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28話

 コウイチの事を話す時のハヤトは冷たく感じたが、すぐにいつものハヤトに戻りフォルスをニコニコと見ている……

 気のせいだったと思いたいがディアナもフォルスも不思議そうな顔をして見合せている。

 俺達は少しばかり話をした後、じっと見ているトキヨミ様の元に向かった。


 トキヨミ様は俺達を一通り見渡し、ハヤトに顔を向けると


「あれが勇者かえ?随分と無理矢理魔力を行使しておるが、神もまた無茶な事をしたものよの。して人間よお主も勇者だったの。お主は運だけで生きている様じゃが、王家の手の者を敵に回した以上戦う術を持たねば乗り越えれぬ、森人に聞くが良い。お主の運なら弓等向いておろう。」


 ハヤトは頷きナダちゃんにチラリと視線を送っている。


「土の民よ、お主は優しすぎるの、今のままでは何も守れぬ、恐れていては何も出来ぬ、覚悟を決めるが良い。お主のチカラを使う時は今じゃ。」


 フォルスは話を聞きじっと目を瞑り何やら考えている。


「魔女よ、半人前のお主には酷かも知れんが詠唱に時間がかかり過ぎよのう、何かしらの媒体を使う他無かろう。媒体を使えば少しは楽に詠唱出来ようぞ。」


 先程の話から暗いままのディアナは俯き目を閉じた。


「そして、不死者……いやクロよ。先程の一撃はあの人の様な見事な一撃であった。が、体が出来ておらずお主や魔女への負担が大きすぎるの、体を作り鍛練するが良いの。」


 俺にも来た、やはりあの時の痛みは体がついて来ていない為の負傷だった様で、トキヨミ様も困り顔をしている。

 俺達それぞれに助言を言い終わったのか、トキヨミ様はもう一度見回すと


「妾には見る事しか出来ぬからの。とにかく色々疲れたであろう、村に帰り休むがよい。」


 それだけ言うと静かに目を閉じた。


 見計らったかの様に目を開けた、案内をしてくれたエント様は俺達に付いて来いとだけ言い歩き出した。

 ディアナを中心とした重々しい空気の俺達は、長の計らいにより一人一部屋を充てがわれ、皆それぞれが何やら考えているのか何か言葉を放つ事も無く各々の部屋に入って行った。


「鍛練か……」


 俺の呟きが、木の幹をくり抜かれた様な広くも無いが決して狭くも無い部屋の中に響く。

 ディアナへの負担と言われてしまうと、何もしないと言う訳にはいかないなぁ……


 俺が考え事をしていると外から、木を叩く音と控えめなナダちゃんの声が聞こえて来た。

 返事をして扉を開けると、頭を下げたナダちゃんとそれなりの年であろう皺の刻まれた森人の男性が立っていた。


「トキヨミ様から指示で来て貰いました。話を聞く様にとの事です。」


 男性は俺と目が合うと深く頭を下げた後、恐る恐るとした感じで部屋に入って来た。

 忙しなく目を動かし落ち着きの無い感じで俺の前に片膝を付くと


「突然の訪問失礼します。自分はロマと言います、何やらクロ様も魔女の拐い人であるとの事で……」


 ()って言う事はロマさんも魔女の拐い人なのか?

 始めて会う人だが途端に親近感が湧いて来た。


「ロマさんも何ですね、是非とも話を聞かせて貰えますか。あぁ、堅苦しいのは無しで俺の方が年下ですし気軽にお願いします。」


 何やら緊張している様なので、出来るだけ明るく言ったのだが、


「滅相もないです。トキヨミ様から抱擁と口付けをされた方に気安く話し掛けるなど」


 あぁ……天井を見上げ俺は深いため息を吐いた。



 ーーーーー


 トキヨミ様に言われてからずっと考えてたけど……駄目ね、頭の中がぐちゃぐちゃで落ち着かないわ。

 外の風に当たりに行こう、クロもどうせモヤモヤと考えてるでしょうし誘って……


 考えながら部屋を出た私の耳にクロが誰か男の人と話してる声が聞こえて来る。


「クロの部屋にお客さん?……仕方ないわね。」


 私は一人呟き、私達に充てがわれた建物を出た。

 けどこの村で知っている場所なんてハヤトの家か、トキヨミ様の所しかないし……私は一人覚悟を決めてトキヨミ様の聖域に行く事にした。


 これと言って迷う事も無く辿り着くと、トキヨミ様は変わらずそこに居た。


「魔女よどうしたのじゃ?」


 私に気が付くと少しばかり不思議そうな顔をして聞いて来た。


「すみません、どうも落ち着かなくて……」


 嫌いだと言われた相手の所に何で来ちゃったんだろう……トキヨミ様の所に着いた途端、自分の迂闊な行動を後悔し始めていた……


 トキヨミ様は少しばかり遠い所を見る様に


「妾はな、お主ら魔女の始祖と契約を交わしたのじゃ。」


 何の気紛れか、はたまた優しさか、トキヨミ様は古い古い昔の事をまるで一人ごちる様に話し始めた。


「お主、童話『魔女の拐い人』は知っておろう?王様に若返りの魔法の所為で知恵と体の一部を奪われた話じゃがな、あれには続きがあるんじゃ。そもそも若返りの魔法など存在せぬしの。」


 そう呟き笑うトキヨミ様は、今にも泣き出しそうな表情に見える。


「そもそもの話しあの童話はの、魔女に伝わる話とその他で伝わってる話がそもそもちがうのじゃ。妾から言わせると何を勝手なと思うがの。」



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