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79話

 多分、俺は叫び声を上げたと思う。

 喉の奥が痛い、体の芯が痛い。


 薄っすらと光るトキヨミ様の枝を握ったまま、ゆっくりと崩れていくディアナをまるで出来の悪い夢でも見ているように、現実味を感じれず色を感じる事が出来ないまま、ただ見るしかなかった。


「魔導師か、邪魔な女だっ! 」


 乱暴にディアナの背中から剣を抜いた剣聖はそう吐き捨てるとディアナに目を向ける事もせず俺に歩み寄って来た。


「もう一度聞こう、あの人は何処だっ!返答次第ではお前の仲間を全員殺す」


 未だ現実味の無い俺の耳に剣聖の声が響く……が、それとは別の聞き覚えのある声も聞こえる……


『代償を寄越しな』


 俺はその声に何て答えたんだろう……


 何だか夢でも見ているようなふわふわとした、思考に靄が掛かった俺はきっと棒立ちなんだろう。

 剣聖の前で立ち尽くす俺の目の前に突然、煙のように現れたリオスに胸ぐらを捕まれると影に引き摺り込まれてしまう。


「しっかりしろっ! 兎に角少しばかりここにいろっ! 」


 リオスの声よりも俺の耳には、刺すようなコウイチの笑い声の方が耳に残った……

 俺の感情を逆撫でするコウイチの笑い声は影の中に残された俺の所にまで届くが、まるで脳髄が痺れたかのような俺はどうすればいいのか分からないまま左胸の紋様を擦り小さく座る。


 影の外から聞こえてくる皆の叫び声を聞きながら、虚無感に襲われている俺の頭の中に呼び掛ける声が響いてきた。


「……えておるか? 聞こえておるか? クロよ。妾の声が聞こえておるか? 」


 霞み掛かった思考に響いてきたのはトキヨミ様の声だろうか?

 何故、トキヨミ様が?

 未だに鮮明にはなってない思考で必死に考えていると


「男がうじうじするでないっ!お主達に掛けた妾の加護を信じとっとと立ち上がらんか馬鹿者めがっ!」


 いきなり叱咤が飛んで来たが、加護と言われても……もうディアナは……


「あやつはまだ剣聖には届いて居らぬが、時間の問題ぞ。お主は皆を無くしたいのかっ!立ち上がれっ!そして……あやつを成仏させてやってくれ……頼む……」


 だんだんと小さくなってゆくトキヨミ様の声は心なしか震えている気がする……


「「皆を無くしたいのか」……か……」


 俺がのそりと影から這い出ると、その影は見た事のない大きな木の影だった。


「この街中にこんな木生えてたか?」


 小さく吐き捨て、剣聖と対峙しているリオスとシズネさんの元に走った。

 三人の周りには数えられない程の剣と刀が墓標の様に生えていて、所々で魔人が串刺しになっている。


 二人の剣を捌きながらチラリと俺を見た剣聖は、さも嬉しそうに口角を上げると声を掛けてくる。


「来たか、さあ続きといこう」


 実に愉しそうにそう吐く剣聖にシズネさんの斬撃が飛ぶ


「余所見してんじゃないわよっ!」


 所々血が滲み汗を振り撒き剣を振るシズネさんの口調が心なしかキツイ気がする。


「女、お前では重さが足りん。吸血鬼、お前は動きが特殊なだけだ」


 そう言いながら煙のように消えては現れるリオスの剣を見切っているかのように紙一重で躱していく。


「いいぞ、三人纏めて来るといい」


 余裕を見せる剣聖の言葉に苛立ったシズネさんが右から、リオスが左から挟むように斬り付けるのを剣聖が剣捌きでかわそうとした所に俺は踏み込み上段から斬り付ける。


 まるで舞をしているかのように剣聖は金色の髪と血飛沫を踊らせ、粘つく笑みを浮かべながら俺達の剣を華麗に捌いていく。


 今代の剣聖を子供のようにあしらい、国落としの吸血鬼を片手間で相手する、剣聖の始まり千年以上前の最強の男は実に愉しそうに剣を振るう。


「いつまでやってるんだっ! とっとと終わらせろっ!! 」


 ふいにコウイチの叫び声が響き、少しばかり苛ついた様子の剣聖は小さく舌打ちをしてから俺達を睨む。


「全く、アイツには剣撃の喜びが分からぬらしいな。まぁそう言う訳だ終わらせようか」


 俺にも喜びとやらは分からないけど、一つ分かる事がある。

 剣聖は今まで構えらしいものを見せて無かったが、ここに来て剣を上段に構え大きく息を吐いた。

 どうやら決めに来るみたいだ……


 いくら力量差が有るとはいえ三対一でその構えは不利では無いのかと少しばかり思いもしたが、剣聖が不利になるならそれにこした事はない。


 俺はシズネさんとリオスに目配せをすると、剣聖の懐に潜り込むように色の無い世界に飛び込んだ。

 俺の踏み込みに少し、ほんの少しばかり剣聖の足が動いたのを確認したシズネさんは斬撃を飛ばし、それに追従するかのようにリオスが飛び込む。


 飛び込んでくる斬撃を弾き、リオスを横凪ぎに斬り裂いたその返す剣で俺の足を止めにくる剣聖の剣を受け、足を止めた俺に一撃を加えようとする剣聖の肩に意識外からの炎を纏った矢が貫く。


「僕達も居ますよっ!」


 満身創痍のハヤトが炎を纏うフォルスと現れた。


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