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61話

 最高速で廊下を駆け抜ける俺は突然刺す様な視線を感じ立ち止まる。

 どこから見られているのか分からないが、確かに見られている。

 今の今まで色の無い世界で、光よりも速く走っていた筈の俺を見る事のできる奴がいるのか?


「誰だっ! 出て来い! 」

「おやおや、眷族一人で迷子ですか。魔導の勇者の策はそれなりに効果が有ったようですね」


 廊下の先、曲がり角から痩せぎすな目がやたらとギラギラとした男がゆっくり現れた。


「目の賢者……」

「ほう、よく覚えていましたね。不死者と言ってもトリ頭では無いらしい。うん、素晴らしい」

「馬鹿にしてんのかっ!」

「いやいや、馬鹿になんて、不死者相手にどうするか考えてるのですよ。貴方達の相手は面倒ですから」


 目の賢者はそう言うと、こめかみの辺りに人差し指を当て静かに考え出してしまった。


「考えるぐらいなら見逃してくれないか。面倒なんだろ? 」

「そうしたい所ですが、立場上そう言う訳にもいかないのですよ。大人しく死んで頂けますか」


 そう言うと、小さな杖を懐から取り出し空中に何やら書き出した。

 空中を見つめ、何やらしている賢者に警戒しつつ


「なぁ、賢者さんよ俺が死なないって知ってて戦うのか? 」

「なぁに、魔女の魔力が無くなるまで殺し続ければ良いだけでしょう」


 そうアッサリと言いのけ杖を天井に向けた。

 空中に円と幾何学模様で作られた光の輪が浮かび点滅する。


「そう言う事なら死ねないなっ!」


 賢者の言葉を聞き、その光景を視界に入れつつ色の無い世界に飛び込んだ俺に、点滅する輪から人の大きさ程の火の玉が飛んで来る

 俺の速度に着いてくる火の玉を辛うじて躱し、目の賢者の懐に入ろうと踏み込んだのだが、あのいやにギラギラした視線に違和感を感じ、踏み留まる。一体どこから見ているんだ?


「流石に早いし勘もいいようですね。その早さは能力なのでしょう?どこまで速くなるか見せて貰いましょうか」


 そう言うと、更に空中の光の輪を増やしていく。

 踏み込もうにもあの視線が気になる。

 どこからかの視線を感じ俺が躊躇している間にも光の輪は十を超え未だに増え続けている。


「くそっ! 」


 訳の分からない状況に悩んでいても仕方がないと、一か八かで踏み込んだ。




 ーーーーー


「貴女達は誰でしょうか?僕の記憶に存在しないのですが? 」


 フォルスたんと離れ離れになり飛ばされた先は、王城の門の前で普段なら門兵が居るはずなのですが、代わりに数十名のディアナさんの様な白い髪の無表情な女の子達と、無表情な少年達が居ました。

 城の人達は大体は把握してるのですが、どうにも見覚えの無い人達です。


「フォルスたんを探しに行きたいので通して貰えますか? 」

「…………」


 ふむ、無視ですか。

 しかしこの人達の魔力って……なんだか気持ち悪い……取って付けたかのような変な魔力を感じる。

 あまりにも無反応な人達の前で僕が呑気に気を抜いていると、少年達が飛び掛かって来たっ!


「ぬぅうぉっふっ!」


 驚き躱すのに変な声が出たが、僕はそんなに機敏には動けません。

 十人近くの少年達に押さえ付けられ組み伏せられた僕は、どうにか逃げようと辺りを見回していたのですが、とんでもない光景を見てしまいました……


 白い髪の少女達が各々の手に色鮮やかで色々な魔法の光を灯し僕を狙っています。

 嫌な汗が流れ落ち、目の合った少女が微笑んだ気がしました。

 炎の槍や落雷、土の杭に荒れ狂う風が押さえ付けられた僕に少年達ごと降り注いだ。


「まじか……」


 体を襲う、熱や痺れ痛みの数々に襲われ苦痛の中、何とか目を開けると黒く焦げ切り刻まれ形を辛うじて留めている様な少年達が目に飛び込んで来た。


「……なっ何て事を……」


 僕は少年達のお陰か致命傷のような傷は無いものの、たかだか僕一人を殺す為にこれだけの少年達を犠牲にしたと言うのか……

 僕が言葉を失っている目の前で人の形を成していなかった少年の体が、趣味の悪い逆再生映像を観ているように治っていく。

 周りを見ると次々と起き上がって行く少年達……


「……魔女と眷族達か……」


 気付いた僕に今のこの状況は絶望でしか無かった……


 起き上がる少年達から距離を取り矢をつがえ、離れた所の詠唱に集中している少女達に矢を放ちながら更に距離を離すべく走る。

 例え不恰好でも何人かの魔女を仕留めれば逃げ切れるはずです。


 と、僕の甘い考えはアッサリと覆され、少女達を護る様に肉の壁となるべく少年達が少女達を囲み、次々と倒れて行く。

 矢を次々と放つ僕に無表情な少年達が次々と飛び掛かって来て少女を狙ってる矢に当たるも、すぐに治ってしまう。

 治る瞬間に多少動きは悪くなるものの、数が数だけに囲まれてしまうと逃げ出せずにいる。


 その光景に何一つ感情が揺さぶられる事無く、次々と詠唱を完成させると、少年達に襲われる僕にまたしても放って来る。


 延々とこの繰り返しをする少年と少女に襲われる僕には悪夢でしかなかった……


「これが魔女と眷属の本来の戦い方なんでしょうか……」



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