47話
男達の後を追い角を曲がると、噴水のある公園に数人の騎士達がディアナとカールさんに槍を向け牽制している。
距離があるため何を言っているかまでは分からないがディアナとカールさんを何やら怒鳴り付けている様だ。
次々と駆け付けて来る騎士達は住人を公園から追い出し、ぞろぞろと隊列を組み始めた。
飛び出して行くべきかと様子を伺っていると、剣を手にした団長がディアナに向かって行くのが見え、俺は咄嗟に手にしたハルバードの先、手斧の様な部分を全力で投げつけた。
豪快な風切り音を立てて飛ぶハルバードに気付いて、弾き返そうとした別の男に突き刺さり吹き飛ぶ。
その光景を目の当たりにし、振り返り俺に目をやった団長は怒声を上げた
「化物めっ!」
「もう少年とは呼んではくれないんだな」
「一度は針の山、二度目は焼いた、なのに何故生きている。見た目が少年だとしても中身は化物ではないかっ!」
ずいぶんな言い種だなと思いつつも、素手のまま団長に向かい駆ける。
流石に三度めで俺の行動を読んだのか、殴りかかった拳はあっさりと避けられお返しとばかりに蹴り飛ばされてしまう。
「がはっ……」
「やはり武は素人だな、素早いだけの攻撃しか出来んとは話にならん。今度は細切れにしてやろう。」
蹴り飛ばされた俺の胸元を激しく踏みつけた団長は、剣を振り上げ忌々しげに吐き捨てた。
またかとディアナ達に目をやると騎士団に攻め立てられながらも、俺を見て大きく首を横に振る
「クロっ!魔力がもうほとんど無いわ、いいから逃げなさい!!」
ディアナの言葉を聞き終わる前に、団長の剣が視界に入ったかと思うと一瞬で俺の意識は暗転した。
……………
意識が戻ると、未だ胸元に圧力があり目を開けると団長の足が見える。
「面白い。どう言う魔法かは分からないが魔女の魔力の分だけ生き返れると言う訳か。さて、魔女の魔力が後何回持つのやら」
団長の言葉を聞きながらディアナに目をやると、鼻血を垂らし青い顔をしたディアナをカールさんが支えている状態だった。
非常に不味い。魔力が無くなるとどうなるかは分からないが、このままではディアナの魔力が無くなるまで殺され続ける……逃げようにも団長の靴のスパイクが胸に食い込んで身動きが取れない……
団長の足首を掴み、どうにかディアナへの負担を減らそうと考えてる間に、剣が俺の喉を貫く
「ごぼっごぽっ……」
声にならない音が喉から出て、ジワリと意識が暗転して行く視界の端に飛び掛かるカールさんが見えた……
……………
胸元に重みが無い……
咄嗟に飛び起きた俺の視界には、腹部を切り裂かれたカールさんと倒れ込んだディアナが飛び込んで来た。
その光景に不甲斐無さと怒りが込み上げて来たが、勢いだけで勝てる相手でも人数でも無いと思考を巡らす。
背を向けた団長と、カールさんに意識を取られた騎士団達……
……考えろ……
二人を連れて逃げるには人数が多すぎるし、一人ずつ倒して行く程の余裕も無く武器も無い……
「……どうすればいいんだ……」
「おっ起きましたね。魔女はもう限界みたいですよ、後数回もしたら魔力切れで死にますかね」
俺の小さな呟きを聞き取り団長が振り返る。
考えさせて貰えないらしいが、とにかく魔力が切れると死ぬと言うのは本当なのか?嘘だとしてもこれ以上ディアナに負担を掛ける訳にはいかない……しかし
思考を放棄して、団長に向け全力で駆ける。
……よく見ろ、よく見ろ……
やはり見えては無いらしく、タイミングを計るように踏み込み切り付けて来る。
その動きは予想してた。
団長が踏み込んだのを見て、走る向きを無理矢理変え側面から団長の隙だらけの首を掴み地面に叩き付ける。
大きく呻き咳き込みよろめく団長から距離を取り、再び色の無い世界に飛び込む。
……よく見ろ……
俺の足が蹴った場所を凝視している気がする……それで何が分かるんだ?
俺が方向転換した瞬間、脇腹を浅く裂かれた、見えるのか?
見えてるのか?
「愚かな化物めっ、いくら早く目で追えなくとも、向きを変える瞬間は一瞬だけ止まってるぞっ!」
顔を赤らめ眉間にシワを寄せ、鬼の形相で俺を見ている団長がそんな事を言ってくる。
「ったく、化物はあんたの方だろう団長さんよ。」
目一杯の嫌味を込めて吐き捨てはしたものの、方向転換の瞬間が見えるとかどんな目をしてるんだ。
しかし、今この状況で俺に出来る事なんて……愚痴っても仕方ない……
腹をくくりもう一度加速して、色の無い世界に飛び込んだ。
加速を繰り返し、団長の周りを右に左にと移動するが、遅れながらも剣が追いかけて来て、俺の体に着々と赤い筋を重ねて行く。
素手と剣では距離が違いすぎる……
俺は一度、団長を抜き去り後ろの騎士の顔面を潰し剣を奪う。
「馬鹿者っ!全員気を抜くなっ!」
団長が騎士達に檄を飛ばした瞬間を見計らい、ここぞとばかりに脇に走り込んだ俺は胴を薙いだが、チカラが入り過ぎたのか胸当てに当たった衝撃で剣が折れ、動きの止まった俺を喜色を浮かべた団長の剣が切り裂く。
「がはっ……ま……まだだ……」
吐き捨てた俺をどこからともなく飛んで来た大きな両刃剣が地面に縫い付けた。




