39話
村でディアナ達が出発したと聞いて急いで走っていた俺だが、突然地面が大きく口を開き無数にも思える程の牙が生えた丸い穴に落ちてしまった。
取り敢えず降り立ちはしたものの、何だか臭いし肌が焼ける様な溶ける様なプテルスの時にも感じた不快感を感じつつ、死ぬ事の無い俺は出口を探して歩き回っていたのだが、何だか凄く揺れるし臭いし、矢が刺さるし臭いしで意を決して、ブヨブヨとした内壁を切り付けて見ると意外と柔らかいらしく、何回か切り付けると無事外に出る事が出来た。
よし本気で追い掛けるか、と外を見るとしかめっ面したディアナがハゲ頭の怖そうなオッサンとこっちを見てる……
「……時間を間違えた。……ごめん……」
見た感じ物凄く怒っている様子なので取り敢えず小さく謝り手を振ってにこやかに近寄って行ったのだが、物凄い勢いで走って来たディアナに激しく殴り飛ばされてしまった。
「っあんたはっ!馬鹿じゃないの!!」
物凄く怒ってるっしゃるし、フォルスやハヤト、それにオッサン達も呆れた様子で俺達を伺っている。
何とかして機嫌を取らねばと考えていると、商隊の代表のセントが歩いて来た。
「ははは。君面白いねぇ、取り敢えず街にも着いたし君達も揃ったし良かった良かった。」
相変わらず軽い男だけど今は助かった。
軽く礼を言い大人しく一団に着いて行くと、見えてきた入口に掛かっている看板に俺達は視線を奪われる。
『人間種最北の街 ヘドナ』
じっと見ている俺達を見てセントは
「亜人居留地から出るのは初めてかい?まぁ冒険者の多いだけの普通の街だよ」
「亜人居留地ねぇ」
ふぅんと俺は小さく呟いて、ディアナの後ろをしずしずと付き町に入った。
フォルスとハヤトが俺の両肩を叩きながら自分の鼻を摘まみ笑っている。
いつの間にこんなに仲良くなったんだか……
街の門は商隊のお陰か衛兵に止められる様な事も無く無事通る事が出来、それなりに大きいこの街で一番大きいであろう建物の前に止まる。
セントは足早に降りて行き、残された商隊の面々が荷物を下ろしながら話し掛けて来た。
「なぁ小僧、お前尋常じゃなく臭いぞ。取り敢えず今日はこの町に泊まるから宿見付けて風呂に入って来いよ。」
どうやら商隊と同じ宿って訳には行かないらしく、宿探しをしなくてはいけないらしい。
「何でもセントさん達は商人用の宿に泊まるらしいわよ。組合員専用の宿らしくて私達は駄目らしいわ。」
ディアナは事情を分かっているらしくそんな事を言って来るんだが、このなりで果たして宿を見付けられるのだろうか?
さっきから街の人達の視線が痛いんだよな……
「白い嬢ちゃんの言う通り商人様とオレ達は違うんだ、その格好で探すのも大変だろうからオレ達が使ってる宿を紹介してやるから我慢しな。」
このオッサン、探せと言ったり紹介すると言ったり結構適当だな。
まぁ紹介してくれるなら助かるので一声掛けて喜んで着いて行く事にしよう。
それなりに小綺麗なこの街は煉瓦作りの建物が密集してならんでおり、よくよく見ていないと同じ様な建物ばかりで、しかも祭りでもしているのか人が物凄く多い。気を抜くと迷子になりそうで、オッサンの後ろを歩くディアナを見てから後ろを振り返るとハヤトがカール君の手綱を引っ張りながら付いて来ている。
フォルスは?とハヤトの後ろを覗くも見当たらず周囲に目を向けてみたが見当たらない。
「なぁハヤト、フォルスはどこにいるんだ?」
「フォルスたんなら僕の後ろに……」
俺の問いかけに答えながらハヤトは振り返り固まってしまった。
ん?ひょっとして珍しくフォルスを見て無かったのか?
やれやれ、また迷子かとディアナに声を掛けようとしたのだがハヤトの悲鳴に掻き消されてしまう。
「ちょっと何事!!」
ディアナが振り返り怒鳴るも、どこから声が出てるのか分からない様な甲高い大声で叫ぶとハヤトは飛び出して行った……
残された俺に、ディアナとオッサンやカール君の他に街の人達の視線が集まる
「いや……フォルスが迷子みたいで……ハヤトがさぁ……」
流石にこの状況を上手く説明出来ずモゴモゴと呟くと、眉間を押さえたディアナよりもオッサンが呆れた様に食い付いて来た。
「はぁ……あんな小さい子なんだ、何で手を繋いでないんだよ……まぁ赤髪は人目を惹くからすぐ見つかるだろ。」
呆れ果て疲れた顔をしてるオッサンだが、間違ってるぞ。
「おじ様、フォルスは成人してるらしいですわ。なんでもドワーフ?土の民らしくて……」
相変わらずのディアナのよそ行き言葉をオッサンが青い顔をして止める。
ディアナは眼前に大きな手をいきなり出され少しムッとした顔をしているが、オッサンは気にせず真剣な表情をすると
「まずいな……この国はな、人間の奴隷は固く禁止されてるが、亜人は別なんだ。亜人は拐おうが殺そうが一切の法に引っ掛かる事が無いんだ。あの小ささだ、皮袋か何かに詰めて拐われたら見つけるのは不可能だぞ。救いとしては見た目が良いからな、いきなり殺される事は無いと思う……」
オッサンの言葉を最後まで聞く事もせず、俺とディアナはカール君の手綱を渡し雑踏に飛び込んだ。




