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30話

「ディアナ、枝なんか拾ってどうしたの?」


 腕組みをしたディアナが何故か木の枝を持っていて、それが変に似合っているのが妙に面白い。


「クロ……あんた本当に馬鹿ね、この枝から出てる強い魔力を感じないの?はぁ……まあいいわ、私も今日は寝るから話しは明日にしましょ。」


 何やら呆れ顔のディアナは態とらしく大袈裟に溜息を吐き帰ってしまった。

 さてどうするかなと、何の気なしにトキヨミ様に目をやると何やら木が蠢いている気がするが、暗いし気の所為にして、ディアナの後を追い掛けようとした所で真上から呼び止められてしまった。


「不死者よ…そこの不死者よ……この古木の相手を……してはくれんかの?」


 横、いや真上を見ると幹の途中から焼け折れた枯れ木の様なエント様が俺を見ていた。

 今日出会ったエント様では一番の古木だな。


「昔に……聞いた事が……あるが、不死者は皆……眠らないのだろう?……この古木の話し相手をしてはくれんか?」


 確かにあまり睡眠欲が無い俺は、帰っても時間を持て余すだけなので頷き、大きく張り出した根に腰掛ける。


「おぬしが……トキヨミ様より恩恵を受けた不死者だろう?若木達が騒いでおったぞ。」


 そう言い古木は実に楽しそうに笑った。

 木の表情を分かる日が来るなんて思わなかったが、エント様達を見て凄く表情豊かだと思う。


「儂等エントと腰を据えてゆっくり話が出来るのは不死者だけだからのう。儂がまだ歩けた頃はよくトキヨミ様と話したものよ。」


 そういうものなのか?……まあエント様はのんびりと話すからだろうな。


「トキヨミ様はの、儂が芽生えた時にはもうそこに居ての、今の様な幼い様子でよく話し掛けてもらったの」


 古木が多分だけども遠い目をしてる様な気がする。

 しかしだ、あの妙齢の女性を幼いとはエント様からするといつまで子供扱いされるんだろうか。


「幼い?人間の感覚ではトキヨミ様は十分大人の姿をしていると思いますよ。」


 古木は顎髭の様に伸びた苔を撫で付けると、小さく息を吐き


「まだ知らぬか、今しがた魔女に恩恵として魔力を込めた枝木を授けたのだ。あれはいい魔法の媒体になるだろう。しかしの、その代償で昔の姿に戻り眠りに付かれてしまっての、儂が生きてる間には目を覚まさんよ。トキヨミ様は魔力を最低限だけ残し魔女に与えた様じゃ、今度の魔女こそは約束を果たしてくれるといいのだが。もう一度トキヨミ様と話したかったの……」


 それだけ言うと納得したのか、それとも寝てしまったのか古木は目を閉じ動かなくなってしまった。

 古木の、エント様特有の間延びした話に付き合っていると、知らぬ間に空が白み始め鳥達も活動をし出した様だな。


 根の上から腰を上げ村に戻ろうとした俺だが、何だか朝からエント様達が騒がしい、森の外れの方に居たであろうエント様達が、皆トキヨミ様の居る方に向かっている。

 興味本位で流される様にトキヨミ様の元に向かうと、昨日までトキヨミ様が居た場所に蔦に巻かれ若木から生えた幼い女の子がいた。


 ……古木が言っていたのはこう言う事だったのか……


 妙齢の女性だったトキヨミ様が、今では5歳ぐらいだろうか?小さな小さな女の子の姿になり、腰から下は木、脇から下は蔦と言う姿で蹲っていた。


 言葉を出すことも無く、ただジッと見ている俺の横では、まだまだ瑞々しい青年程のエント様達が怒鳴り声を上げ嘆いている。


「魔女どもは何故トキヨミ様の魔力を奪う、奪っていくのじゃ!」


 さらにトキヨミ様に近い所にいる大きなエント様が涙を流し言う


「ワシが若木の頃の時でも、もう少し大きいお姿だったのに」


 何と言うべきかと悩んでいると、力強い太ったエント様が俺を掴むとそのまま持ち上げる。


「お前の主人がワシらの聖域を犯した、貴様はここで肥やしになれ!トキヨミ様の恩恵を受けた貴様ならいい肥やしになろうぞ。」


 頭に血の上った太ったエント様は、どうやら俺が死ねない事を知らないらしいな。ここで抵抗するのもどうかと思う所もあるけれど、けれどディアナは奪った訳ではなくトキヨミ様から貰ったと古木が言っていたし……

 こういう場合どう言うのが一番なのかと考えを巡らしていると、突然体がブレ俺は地面に叩き付けられた。


 肺に溜まった空気が俺の口から強制的に出て行く。

 頭が割れたのか目の前が真っ赤に染まり、首から下にもイマイチ意思が伝わらないが、死ねない俺の体は当たり前のように動く訳で、折れている足に無理をさせつつ立ち上がって見せた。

 赤に染まる視界で周りは見えないが若いエント様達の騒めきが聞こえる。


「ディアナはトキヨミ様から恩恵を貰ったんだ、決して奪ったりはしていない。何らかの事情がある筈だから信じて欲しい。」


 出来るだけ全てのエント様に聞こえる様に声を張り上げた俺の体を誰かが優しく支えてくれた。


「全く……急いで来てみれば、あんたはまた死に掛けてるのね。」


 どうやらご主人様が来たらしい。

 全く、来るなら痛い思いをする前に来て欲しいものだ……



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