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5話

 森の中で倒れていたのは覚えている。

 けど、それ以前の記憶が真っ白で自分が何者かすら分からない。

 今、自分が立っているのか分からなくなるぐらい頭が混乱してきた。


「ねえ、どうかしたの?バカみたいに顔色悪いわよ?」

 青い顔して突っ立ってるであろう俺にディアナが声を掛けて来た。


「坊主、まだ体調悪いのか?」

 ゴードンさんも変に思ったのか眉をひそめこちらを様子見している。


 心配を掛けてしまっている気まずい状況に、一先ず自分の混乱は置いておき努めて明るい声を出して見た。

「ん……あぁごめん。体調は多分大丈夫なんだけど……何て言うかその……呆れないで聞いて欲しいんだけど俺、自分の名前が記憶に無いんだ……」

 俺の発言を聞いた二人は大きく目を剥いている。

「その上、何て言うか死に掛けで倒れてた理由も記憶に無い……と言うかそれ以前の記憶が綺麗さっぱり無い、んだ……はは」

 話しながら何だか乾いた笑いが込み上げて来た。


 目を剥いたままのディアナは、小さく息を吐きながら呟いた。

「頭を強く打ったから?それとも血を流し過ぎた?」

 しかしゴードンさんは何か納得した顔をして顎髭を触りながら

「あーあれだな。御伽噺とばかり思ってたがこの森の中での事だしアレだ、()()()()()()だろうな。」


 一人で納得してるが俺には何の事だか理解出来ず、ディアナを横目でチラリと見てみるとどうやら理解出来ているらしく大きく何度も頷くと

「それって記憶と引き換えに能力(ギフト)をくれるって言う童話の中の話しでしょ?バカバカしい」

「いやそれがな、その話の舞台がここ()()()()なんだわ」

 ちょっと小馬鹿にした感じのディアナにゴードンさんはそう付け加えた。

「オレの死んだ爺さんがな子供の頃に会ったらしい。魔女にとんでもない魔法が使える力を貰ったとか何とか。全く信じてなかったんだがなぁ……」

 ゴードンさんはそう言うと肩を竦め俺を見た。

「じゃああんたは名前や記憶と引き換えに何か凄い事出来る力貰ったんでしょ?勿体振らないで教えなさい。けど、先ずはあれね」


 未だ理解が及ばない俺に、腰に手を当てビシッと音が聞こえそうな勢いで指差したディアナは

「とりあえずあんたは今日から()()よ。珍しい黒髪黒目、クロ以外はあり得ないわ」

 ……鼻息荒くあまりにも単純かつセンスの感じられない名前を付けられてしまった。


「それでクロ、あんたの能力(ギフト)は?」

 せっかくの綺麗な顔が台無しな、ニヤケ顔で聞いてくるディアナに俺は答えが見つからない。と言うか、何か貰ったのか?


 ディアナとゴードンさんの期待の籠った視線を感じつつ、ふと気付いた事があった。

「そう言えば、倒れていた時にディアナが話しかけて来たよな?あれは全く言語……言葉として聞き取れ無かったし理解出来なかったんだよ、でもさ今は会話が出来ている。って事はこれが貰った能力(ギフト)じゃないのかな?」

 二人に視線を向けるとディアナは青い顔をし、ゴードンさんは呆れ顔だ。

 青い顔をしたまま最小音量でぶつぶつと呟くディアナは何か怖いので、とりあえず呆れ顔のゴードンさんの方を向き怖い人を視界から消す事にしておいた。

 ゴードンさんは俺の側まで寄って来ると、肩に手を置き微笑み

「まああれだ、言葉は大事だな。気を落とさず記憶を返して貰う方法でも探せばいいじゃないか。王都辺りに行けば何かあるかも知れんしな。」


 ……何故だろう励まされている気がする……

 ゴードンさんの言う通り探してみるのも良いかも知れない、と頷き口を開け様としたが

「っって何あんた私の契約の文言聞こえて無かったってことなの!何なのよバカ!!」

 顔を青から赤にしたディアナに遮られてしまった……



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