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46話

  槍が突き刺さり崩れる男を見る事もなく、千切れた足をカールさんに投げつつ俺は目一杯叫んだ。


「カールさん!首輪っ!」


 ディアナの首輪さえ取れれば後は何とかなる。

 隙と見て切りつけて来た男の剣の鍔を掴みチカラ一杯引き奪うと、そのまま少しばかり胸に刺さるが気にする事なく剣の持ち主を殴りつけ剣を構える。

 この一連の流れを祭壇から見ていたマントの男が苛立ちを込め吐き散らす。


「騎士団達よそいつは能力者だっ!数で押せっ!!生かすなっ!」


 言われるまでも無いとばかりに男達は一斉に槍を突き付けてくるが、シズネさんに教わった剣が役に立ったのか何本かは弾き返す事が出来た。

 しかし暴風のように絶えず襲う槍の数に堪らず飛び跳ねると


「武は素人の様だな少年っ!」


 声と同時にハルバードが宙に浮いた俺の腰を深く抉り、そのまま叩き付けられた。


「がっはっっ!」


 そう言えばシズネさん言ってたなぁ……簡単に跳び跳ねるなって……

 血の雨を降らせつつ落ちた俺に次々と槍が刺さって行く。

 意識が暗転していく俺を見下したハルバードの男は何やら言うと背を向けカールさんの消えた路地に向かって行く


 ……………


「ゴホッ……待てよ……まだだ……」


 どれ程の時間も待たさず起き上がった俺を見た聖堂騎士団の連中は振り向き言葉を無くす。

 たった今、切り殺した男が全身を血で染めてはいるが五体満足で立っているのだから……


 俺を見て誰かが叫ぶ。魔女は本物だと、魔女の眷属は本物だと……


 未だ焦点は完全には合わず、耳の中も血が固まっているのかこもって聞こえるが、間違い無く言える事はディアナの首輪が外れたという事と騎士団が先程よりも明確な殺気を俺に向けている事だろう。


「少年、この時点で君をどうしても殺す必要が出て来た様だ」


 ハルバードの男がハッキリとしかし静かに呟き、怒気を込め駆けて来る。

 俺も、先程奪い取った剣を上段に構え駆け出した。


 ほんの数瞬の間に思考を巡らす。

 思い出せ、シズネさんは何と言ってた?

『相手を良く見ろ、全力で振るな、次の手を考えろ、避けられた時、受けられた時、直ぐに次の行動に移せ。』だった筈だ。


 色の無い世界で加速した俺は、目の前のハルバードの男の頭頂部目掛け剣を振り切った。が、見えたのか感なのか、咄嗟に防御に回したハルバードをへし折り鎧の肩甲に当たり止まった。

 奪い取った剣は肩甲に当たった時に砕け、お互いに無手となったがハルバードの男はすぐさま振り返る事もせず、俺を見据えたまま


「わたしの剣を寄越せ。悪いが少年、能力者相手に遠慮はせんよ」


 ハルバードの男は団長と呼ばれているらしく、部下と思われる男から大きな両手剣を受け取りながらそんな事を言って来る。


「なぁ何故魔女を殺すんだ?」


 斬り付けてくる剣を避けながら俺の口から出た疑問が、余程面白かったのか大きく肩を上げ目を見開き部下達を見て


「魔女だからだよ。君の彼女も君を殺した後でちゃんと殺してあげるから安心すると良い」


 何故だ?魔女だから?ディアナが何かしたのか?

 それだけで殺されるのか?

 団長の物言いに頭に血が上るのが分かった。


「ディアナが何をしたっていうんだっ!!」


 俺の怒声が響くよりも早く、ハルバードの男、いや団長の鎧の胸甲板がへこみ俺の拳が砕け血が舞う

 動きが声を超えたのか後から響く自分の声を聞きながら、団長の膝が崩れたこれを好機と続けて殴ろうとした所で、突然目の前が真っ赤に染まる。


 熱い……肉を焼く匂いがする……呼吸が出来ない……思わず後ずさる俺の体に数十本の槍が刺さり、またしても俺の視界は暗転する……


 ……………


 ……微かに聞こえてくる話し声……騎士団の男達の声だ……


「団長は見張ってろって言ってたが、魔法で灼かれた上に蜂の巣だぜ。もういいだろ」

「だな。いくら怪物でも死んだだろう、団長を追うか」

「あぁ、化物の死体なんか見てても気持ちいいもんじゃねぇしな」


 声が聞こえなくなり遠ざかる足音が聞こえる。


 俺は焦げ固まり穴だらけになった体が再生していくのを確認して、折れたハルバードの先端部、手斧程の長さになったのを拾い駆け出した。

 どうやら三人居たらしく、街中をガチャガチャと金属音を立てながら走っているのを気付かれない様に追いかけると、どうやら合流したらしく何やら話をしている。


 そこまで遠くには行ってはなかった様で、街の住人を捕まえて聞き込みをしているらしい。

 さすがに住人の前での戦闘は不味いかと思ったのだが、ぼんやりとしている時間が無い事に気付く。

 フォルスとハヤトを探さないといけないしな、と自分に言い聞かせ先ずは近場の一人をと俺が動こうとしたその時、耳が痛くなるような甲高い笛の音が聞こえて来た。

 それまであちこちで住人を捕まえ聞き込みをしていたのだが、音がした瞬間に皆が空を見上げた。


「一体何だ……?」


 驚く俺に気付く事も無く、一様に顔を上げた騎士団の連中はお互いの顔を見合わせると、徒党を組み笛の音の方へ一斉に走り出した。


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