40話
この町は見る所があり過ぎて田舎者の私には刺激が強いです。
先程から傭兵さん達に着いて行ってるのですが興味深い物が多過ぎて……
あっ、この小物ディアナさんが好きそうですね。
露天の様な店先で思わず屈んで手に取りじっくりと見て、ディアナに薦めようと立ち上がった時にはもう傭兵さんの光る頭も見えませんでした。
「ありゃ、やってしまいましたか……」
取り敢えず、店先の店主に会釈をして進んでいた方向に歩き出したのですが、ここは人間の街で皆さん視線が高く、頭二つ分程小さいあたしを気にも止めずどんどん歩いて行くので、逆らえないあたしは気が付けば路地裏の武器屋さんが並ぶ通りに来ていました。
鉄を叩く甲高い音に懐かしさを覚えつつ、店を覗きながら歩いていたのですがこの町にはあまり腕の良い職人さんが居ないのか、質が良くない割には高い剣やら槍やらが積み上げられた店ばかりですね。
やっぱりドワーフの村とは違うんですね。
少しばかり落胆しつつ人間の街だから仕方がないか、一通り見て納得したあたしは元の道に戻る為にどこか路地に入ろうかと覗いていたのですが、特に細く暗い路地の奥から鉄を叩く音が響いて来るのが気になりついつい入ってしまいました。
「ふわぁああ」
その暗く細い路地にある武器屋さんには、ドワーフの村でも中々見る事が出来ない様な繊細な細工が施された質のいい鉄を打って作った剣や、武骨な何の飾り気も無いのに威圧感を放つ堂々とした剣が何本か飾られている小さな武器屋さんでした。
何て見事なんだろう……人間にも腕のいい職人さんはいるんですね。
ついつい時間を忘れ、あまりにも見事な剣達に見とれていると物腰の柔らかな声が奥から聞こえて来ました。
「お嬢ちゃん迷子かい?ここは荒くれ者が多いから危ないよ。」
声のした方に顔を向けると、とても鉄を打つとは思えない色の白いひょろりとした細い背の高い男の人が立っていました。
男の人はあたしをまじまじと見て顎を掻くと
「なんて事だ、小さな女の子が武器屋横丁にいるなんて、全く……あぁごめんよ、通りまで案内してあげるから一緒にお父さんかお母さんを探そうか。」
そう言いズボンのポケットから飴を一つ出して渡してくれました。が、
「お兄さん!あたしは大人です!お酒も呑める歳ですから子供扱いは止めて頂けますか?」
そうキッパリと言い切ったあたしを見て、何だか物凄く不満そうな顔をしてるお兄さんに
「あたしが小さいのはドワーフだからです!」
あたしがそう言い放つと少しばかり放心したお兄さんはあたしの手を引っ張り、慌てて店の中に連れ込まれました。
お兄さんは奥の部屋にある椅子に、あたしを座らせると慌ただしく出て行ってしまいました。
「……何なんでしょうか?……」
状況が見えないまま少しばかり待ったでしょうか、先程のお兄さんの声と荒っぽい大きなダミ声が近付いて来ました。
ここで漸く、自分の置かれている立場に気付いたあたしは何とかして逃げ道は無いかと部屋の中を見渡したのですが、この部屋には窓すら無く出入口は一つのみ……愛用の斧はカール君の背中です。
素手で何とかしなくては、と腹を括った辺りで髭でモジャモジャの男の人が入って来ました。革のエプロンを着て手には大きな金槌を持って立っています。
あぁ……こんな怖そうな髭には勝てない、と思いかけた時にふと気付きました。
「あれ?おじさん、ドワーフ?」
「おぉ、ドワーフだわい。純血では無いから少々デカいがな。嬢ちゃんも混血みたいだな。」
あたしが気付き声を上げると、おじさんも気付いた様で髭モジャの顔で人当たりの良い笑みを浮かべてくれた。
「しかし助手からドワーフに見えない女の子が、『ドワーフだ』って叫んでるとか言うから何事かと思ったが、なるほどのう。嬢ちゃんはドワーフにしては華奢だから人間には分からんかもな。で、こんな街で何してるんだ?街中でドワーフだ!何て言ってたらすぐに拐われるぞ」
どうやらあの細長い人もおじさんも心配してくれてたみたいですね。
勘違いしてごめんなさい。
「あたしは仲間達と王都に向かってて今日この街に来たんですよ。でちょっと逸れてしまって……」
あっ助手の細長い人がお茶を入れて来てくれました。
おじさんは大きな音を立てお茶を飲むと、少しばかり真剣な顔をして
「そうか……大丈夫なのか?旅の仲間は何者なんだ?騙されては無いのか?」
すごく心配そうに聞いて来ます、助手の細長い人も何だか頷きながら見てきます……
そんなに子供に見えますかね?
「大丈夫ですよ。魔女のディアナさんと不死者のクロさん、それにカーリーホーンのカール君と変な人間で動けるぽっちゃりさんのハヤトさんが仲間ですよ。」
胸を張って言うあたしの言葉を聞き顔を見合わせると、変な組み合わせだとガハハと大きい声で笑い出した。
おじさんが楽しそうに笑っているので吊られて笑い楽しい時間を過ごしていると、
「フゥォォォルスたぁぁぁぁんん!!!」
叫びながら、変な人間で動けるぽっちゃりさんのハヤトさんが飛び込んできました。




