43話
「ん……冷た……」
冷たく硬い感触に目を覚ますと、見覚えのない石造りの鉄格子が嵌められた場所にいた。
自分の置かれている状況を確認し、いまいち冴えて来ない頭を働かせ考える。
まず、今一人でいると言う事は三人は別の場所に居て、かつ背中の剣が見当たらない……
あの夜ご飯に何らかの仕掛けがあったのだろうけど、一体誰が何の為に?
取り敢えず考えても答えが見えないので、出られそうな場所を探そうと部屋の中を見渡して見ても窓の一つもない……
どうしたものかと、とりあえず鉄格子を蹴ってみたが揺れもしない、やはり出るにはこの鉄格子の鍵的な物がいるようだ。
諦め悪く俺が鉄格子を何度も蹴っていると石造りの廊下を歩く足音が聞こえてきた。
蹴るのを一旦やめ注意深く凝視していると、歩いて来た人物は鉄格子の前迄来て俺を一目見るとため息を付いた。
「全く、あんたらは馬鹿なのか?」
浅黒い肌の頭に巻き角を二本生やした、目付きの悪いお姉さんはそう俺を蔑む様に呟き、またしてもため息を付く。
「何でもかんでも警戒もせずにホイホイと……」
何だか親しげに話し掛けて来てるが、誰だ?思い返すも角がある人はは鬼族しか会った事が無いはず……
「あっ!ひょっとして記憶を無くなす前に会いました?」
俺の言葉を聞くと、巻き角のお姉さんは大きくため息を吐き、ポケットから鍵の束を出し鉄格子を開け、ズカズカと入って来たと思うと大きく振りかぶり俺を殴り飛ばした。
「がはっ……何を……」
「それはあたいの台詞だよ!どんだけボケてんだいあんたは!毎日毎日あたいの背中に荷物縛り付けて歩かされたのに分からないって病気かい!」
……お姉さんは何を言ってるんだ?
俺だろ?ディアナだろ?フォルスだろ?ハヤトだろ?カール君だろ?……
「だから知らないっての!俺の仲間にお姉さんは居ないぞ!!」
思い返しても全く分からない、俺の叫びを聞いてお姉さんは心底呆れた様に言う。
「この見事な巻き角に光る褐色の肌、何で分からないかねぇ?あんたらがカール君って名付けたあれだよ!」
そんな事を真面目に言うもんだから、一瞬驚いたが俺は騙されない。
ドヤ顔をしているお姉さんを睨み付け
「カール君はオスですっ!がふぅっ」
腕組みをしたお姉さんの強烈な前蹴りが俺の下腹部を直撃する。
「トキヨミ様があたいはメスだって言ってただろうが!!」
朦朧とした俺はそう言えばそんな事言ってたなぁ……なんて考える余裕も無かった……
しばらくして何とか下腹部の痛みから立ち直った俺にお姉さん……いや、カール君?カールさんは言う。
「面倒な事に巻き込まれるのが嫌で普段は獣化してるんだよっ、ったく……なのにあんたらは進んで揉め事に巻き込まれていきやがる。大体、魔女にドワーフに黒髪とか人間からしたら財宝が歩いてるみたいなもんじゃないか、少しは隠すとか誤魔化すとか……」
カールさんの説教は続いているがふと気になり
「え?三人は何か凄いの?」
「ああん?あんたは本当に馬鹿だね……あの三人は高く売れるんだよ。そもそも魔女とか伝説の生き物だし、ドワーフのメスは珍しい上にあの容姿は格別だからね。それに黒髪だろ、どんな能力持ちかは知らないけどいい値になるさ。だからあの三人は連れて行かれてる訳よ。」
なるほど。と、なると俺は何故ここに?
「あんたはただの人間に見えたんだろうね、売り物にはならないって奴さ。」
運が良いのか悪いのかは置いておくとして何だろう、この切なさ……
しかし、そんな事よりも先ずは助けに行かなくては。
幸い何となくだがディアナのいる所は分かる。
「だから、まず簡単そうなあんたを助けに来たって訳さ。見張りもいなけりゃ鍵も机の上にポンってな具合の簡単なお仕事さ。さてと、早速あたいの世話係りのフォルスを助けに行くよ。」
「成る程、しかし放置って俺の価値は無いのか……いいけどさ。でフォルスはどこにいるんだ?ディアナなら大体は分かるけども。」
とりあえず納得はいかないがこの状況を理解は出来た。
後は皆の場所とカールさんの戦力だな。見た感じ武器は持って無さそうだが、立派な角もあることだし何となく強そうだな。
俺がまじまじと見ていると、カールさんは片眉を上げると
「知る訳無いだろ馬鹿じゃないのか?誰か捕まえて聞くんだよ、あんたがさ。」
どうしよう……カールさん、あてにならないじゃないか……
しかしそれなら予定は変わるがディアナが先だな。
この魔女の眷属の契約ってのは、こう言う時に意外と役に立つもんだな。
「じゃあカールさん、ディアナならすぐに行けそうなんで先にディアナの所に行きますよ。」
「……急げよ、フォルスに何かあったらあんたを殺すからな。あんたの頑張りに全てが掛かってるんだ気合入れろよ。」
カールさんは仲間では無いのだろうか?
とにかくここに居ても仕様がない、俺は鉄格子の扉を潜り抜け石造りの廊下を走り出した。




