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37話

 取り敢えずディアナが出て行き一息付き、そのまま何の気なしに窓から外を見ると数人の森人と一緒に弓を持ったハヤトが森の方に消えて行く。

 太陽は真上で狩りに出るには遅すぎる気がするが……


「こんな時間に狩りか?いや多分特訓だろうな……よしっ!」


 ハヤトのヤル気に刺激された訳では無いが、俺も体を動かそうと剣を背負い外に出る事にした。

 村から出てハヤト達が向かった方向とは反対、この一週間で畑に変わった開墾地を超え、あてもなく進んでいると、ふと視線の先の大木に囲まれた切り株に一人の少女が座っていた。

 漆黒の長髪を真っ直ぐ伸ばした少女は見た事の無い服を着て腰に剣だろうか?やたら細く折れそうな剣を二本下げている。


「こんばんは。こんな所で何してるんですか?」


 とりあえず警戒されるのもあれだが、黒髪だし王都がらみなら面倒は避けたい俺は無難な感じで挨拶をして様子を見る。


「あっどうも、こんばんはです。わたしはちょっと迷子でして?で、大きな剣のお兄さんは何してるんです?」


 おおっ意外と普通な感じだ。ハヤトやコウイチの例があるからてっきり……


「あぁ、俺は近くの森人の村に遊びに来てて、散歩と言うか剣を振る場所を探してると言うか。」


 背中の剣を親指で指して体を捻り見せる。

 一瞬目が光った気がするが何だったんだろうか……


「あー亜人の村があるんですねー。珍しい髪色ですけどお兄さんは人間ですよね?本当に色んな髪色がいてファンタジー感満載ですね。ははは」


 何がそんなに楽しいのかちょっとばかりケラケラと笑い、少女は切り株から立ち上がると膝の屈伸を始めた。


「珍しいかな?結構気に入ってるんだけどね。所で君のその細いの剣なの?」

「これは刀って言う片刃の剣ですね。お兄さんのバスターソードってやつですか?折角ですし、ちょっと練習がてらと言うか挨拶代わりに模擬戦的な事しませんかー?」


 あぁどうやら俺は何かの琴線に触れてしまった様だ。

 黒髪の人達は何でこうもヤル気に満ちているんだろうか……

 この少女、白と紺色の服で胸元にはリボン、下は何だか矢鱈と縦に折り返しのあるスカート、こんな格好で動けるのか?


「いいけど、見た目に合わず好戦的なんだね。」


 楽しそうに笑ってはいるが、何だろう?何かおかしい気がする。


「ははは。あのキンキンッって音が好きなんですよね。じゃあとりあえず殺しは無しで行きましょうかー。」


 少女がそう明るく言いながら俺と似た様な構えをした瞬間に空気が一変する。

 それはまるであの時の、左腕の賢者の様な……肌が粟立つ

 ちょっとばかり余所事を考えていた俺に少女はいきなり斬りかかって来た。

 決して見えない速度では無いがブレの無い綺麗な剣撃は俺の腹を一閃し、辛うじてかわした肌に赤い線を引く。


 決して気を抜いてたつもりは無いが、この子はヤバイ……初動無く来る。

 左腕の賢者の時は初動、斬りかかるための動きはあったがこの子にはそれが無い。

 動かない俺を、馬鹿みたいな殺気を放ちつつニコニコと笑みを浮かべ見ている、体で感じる殺気と目に映る微笑みを浮かべる少女の姿が頭の中で一致しない。

 何だこれは……気持ち悪い……


「お兄さんまだわたしのターンで良いんですかっ!」


 楽しそうに話しながら、またしても俺の腹を薙ぎに来た刀を辛うじて剣の腹で受けたのだが、少女は刀と剣が当たった瞬間、小さく金属音が聞こえた時には俺に背を向けており、その勢いのまま反対側から斬りつけて来た。


 集中し色を置き去りにした景色の中、少し距離を開けなければと背後に飛ぶ俺に、まるで縫い付けられているかの様に距離を開ける事なく付いてくる少女は色の無い世界の中で俺の肩から臍にかけて赤い線を引いた。


「がっはっっ……」


 どう言う事だ?俺は光より速いんじゃ無いのか?

 体に付いた傷よりも、少女が俺の動きに付いて来れた事が気になって仕方がない。


「お兄さんダメですよー、動きが単調すぎて見えみえですよ。速さは素晴らしいですけどそれではダメですねー。はいっ次はお兄さんのターンです、来て下さいね。」


 動きが見えるのか?それとも予測してるのか?

 どっちにしても俺に勝てる要素なんか全く見当たらない……けど、これは殺し合いでは無く練習、模擬戦だ。

 ディアナ達を守る為にチカラを付けるには絶好の機会かも知れない。

 言い訳がましくディアナ達の事を出し、震える自分に言い聞かせる、これは修行だ練習だと。


 俺に出来るのは上段に構え撃ち込む事のみ。

 この少女なら躱せる筈だと信じ、大きく上段に構え息を吸うと、全力で駆け寄った俺は吐く息と同時に剣を頭上から叩きつけた。


 色の無い世界の俺の目にも映らない速度の剣は、少女の頭上から股下まで一気に切り裂き大地に刀身程の亀裂を走らせる。

 ……が、少女は立っていた。


 先程までの和かな笑みは消え、まるで猫科の動物を思わせる鋭い笑みを浮かべ大地の亀裂から半身ずらした形で立っている。


「……二の太刀要らず、示現流でしたっけ?この世界にもあるんですか?お兄さん何者です?」




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