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77話

 そこには見たことのある男が立っていた。

 我流にしてこの世界の剣の頂点に初めて立った男、トキヨミ様に見せられた壮絶な人生を歩んだ金色の髪をした男がそこに立っていた。


 周りの誰もが不思議そうな顔を浮かべる中、俺の背中には嫌な汗が静かに流れて行く。


 その男、初代剣聖、世界から初めて剣聖と呼ばれた男は閉じていた目を静かに開けると少しばかり周りを見回し小さく息を吐く。


「何だ? この状況は? 」

「あんたの探し物は目の前の黒髪が持ってるぜ」


 少しばかり困惑した様子を見せていた剣聖にコウイチがそう声を掛けた途端、俺の目の前に斬撃の雨が降り注ぐ。

 偶然としか言えないタイミングで躱す俺に、口角を少しばかり上げた剣聖の早くて重い剣撃が襲い来る。


 慌てて飛び退いた俺が『剣山』を放ち百本程の剣を生やすも、まるで藪を切り開くかのように凪ぎ払うと一足飛びに俺の目の前にやって来て、空気をも切り裂くような打ち下ろしが打ち込まれたのを、魔女の眷属達が眠る剣で辛うじて受け止める。


「奇っ怪な技を使う男だな。あの人は何処に居る」


 剣聖の打ち込みは苛烈で受け止めるだけで精一杯の俺は返事を返す余裕も無く、歯を食い縛り耐えるしか無かった。


「クロさんごめんっ! 『剣山・裏 』」


 チカラ任せに押し込まれる俺の耳にシズネさんの声が聞こえて来たと思ったその瞬間、まるで空の星が落ちて来たかのように軽く数千はある刀が降り注いだ。


 剣聖は全力で押し込んでいた剣を咄嗟に引き飛び退いたが、なんせ範囲が広い、斬撃の雨を受け土煙の中に消える。

『剣山・裏』に張り付けにされた俺は剣聖の消えた場所を注視しつつ傷が治るのを待つ。


「クロさんごめんね。あの人何者? 」


 数十本の刀が突き刺さり地面にひれ伏す俺の横に来たシズネさんはそう聞いてくると、刀を鞘に納め腰を落とした。


「あの人、とんでもない達人だよね……」

「気は抜かない方がいい、あれが初代剣聖だから……」


 土煙が静かに流れ姿を現した剣聖は、所々うっすらと血を滲ませているが大きな怪我は無さそうに見える。


「娘、お前はその男の師か? 似た技を使う上に威力が段違いだな。面白いが、庇うなら容赦はせんぞ」


 そう言い、俺に視線を移すと


「お前は何だ? 死ねぬ者よ。剣を使う不死者はなかなか珍しいがそれだけだ」


 そう言い腰だめに剣を構えると、いつ振ったのか全く分からなかったが明らかに剣の届く距離ではない俺の胴が真横に裂けた。


 シズネさんも動けずにいる中で俺は呻き声を上げる事も無く二の太刀で登頂部から真っ二つに斬られ意識が暗転する……



 ……………


 俺の意識が戻ると眼前には剣聖が腕組みして見下ろしていた。


「お前の仲間を全滅するつもりは無い、あの人は何処に居る」


 周りを見渡すと剣聖の殺気に圧され、フォルスやハヤトはうずくまり、ディアナは真っ青な顔をしたまま詠唱を続けている。

 シズネさんは隙を探りつつも動けず、カールさんやリオスさんはコウイチの魔王の圧に気圧されているようだ。


「……あの人ってトキヨミ様の事か? 」


 地面に転がったままの俺は剣聖に聞いてみたのだが、剣聖には伝わらないのか、それともトキヨミ様と言う名前では無いのか……

 そうなると俺には伝えようが無い


「トキヨミ様? 誰だそれは、何の話だ? 」

「剣聖、話し合いするために呼んだ訳では無いんだけど。殺せば周りの仲間が教えてくれるさ」


 ほんの少しばかり興味を持ってくれたかも知れない剣聖をコウイチが焚き付ける。

 コウイチの話しを聞き、少しばかりコウイチに睨みを利かせた剣聖は再度俺に剣を向ける。


「あんたの流儀は『重い剣を使い誰よりも速く振れば斬れぬ物は無し』だったよな」


 俺に剣を向けた剣聖は目を細め俺を見る


「速さなら負ける訳ない、ぜっ! 」


 飛び起きた俺は、剣聖の目の前で色の無い世界に飛び込んで斬りかかる。

 トキヨミ様に見せられた剣聖の太刀筋を一分の狂いも無く放つ俺の斬撃を、その勘だけで受け止めた剣聖からすぐさま離れ色の無い世界に入り再度斬撃を繰り返す。


 流石にこの速度には付いて来れないようで勘だけでは次第に遅れだし、剣聖の厚い胸板に俺の斬撃が吸い込まれる。

 血の雨を降らせ、たたらを踏む剣聖を前に、色の無い世界に飛び込んだ俺の背中にゾクリと嫌な気配が這っていく。


 色の無い世界から見た剣聖は目を細め歯を食い縛り金色の髪を踊らせ、今の俺の目にはゆっくりと見える剣を俺の世界に打ち込んだ。


 光より速く走る俺の背中に剣聖の両刃の質量のある剣がゆっくりと食い込み、そのまま色の無い世界から叩き出される。


「ガハッ!! 」


 背中を切り裂かれ足を縺れさせた俺は地面を鼠花火の様に血を撒き散らし、元教会の残骸にぶつかり止まるまで進むチカラを殺せず転がり続けた。


「なるほど、速く切れば斬れぬ物は無しか」


 あぁまだ、この剣聖はこの言葉の境地に至って無かったのか……

 俺は自分の馬鹿さ加減を呪う他無かった。



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