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36話

「遂に来たわね。クロ、ちゃんと交渉するのよ!たまには下僕らしく頑張りなさい。」


 あれから一週間、ハヤトの言った通り商隊が大きな荷馬車を引き森人の村に来た様だ。

 あいつはどれだけ森人の予定を知ってるんだか……


 しかし、この一週間色々あったなぁ……

 今のトキヨミ様の姿を見て泣き崩れたディアナを慰めたり、何だかやたらと自信満々になってるフォルスに延々と話を聞かされたり、ハヤトが森人達からずっと狩人として残ってくれと泣き付かれたり……

 ん?俺?俺はひたすら鍬を振ってましたよ。

 段々とペースが上がって一年計画の開墾地を全て畑に変えたのはここだけの話です。

 つまり特訓は残念ながら何一つ出来てないけど、何故か一回りほど体が逞しくなった気がする。


 ところで、今日は森人達も仕事どころでは無いらしく、荷馬車が見えた途端にそれまでソワソワと落ち着きの無かった子供達は歓声を上げて村の入口まで走って行き、母親達は子供を捕まえるのに走り回り、男達は荷馬車の荷降ろしを手伝っている。


 俺達はと言うと、商隊の代表と長が話してる所にちゃっかりと混ざっている感じだ。

 交渉は下僕じゃなく主の仕事では無いのだろうか?何て事をボンヤリと考えてる間にも、長は代表と軽く話し、後で待ち構える俺達の話をして交渉までしてくれた。


「はじめまして。今、長から紹介のあった俺がクロで、この白いのがディアナ、赤いのがフォルス、メガネがハヤトです。今回はよろしくお願いいたします。」


 軽く三人も含めて自己紹介をして頭を下げる。


「あーはじめましてだね。この商隊の代表をしてるセントです、どーも。」


 何だか軽い感じの代表ことセントはにこやかに右手を出して来たので握手をしたのだが、思いがけず強いチカラに目を開くと、まるで悪戯が成功した子供の様な顔をして片目を閉じて見せた。


「しかし、この時期に王都に観光とは間が悪い、結構運悪いでしょぅ?」


 ハヤトが居るのに運が悪いとはどう言うことだろう?

 全く意味が分からなく、顔を見回す俺達を他所にセントは続ける。


「都の人達が言うには何か戦争でも起こるんじゃないか?って話らしい、勇者や賢者達の他にも騎士団が集まってるらしいですよ。まぁ王都が落ちる事は無いから戦争見学も良いかもしれないですね。なーに民間人には祭りと変わりませんよ。取り敢えず三日滞在するんで予定が変わったら教えて下さいな。」


 ……俺の顔が青くなったのに気付いたのかセントは気軽に言うと、片手を挙げてから荷馬車に行ってしまった。

 ディアナやフォルスの顔を見てみると同じ様に青い顔をして固まっている。


「ふむ、その戦力の対象はひょっとして僕達なんでしょうか?」


 ……分かっていたが口には出さないで貰いたい……

 軽くハヤトを睨み付け、固まってしまっているディアナの手を引き、暗くなってしまった俺達は部屋に戻る事しか出来なかった。


 俺の部屋に四人で集まると重苦しい空気がこの場を支配している。


「けど、別に俺達相手に戦力を集めてるって事は無いんじゃないかな?ほら、何か丁度いいタイミングで他の国と戦争とか……」


 うん、言ってて無理があるな……


「本当にそれならいいんですけど……王都の戦力を集められるとどう足掻いても忍び込む事すら不可能ですよ?どうしますかディアナさん?」


 ハヤトが凄く冷静に聞いてくる、ディアナは青い顔をしたままこめかみを抑え考えている様で眉間に深いシワが入っている。


「……ちょっと考えさせて……商隊が出発するまであと三日、それまでには答えを出すから待ってくれない?」


 絞った様にディアナがそう吐き出し、まだ午前中だと言うのに今日の話し合いはお開きとなってしまった。

 すぐに部屋を出て行った冷たいハヤトとは違い、フォルスは二、三ディアナに耳打ちをしてからチラチラ俺を見つつ出て行ってしまった。


 ……所でだ、ここは俺に充てがわれた部屋でいつまでもディアナに居て貰っても正直な所困るんだが……


「なぁディアナ……」

「……ねぇ……どうしたら良い?トキヨミ様との約束を守りたいの、けど……あのコウイチって奴や目の賢者と戦わなければならない、ってなった時に私にはみんなを守れる自信が無いの……」


 ……どうしようか……温度差があるぞ……


「あのさ、俺達には強運の勇者が居るんだからきっと上手く行く筈……いや上手く行くよ。それに守りなら俺が体を張ってみんなを守るから、大丈夫だって。」


 この重い空気が嫌で何とか気楽になって欲しくて言っては見たが……俺、言葉選びのセンス無いなぁ……ディアナがジトッとした目で俺を睨みつけてる様な気がする。


「あんたねぇ……あんたが守って怪我したら私の魔力を使うのよ、怪我がしないようにしてよね。」


 重い空気のままだが、少しばかり笑うと立ち上がったディアナは小さくありがとうと言い、俺の髪の毛をくしゃくしゃに仕立て上げて部屋を後にした。


 うん、結果は良しだが、皆を守りつつ怪我をしないとか……無茶だよなぁ……




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