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29話

「お主の聞かされてる話は救いが無かろう?じゃがな、あの王族が童話として世に出している話はの、今で言う賢者の森で生まれた魔女が、王国を滅ぼそうとして王都の賢者達がチカラを合わせ四肢をもぎ封印した、めでたしめでたし……ってな具合の話なのじゃ。自分たちの悪行を隠す為か何なのかは知らんがの。」


 まるで今にも泣き出しそうな顔で笑うトキヨミ様が、まるで小さな女の子の様に見える。


「話が逸れたの、森に打ち捨てられた賢者と呼ばれた娘の成れの果てじゃがな、顔を潰され目を抜かれ、四肢を捥がれた上に記憶まで奪われておる。普通に考えれば後は自然に帰るだけだったんじゃが……娘は運が良かったんだの、偶々通りがかったエントが拾ったのじゃ。」


 私はそこでふと気付き、トキヨミ様を改めて見た。

 下半身が木の幹に埋もれた様な、もしくは上半身が幹から伸びた様な……


「エント達は魔力の高い物が好きでの。やたらと魔力の高い肉の塊を拾ったエントはその肉の塊が人であることに気付いての、自分の若木を分け与え生きる術を与えたのじゃ」


 あぁそうか……きっとあの童話の賢者はトキヨミ様なのね……


「それからどれ程かの年月が過ぎ、一人の人間がそのエント擬きの所に来て、チカラが欲しいと泣き付いての。哀れんだエント擬きは自分の四肢を取り戻すのを条件にその人間に血と魔力を与えた、それが魔女の始まりじゃ。」


 あの時トキヨミ様は言ったわ、契約を守る素振りも見せず厚顔無恥にそのチカラを使う……


「そして魔女は一人長い時間を生きねばならぬ、で寂しかろうと眷族を作る術を教えたのじゃ。眷族はの、若返りの魔法と王族が勘違いしておった不死の呪いが掛かっておる、何時までも魔女の側に居られる様にと」


 トキヨミ様はそこまで言い終わると空を見上げ目を閉じた……


「体をここまで戻すのに妾はどれほどの時間を掛けたかもはや覚えても居らぬ、時間に任せれば腰より下もいずれ戻ろうぞ、だがの魔力と奪われた魔法達は戻らぬ。妾に残されておるのは決して死ねぬ此の体と僅かばかりの魔力のみよ」


 目を閉じたまま笑うトキヨミ様に、私は何と言えばいいの……

 何故、魔女は契約を守ろうとしないの……

 私は悔しくて、何も知らなかった自分が恥ずかしくてただ歯を食い縛り黙るしか出来ない。


「お主……王都には何をしに行くんじゃ?」


 優しく問い掛けてくるトキヨミ様を見ようとしたけど、何だろう目の前がボヤける……


「大婆様が、奪われた宝を取り返してくれと……見れば分かるって言ってたけど、意味が分からなかった……けど……今の話と、あの時の目の賢者に感じた違和感……あれこそが大婆様の言う宝、トキヨミ様の目なんですね。クロも左腕の賢者に……」


「お主、何故泣いておるのじゃ?」


 突然遮って来たトキヨミ様の言葉で、私は自分が泣いている事に気付かされた。

 自分の頬に触れ、溢れる涙を荒々しく拭くと私は訳も分からず胸を張り


「トキヨミ様!今までの魔女の事は忘れて、ほんの少しだけ時間を下さい!私とクロ、それと仲間達で必ずトキヨミ様の体をここに持って来ます!!信じられなくても良いから少しだけ待ってて!!」


 私は、色々な感情がごちゃ混ぜになって勢い任せに啖呵を切ってしまった。

 とにかくやる事が山の様にあるわ。早速とばかりに、元来た道に向かい歩き出した私の手元に一本の枝が飛び込んで来た。

 青々とした葉が一枚だけ付いた短く細い枝、振り返り見た私に


「お主がくれた約束の代わりじゃ、持って行くがいい、それなりにいい媒体になるであろう。妾はもう寝るから、そこの影にいるクロを連れて行っておくれ。また会おうぞディアナよ」


 私は大きく頭を下げ()()()()()をした。



 ーーーーー


 ロマさんから解放された俺は、今聞いた話をディアナに伝えたくて部屋を飛び出しディアナの部屋に向かったのだがどうやら外出中らしくいる気配がない。

 ならばと、答え合わせでは無いが、詳細をすり合わせたくてトキヨミ様の所に向かったのだが、何やら話し声が聞こえる。


「先客が居たか……」


 聞こえる所にいるのも失礼な気がして、戻ろうかと考えているとディアナの大声が聞こえて来た。

 いつもの透き通る様な声と違い何だか鼻が詰まっている様な……泣いてるのか?


 泣いているならさっきの事もあるし待つべきか……いや、混ざりに行くべきか、グダグダと答えの出ない事を考えていると突然頭を叩かれた。


「あんた、こんな所で何やってんのよ……トキヨミ様は今から寝るらしいから行くわよ!」


 いつもより元気の無い赤い目をしたディアナが、カラ元気を振りまき腕組みをして立っていた。

 その手には何やら大事そうに一本の小さな枝を持っている。



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