67話
クロさんと合流した筈なのに何でこうなったんでしょうか?
「ハヤトよっ! あの灰色の勇者は何者だっ! ハヤトのコネで是非とも城に入って貰えんかっ! 」
クロさんと別れてからずっとこの調子の王様はとりあえずは元気そうで何よりですけど、僕はフォルスたんを探しに行きたいのですが……
「陛下、確かに彼は強運の勇者である私の友人ですが……」
「……硬いなぁ……ハヤトよ、ワシの前でそんなよそよそしい感じで話をするのか? 」
「……ハウル様、とりあえず上手く逃げて貰っていい?僕の天使、フォルスたんが危ないから急ぎたいんだけど……詳しい話はまた今度って事で」
返事も待たずに僕は異常な程荒ぶっているフォルスたんの魔力の元、大広間に向け駆け出した。
城内に入り大広間に近付くにつれドンドンと上がっていく室温に流れる滝のような汗を拭う事も忘れ走って来たぼくだが、今足止めをくらっている。
大広間への扉、両開きの鉄で出来た大きな扉がまるでバーナーで熱せられたかのように赤と言うかオレンジと言うか、とにかく触れるだけで焼け死んでしまいそうな程の熱を発している。
矢を射ってみるも接触する前に燃え尽きるような高温の中、扉の奥から確実に感じるフォルスたんの魔力がある。
いつもよりもはるかに強い魔力に違和感を覚えながらどうするかと悩んでいると、白いカールさん風のレシさんが亜人を連れて歩いて来るのが見えた。
「レシさんっ! 」
「ん? ドワーフの雄か? どうした? 」
運良く現れたレシさんに、駄目元で頼んでみる事にしてみる。
「フォルスたんがあの扉の奥に居るんですがっ! 扉を開ける方法ありませんか? 」
「……フォルスタンとやらが何かは分からんが、魔法で吹き飛ばせばいいのじゃないか? 」
そう言うとレシさんは両手を前に突き出し大して詠唱もせずに空気の塊を飛ばした。
「っ! レシさんっ! 燃えてる部屋に空気は不味いっ! 」
僕の声は扉をぶち抜き燃え盛る部屋に送り込まれた大量の空気のお陰で起きた大爆発の音に掻き消され届かなかった。
埃舞う中に見えるのは倒れている左腕の賢者と魔力を放出し続けるフォルスたんだった。
ーーーーー
「『大鋏』っ!! 」
叫んだ賢者はあたしの目の前から姿を消し、一瞬だけ熱気に囲まれたこの空間に風が吹いたと思うと目の前に現れ、光る左腕と剣であたしの首を飛ばしに現れた。
辛うじて躱した筈のあたしの首に赤い筋が入ったようで触るとヌルリとした感触があり、手にはベットリと血が付いていた。
「はははははっ! 傷付いたなっ! 」
あたしの首の傷を見て突然笑いだした賢者に目をやると、余程嬉しい事があったのか見た事も無い程顔を綻ばせ喜んでいる。
先程傷付いた首がズキリと鈍く痛み血を噴く。
「小さいのよ、大鋏はな傷さえ付けてしまえば後は勝手に斬れてくれるんだよ。ゆっくり観賞させて貰おうかっ! 」
首を抑えるあたしをよそに高らかに叫ぶと、あたしから距離を取り大広間の端にある大きな鉄の扉まで離れて行く。
汗を拭う素振りを見せているので、きっと熱源のあたしから少しでも離れたいのだろう。
ズキンッズキンッと痛み、少しずつ傷が深くなる感覚に焦りを覚えるあたしは首が飛ぶ前に倒してしまえば止まるのでは、との考えに至り少しでも余力を残すなんて甘い考えを捨てる事にした。
「賢者さん、優雅に見てるのはいいですがあたしの首が無くなる前に焼け死んで貰います」
「ふんっいくら熱くとも離れてしまえば耐えれない事は無い。焼け死ぬには火力が足りんなぁ、小さいの」
あたしは余裕そうに言う賢者の言葉に耳を貸さず只ひたすら集中していく、放出なのか暴走なのか自分でも分から無いけど、肌がチリチリと焼けて行くがもう自分でも止めれそうにない勢いで魔力が放出されていく。
あたしの肌が熱気による乾燥でひび割れうっすら血が滲み、首から落ちる血も肌の血も出る端から蒸発し固まって行く。
少しずつだが確実に上がっていく温度で石造りの建物だけに、周りを囲む全てが赤熱して行くこの状況を感じて流石に焦りを感じたのか、賢者が扉を開けようと剣を構えたその時
物凄い爆音と共に衝撃波と焼けた扉が飛んできて、破片と衝撃波が左腕の賢者を貫いた。
熱風が外に放出され外の冷えた空気が代わりに入って来る。
新鮮な冷たい空気が肺を充満するが、放出を止める事の出来ないあたしの魔力ですぐに熱風に変わってしまった。
瞳も乾燥して白くぼやけハッキリと状況が見えない中であの人の声だけがやたらと鮮明に鼓膜を震わせた。
「フォルスたんっ!」
あぁ、あたしの騎士様が来てくれました……
ここであたしの記憶は途切れてしまいました。




