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8話

「……で、あんたの言う通り川沿いを歩いては来たけど……街は何処にあるのよ。」

 ゴードンさんの小屋を出て半日、川沿いを下り歩いて来た。

 真上にあった太陽が赤く染まり出して、不安になったのかディアナが不満気に呟く。


 来た道もこれから向かうであろう道も左に河、右に林、足元は湿った土、見渡す限り代わり映えのしない景色が続いている。

 確かに誰にも会わず、何にも会わず不安になるのもおかしくはない。


「まったく……ところでいい加減お腹空かない?大きい河だし魚位いるんじゃないの?」

 茶色く濁った河を一瞥したディアナにつられ、俺は剣を持ち屈んで覗き込んでみた。

「んー見えないね。居れば剣で突いてみるけど……そういやさ、聞きそびれていたけど魔女の拐い人の話教えてくれない?」

 河の中に薄っすらと魚影が見えた気がして、注意しつつディアナをチラリと見た。


「大して面白い話でもないわよ……」

 俺の後ろで立ったまま河を見ているディアナは、そう前置きをして話し出した。




『むかしむかし大きな森の貴族邸に、それはそれは美しいお嬢様が住んでいました。

 お嬢様は小さな頃から魔法が上手に扱え、成人になる頃には人々から賢者と呼ばれる様になったそうです。

 お父様とお母様、そして召使いの皆で楽しく暮らしていましたが、ある日噂を耳にした王様が馬車を寄越しお嬢様を連れて行ってしまいました。


 お城に連れて来られたお嬢様は王様や王女様に若返りの魔法を毎日聞かれ、その様な魔法は無いと答えると牢屋に連れて行かれ毎回酷い折檻を受けました。

 ある日牢屋の隅から出て来たネズミが言いました。

「何で教えないんだい?」

 ネズミに聞かれたお嬢様は

「だってあれは魔法ではないもの。」

 と答えたのですが、それを聞いていた衛兵が王様に伝えると王様も王女様も馬鹿にされたと烈火の如く怒り出し、二百人の魔法使いを使ってお嬢様の記憶を奪い、騎士に手足を切断させ最後に顔を潰すと元々いた森に投棄ててしまいました。


 それからその森に、度々能力持ち(ギフトホルダー)が現れる様になりました。

 彼等は皆、名前や色々な記憶と引き換えに魔女から能力(ギフト)を貰ったと言いました。』




 ……所々端折ったけど大体こんな話よ」


 ……せっかく話してくれたディアナには悪いが、余りにも救いの無い話過ぎて何て返せばいいのか……

「ありがとう、何だか色々凄い話だね。」

 振り返り、出来るだけ明るく返すとディアナは軽く微笑みながら

「まあ、あんたにとっては気になるわよね。と言うかこの話は終わり、魚は見えたの?」

 ディアナにとっては魔女の拐い人よりも今の空腹の方が問題らしい。

 スパッと話を切り替えられ、若干の苦笑いを浮かべつつもう一度水面を凝視しながら、気になった事を質問してみた。

「んー何だかたまに黒い影が動いてはいるんだけどね、と言うか魔女はそのお嬢様なのかな?何で人の記憶を欲しがるんだろう?」


 ディアナは鼻から大きく息を吐き

「その影?それを刺せばいいんじゃないの魚でしょ?あんただってお腹空いたでしょ。」

 うん、答える気は全く無いらしい。本当にこの話は終わりの様だな。


 じゃあ気合いを入れて魚を探すか、と水面を見た瞬間大きく波立ったと思うと、目玉が上に飛び出し具合に付いた分厚い唇の蛙の様な生き物が、目の前に飛び出し大きく口を開けると俺の頭を咥え込んだ。


 ディアナの悲鳴が聞こえた気がする。

 いきなり視界が真っ黒になり、バキッゴリッっと嫌な音が頭の中に響き意識が飛んだ。



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