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42話

 隣の部屋から大きな木箱を持って来たシュレスさんは俺の足元に置くと真面目な顔をして


「いいか小僧、旅する男の足にそんなペラペラの靴では駄目だ。厚い革の脛まで紐をきっちりと縛れる奴で無いといざというときに動けなくなる。」


 そう言い、木箱から何足か出して目の前に並べた。

 履けば脛の中頃までありそうな分厚い革の重たいそうな靴……

 手にするとやはりズシリとした重さがあり、靴底には数十本の鉄製の短いピンが生えている。


 困惑する俺を他所に、シュレスさんは俺の足の大きさに合うであろう一足を取り出すと、履けと言わんばかりに差し出して来た。


「いいか、こいつは底革が三枚でな、履く前にまず癖を付けてから履くように。これをしないと爪先と踵がどんどん削れてしまう。」


 そう言うと差し出して来た靴を指の付け根辺りで何度か折り曲げシワを付けて大きく頷く。

 何だか要らないとは言えない空気の中、足を入れ紐を硬く縛ると……足首が全く動かない……

 ディアナの顔を見ると反らされ、フォルスは端から見ていない……


「あの……足首が動かないんですが……」


 俺の心の叫びが届いているのかは分からないが、シュレスはニヤリと笑うと


「直ぐに馴染んでもう手離せなくなるぞ、それはやるから大事にしろよ。まぁ底が減ったらその時は有料で張り替えてやるから心配するな。」


 そうは言うが、この硬い足首も曲げれない靴が馴染む日が来るのだろうか……

 足元を見て足首を動かそうと試みてる俺の肩を叩き


「下ろし立ての靴は拷問よね。まぁ頑張りなさい。」

「半年もしたら馴染みますよ。頑張って下さい。」


 ディアナとフォルスから励まされてしまった……

 シュレスさんが見てる手前喜ばないと不味いかな?と思いながらチラリと見てみると、もう俺には興味が無いのかハンスさんと談笑しながらお茶を飲んでいる。


 まぁ今迄履いていた靴も丁度限界だったしと、脱いだ底のカパカパしてる軽く柔らかい靴をごみ入れに投げ込み、お礼を言った後ハヤトを引き摺り店を後にした。


 ……後日、俺の捨てた靴を見付けたシュレスさんが画期的な靴を世に出し一躍有名になったと言うのはまだ先の話……


「あーいたいた、無事ですかい?」


 大通りに出た俺達に声を掛けて来たのは荷馬車の最後尾にいた片目の無いオッサンだった。

 顔の半分に大きな切傷の跡がある強面のオッサンが駆け寄って来て心配そうな顔をしているので、フォルスを前に押し出し見せる。


「ありがとうございます、ご心配おかけしました。」


 押し出されたフォルスが大きく頭を下げ、何やら言ってはいるが傷のオッサンは俺に背負われているハヤトに怪訝な顔をして見ている。


「あぁオッサン、この変態は気にしなくて良いよ。そのうち起きると思うから。」


 傷のオッサンにそう告げると、優しい笑みを浮かべ俺の肩を叩く

 いや、痛いから……

 オッサンの迎えのお陰で俺達は迷う事なく宿に到着出来、傭兵のオッサン達に軽く声を掛け案内してくれた部屋に入りハヤトを投げ捨て腰を下ろした。


「あー疲れた……と言うか足首が尋常じゃ無く痛いんだけど」

「新品の靴は噛むからね、まあ慣れなさい。」

「クロさん、靴に脂を塗ると柔らかくなりますよ、はいどうぞ。」


 グダグダと言いつつフォルスの淹れてくれたお茶を飲みながら、貸してくれた脂を塗ってるんだがどれほど塗るか分からないから取り敢えず塗りたくっていると、漸く気が付いたハヤトが


「ふむ、どう言う状況でしょうか?フォルスたんも居ますし……はて?ところでクロさんは何を?前のスニーカーは?」


 状況が分かって無いにもかかわらずフォルスの心配とは流石はハヤト。しかしまた変な単語が出て来たな。

 ハヤトだしと納得しつつ、脂でギトギトになった片方の靴を見せると、チラリとこっちを見たフォルスがハヤトに声を掛けつつ俺の方を見て言葉を失っている。

 ん?何か違うのか?疑問に思う俺にディアナの呆れ果てた声が聞こえて来た。


「塗り過ぎよ……そこの袋に布切れが入ってるから拭き取りなさい。本当に馬鹿なんだから……」


 やれやれ、初めての作業に失敗は付き物さ。

 言われた通り、先程までカール君の背中に縛り付けてあった皮袋を漁っていると、部屋の扉がノックされた。

 フォルスがいそいそと扉を開けると、宿の娘さんが料理を持って来てくれたらしい。

 夜ご飯には少し早い気がしつつも、良い匂いを漂わせる焼いた肉と温かいスープ、カゴに盛られたパンを見るとハヤトが一目散に飛び付いている。


 丸テーブルにディアナとフォルスも座り俺を呼ぶので簡単に靴を拭くとそそくさと履きテーブルに付いた。

 三人共それなりにお腹が空いていた様だし俺もお腹は空かないが一応食べておこう。


「ところで、この部屋で寝る時どう分けるの?」


 スープを飲みながら言ったディアナの言葉を最後まで聞く前にハヤトが突然寝てしまった。

 ん?何だ……俺も……ね……む……

 突然のあるはずの無い睡魔に襲われながら、ハヤトに続きいきなり寝出したディアナとフォルスを見つつ思う。

 おかしく……ないか……



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