49話
「がはっ」
視界の外から飛んで来た剣に地面と縫い付けられると同時に、頭の中に変な声と熱量を持った液体……気体を流し込まれる……
『契約に囚われし我等が同胞よ……』
がぁっ!左胸が燃える様に熱い、頭の中に数人の男の声が聞こえて来るがそれどころでは無い。
熱い……熱い……熱い……ん?
視界の端に戸惑いの色を見せる団長と、走り寄るディアナが見える……
団員達に何かを喚き立てている団長を横目に、駆けて来たディアナは迷う事なく俺に刺さった剣を掴みチカラ一杯引き抜くと
「何だか訳が分からないけど助かったわ。ありがとう。とにかく早く逃げるわよ。」
ディアナが引き抜いた剣は二匹の蛇が絡まる俺の両刃剣だった。
何故ディアナが動けているのか、何故俺の剣が飛んで来たのか俺も訳がわからないが、とりあえず重そうに持つディアナから受け取り構えを取る。
考え事は今は後回しでいい。
「ディアナ、とりあえずカールさんを手当てしてくれないか?それまでは持ち堪える」
そう伝え、完調の体でディアナをカールさんの所に瞬時に連れて行き、返す足で団長に斬りかかる。
まだ喚き続けていた団長だが、流石の反応で紙一重で躱されてしまった。
「化物めっ何をしたんだ……忌々しい。その剣は何だ? 何故魔女の魔力が増えたんだっ! 」
疑問を投げ掛けつつ斬り込んで来る団長の剣を受けつつ、チラリとディアナを見ると必死に魔法を掛け治療している様だ。
少しかかるか……
「知るかよっ! 俺が聞きたいぐらいだっ! 」
上段から打ち付けた俺の剣を受け団長の膝が崩れる。
この機会を逃すかとばかりにもう一度打ち下ろすと、受け止めた団長は剣から手を離し転がる様に後ろに逃げた。
「忌々しいっ! その禍々しい剣を手にして調子に乗ったかっ!! 」
団員から新しい剣を受け取り、乱暴に振るうがそんな剣を喰らうわけもなく難無くと躱すと、まるで駄々っ子の様に雑な剣が宙を切る。
ディアナに目をやるとカールさんの他にフォルスとハヤトも居る、全くどこから現れたんだか……
相変わらず宙を切り続ける剣の横っ腹を蹴り飛ばし、飛んで行く剣を横目に見ながら
「団長さんよ、何で心が折れてるんだ? 」
何だろう、急に雑になったと言うかこんなのまるで子供のぐるぐるパンチじゃないか。
「何度切っても治り、殺しても死なず挙句の果てにこの調子だっ! ……わたしにどうしろと言う。貴様は死なず、訳の分からないチカラで魔女まで復活する始末だ! 」
団員達まで、どうすればいいのかと剣を降ろし始めている。
これは、いい退き時かもしれない。
そんな事がふわりと頭を過ぎる
「貴様らを裁判して殺すなど不可能ではないかっ! このままおめおめと終わる訳にはいかん事ぐらい貴様でも分かるだろう、一思いに殺せ!! 」
死なずに無事終わるで駄目なのだろうか……
体の中を流れていた熱い何かが冷めていくのが分かる。
「そもそも殺す必要も無いし、あんたの流儀に合わせるつもりは無いよ」
大体、ディアナを助けれたんだもう潮時だろうと、冷めた俺は吐き捨てた。
呆然とした団長は絶望に顔を染めるが、すぐに目を吊り上げ怒声を上げる。
「くっ貴様っ! オレを生かした事を後悔させてやる……オレは聖堂騎士団団長のベルーチっ! 必ず貴様を殺してやるっ! 」
「そうかい、俺は下僕のクロだ。主人にご用の時は受けて立つよ」
それだけ言い、俺は棒立ちの騎士団員達の間を悠々と歩き、待っている仲間達の元に向かった。
ーーーーー
あぁ、イライラする。この醜態を司祭様にどう伝えれば良いのか……
化物達が消えた公園でわたしは実に苛立っていた。
団員達もわたしに声を掛けれず困っている様だが、あぁ駄目だ何かを切らなければ平静が保てない……
「ちょっとそこの団体さん」
苛立ちの絶頂に居るわたしに気安く声をかける愚か者が現れた。
公園の片隅に居るわたし達に何の用だ? 邪魔くさい平民め。
そう思いつつよくよく見ると、何だこの女……変な格好をして腰に変な剣を下げ……黒髪か……黒髪の一族の相手などする気分ではない。
「邪魔だ」
鬱陶しいと腰にした剣を抜き振ろうとすると、小さな聞き逃してしまいそうな金属音がチンとすぐ近くから聞こえ、剣を持つ手が落ちる。
剣を持ったまま落ちる右手首をボンヤリと見下ろし、付いていた場所、右手をみれば血の雨を断続的に降らせている……
「なっ! ぐぁぁっ!! 」
「わたしに剣を向けるなんて馬鹿じゃ無いの……まあ良いけど、ところで王都に行くにはこの方向で合ってるの?」
治癒魔法師が急いで駆け寄って来て、わたしの手に魔法をかけているがそんな事よりもこの女、何らかの方法でわたしの手を斬り飛ばしたと言うのか……いつ動いたと言うんだ、この女さっきの化物よりも化物ではないか……
「わたし、あんまり時間がないのよねー。出来たらさっさと答えて欲しいんだけど……」




