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75話

 今、私達は一人一人が水の膜に包まれ、手近な所から暴れる魔人達を取り押さえている。

 私の魔力制御では動く三人に合わせるので精一杯で、悔しいけど後方でひたすら魔法の制御をしている状況だわ。


 シズネちゃんは剣聖らしいけど大したものね、地面から剣が生えたり剣が飛んだり……クロとは大違いね。

 ハヤトは地味にパシパシやってるし……

 けど、一番凄いのはフォルスかも知れない。

 ドワーフって炎の魔法が得意なのかしら? 今まで見た事無かったけど、ここにいても熱気が届く程の熱量の炎を操ってる……お陰で水の膜の供給が大変なんだけどね……


 額に汗を滲ませ顔に張り付く髪の毛を後ろにやりながら魔法の詠唱を続けていると突然左胸にズキリと熱い痛みと柔らかな心地良さが訪れた。

 ハッとした私は、急いで辺りを見回して見たけどアイツは見当たらない……けど……けど


 私は詠唱を止め魔法を維持したまま大声で叫んでいた。


「っクロが帰って来るわっ! 」


 私の声は剣撃や叫び声にかき消され、たぶん誰の耳にも届かなかったけど、私自身を奮い立たせるには十分効果が有ったようで、少しばかり魔力の質が上がったようだわ。


 先ほどまでよりも厚くなった水の膜に守られた三人は確実に魔人達を止めていき、紫の煙を上げ腐食している街のあちらこちらに魔人達が倒れているのが見える。


 魔界の門から出て来るのも少しばかり落ち着いたのか、今は障気を吐き出すだけに留まっている様に見えるけど、よくよく考えるとあの門を閉じないとダメなのではないのかしら?


 現状、水の魔法を展開中の私にあの大きな門を閉じる手段はなく、どうにか三人に伝えなくては……

 私が考えていると、思いが伝わったのかフォルスとハヤトがゆっくりと魔界の門に近付くのが見えた。


 物凄い勢いで魔力を消費しそうな炎を撒き散らしながら門に向かうフォルスがあと少しという所で足を止め、私を手招きする。


「何事かしら?」


 少し多目に魔力を使い、水の魔法を固定した私は急ぎ足で二人の元に向かう事にした。


 私のいる路地から二人のいる場所までは開けていて見通しも良く真っ直ぐな道のりだけど、離れ過ぎていたようで意外と遠く、走れど走れど一向にたどり着かない。


「あれ?おかしいわね……近付いてる筈なんだけど……」


 私の目がおかしくなったのか距離は縮まってる筈なのに、見え方が何一つ変わる気配がない。


 息が切れ、流石におかしいと思った私は足を止めたのだけど、フォルスとハヤトが相変わらず魔界の門の手前で手招きしている。


「何だかおかしいわよねぇ……」


 おかしいと思いつつも行かない訳にはいかず恐る恐る近付いて行くと、何か硬い物に鼻先をぶつけた。

 視界には何も無くフォルスとハヤトが見え、目の前に障害物は無い、なのに当たった……

 私は咄嗟に後ろに飛び退き、いつでも攻撃出来る様に魔法を展開しようとして気付く、今は水の魔法を展開固定中でさらに攻撃もとなると、魔力も私の思考回路も追い付かない……


 障気から皆を守るのが優先か、敵からの何らかの攻撃をどうにかするのが優先か……


 私が答えを出せずにいると、何だか聞いた事ある声がしてきた。


「魔女のオネェさん久しぶりだねぇ」


 目の前に何の前触れも無く唐突に現れたレシさんは、長い槍を構え私の前に立っていた。


「えぇと……レシさんですよね? その槍はどういう意味ですか? 」

「本当はねぇ、もうちょい前に進んでくれてたらサクッと殺す予定だったんだけどね、何で気付いたのかねぇ……」


 レシさんは軽く、そうして当然とばかりに呟き私の胸にほんの少しだけ、チクリと皮一枚ほど刺し、滲む血を見ながらポツリと呟いた。


「わたしも雇われてる身でねぇ……ごめんよ」


 そう言って一度大きく槍を引くと、未だに状況に付いて行けない私に向かい突き付けてきた。

 目を瞑り、心の中で小さく謝る私の耳に金属音が響いた。


 恐る恐る目を開けた私の正面に黒い髪が見える。


「ディアナもレシさんも何やってんだ? 」


 聞き覚えのある……聞きたくて聞きたくて堪らなかった声が、目の前の黒髪から聞こえて来たのを確認した私はその背中に抱き付いた。


「あんた、どれだけ心配させるのよ。もっと早く帰って来なさいよ」


 今の私は声を聞きながらクロの心音や温もりを、ただ確かめたかった。


「お取り込み中悪いねアンデット君、何だか髪の色が違う様だけど。どう言う事か気にはなるけど、取り敢えずわたしの上司が替わってね。君達を殺しに来た訳なのさ、大人しく殺されてくれると助かるかな」


 にこやかにそう言い、レシさんはクロごと私を突き刺すつもりなのか大きく槍を引き構える。


「レシさん、不死者の俺を殺すって冗談にしては下手くそだよ」


 そう明るく言って、私から離れるように前に出たクロの背中から鮮血と共に槍の穂先が飛び出した。



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