯爽と歩いて行く。
やれやれと、一息ついた所でオレはこの空間がやたらと熱い事に気付き急いで魔人を追い掛ける。
止まって前方を見ている魔人の横に並ぶと、この熱気の原因であろう青い炎の柱が少しばかり離れたところで燃え上がっているのが見えてきた。
炎の中心にはドワーフの娘が倒れており、その横に何やら消し炭が転がっている。
何だ? と凝視していると微かに動いた気がする……
「なぁ魔人、あの消し炭は何なんだ? 微かに動いてるのは気のせいか? 」
「……おい吸血鬼、いや国落とし、『女神の涙』持ってるんだろ?寄越せ、後であたいの城の物好きなだけくれてやるからつべこべ言わずに取り敢えず寄越せ」
「いいが、ひょっとしてあの消し炭か? 」
「あぁ、ハヤトが死んだらフォルスちゃんが悲しむんだよっ! だから早く寄越せっ! 」
魔人が急かすから大事な秘薬を分けてやったが、唯の人間にそこまでするもんかね?
やれやれとドワーフの娘の魔力を断ち切り炎を止めて寝かした後、呆れつつ眺めるオレを横目に魔人は元ハヤトとか言う人間の消し炭の腹を切り裂き胃の辺りに『秘薬、女神の涙』を流し込む。
消し炭がぼんやりと輝いたと思うと、みるみるうちに焼け焦げた肌が剥がれ落ち新しい皮膚が顔を出す。
ほぼ無くなりかけていた呼吸も大きく正常になり、流石『女神の涙』だなとオレが感心していると突然
「フゥゥォォォルスたぁぁんっっ!! 」
全く……元気になった途端これだ……




