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38話

 鋭い眼差しで俺を観察するかの様に見ている少女だが、ふっと視線を緩め、


「お兄さんのその戦い方では、死なない練習は難しいですね。わたし死んじゃいますよ。」


 さっきまでの殺気は何だったのかと言いたくなる位にチカラを抜いた少女は、刀を戻し切り株に座り直すと俺を手招きする。

 さっきの件が有るし少しばかり警戒しつつ近付いた俺を隣に座らせると


「わたし結構お兄さんの事、気に入っちゃいました。お兄さん二の太刀以降も覚えたく無いですかー。どうですー。」


 隣の少女は俺の腕に絡み付きグイグイとくっつきながらそんな事を言う。


「二の太刀要らずは格好いいんですけど、魔物相手とかだと厳しくないですかー?」


 困った……とりあえず離してくれないと冷静に話が出来ない。


「あの……ごめん取り敢えず離れて貰えるかな?当たってるし落ち着かない……」


 俺の精一杯の意思表示にニヤニヤとした少女は


「当ててるんです。」


 と、したり顔で胸を張る。

 うん、ディアナより……駄目だ駄目だ。

 切り株から立ち上がり少女を引き離した俺は、自分の頬を二三度叩き意識を切り替えると、少女に頭を下げる。


「諸用があって時間があと三日しか無いですが、よろしくお願いいたします。」


 少し驚いたのか少しまばたきをした後、にっこりと笑うと


「ちょうどわたしもそれ位に行かなくちゃ行けないので丁度いいですね。それじゃあ……あっわたしはシズネです。よろしくー。」


 人当たりのいい笑顔を浮かべたこの少女が俺の師匠になるのか……




 ーーーーー


 帰って来ない……あの馬鹿どこほっつき歩いてんのかしら、魔力だけはきっちりと使いつつ、もう出発の朝なんですけど……


 フォルスにハヤト、それにカール君なんかはもう荷馬車に乗り込んでるのに、あの馬鹿だけが居ない。


 落雷様は『大丈夫だの』何て言ってたけど……あっセントさんが呼んでる……

 手招きをしているセントさんの所に行くと大袈裟なほど困った顔をして


「ディアナさんもう出発したいのですが灰色の人はまだですかね?時間が無いんで行ってもいいですかー。」


 商隊の人達もこっちを見てるし、これ以上迷惑掛ける訳にもいかないわよね。


「お願いします。あの馬鹿は走って来ると思うんで気にしないで下さい。」


 私の言葉を待ってましたとばかりに荷馬車はゆっくりと動き出した。フォルスは荷馬車の窓から村の方をさっきから何度も見ているし、ハヤトはそのフォルスを何度も見ている。

 あぁ頭が痛くなって来た……

 本当にあの馬鹿は首輪がいるわね。


 順調に進む荷馬車は、思いの外走るのが速い様で昼を目前にした頃そこそこの大きさの街が見えて来た。

 結局あの馬鹿は追いつく事もなく……なんて事をフォルスと話していると、後ろの荷馬車が騒ぎ出した。


「セントの旦那たいへんですぜ!後ろから何かが来てますぜ!!」


 最後尾の荷馬車に居た片目の男の人が遥か後方の砂煙を指差している。


「こんな街道で魔物が出るなんてっ!傭兵の皆さんお願いしますっ馬車は早く町へ!!」


 セントさんが声を張り上げてる間にもどんどん砂煙は近付いて来る。

 傭兵達と私達が荷馬車から降り武器を構える頃には薄っすらと砂煙の中心が見えて来た。


「何?あれ?」


 姿を見た私は思わず声に出してしまったらしい。


「白い嬢ちゃんあれはワームだな。しかしとんでもない大物だがな。」


 頭を光らせた大男、傭兵のリーダーは呆れた様に言う。

 確かに私の記憶にあるワーム種は精々成人男性ぐらいの大きさだがあれは


「ふむ、10メートルは軽くありそうですね。」


 呑気な感じで呟くハヤトは矢をつがえると素早く何本か打ち出した。

 ハヤトの打ち出した矢はワームの先端をぐるっと切り裂いた様な牙が並んだ口に飛び込んで行き、私達の耳では認識出来ない様な高い音を撒き散らし体をくねらせ始めた。

 暴れ狂うワームに目掛け、トキヨミ様の枝に魔力を纏わせた私は詠唱を経て風の精霊に切り裂く風をお願いする。

 精霊の起こした風は体をくねらせるワームの体表を切り裂いて行く。

 その暴れ狂うワームのすぐ下に走り込んだフォルスが斧を振り上げワームの直径の半分ぐらいまで切り裂いた。


「白い嬢ちゃんよ、オレ達の仕事も残して置いてくれよな」


 と、傭兵のリーダーがガハハと声を上げたその時、突然ワームの中から外に向かい血が吹き飛びその場で数回痙攣した後ワームが崩れ落ちた。


 目の前の光景に私達が顔を見合わせていると、ワームの中頃がビクンビクンと蠢き出し慌てて武器を構える私達を他所に、蠢いている場所から白銀の刃が飛び出し数度切り裂くと見覚えのある灰色の頭が現れた。

 血と体液と思われる物で濡れたあの馬鹿は私達を見付けると


「ごめん、時間を間違えた。」


 それだけ言うとワームから飛び降り手を振ってきた。


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