25話
その生えた、いや下半身が木に飲み込まれた様な妙齢の女性は俺達を一通り流し見すると、
「来たか。魔女に不死者、土の民と人間に森の民それと魔物とは、随分な組み合わせじゃな。妾はトキヨミじゃ、まあ時間はそんなには無いが膝を崩して座れば良い。」
トキヨミ様は楽しそうにそう言うと、カール君を指差し
「土の民の娘よ、それは妾への供物かえ?」
そう楽しそうに言い楽しそうに笑った。
フォルスは慌て、必死にカール君を後ろにやり隠す様なそぶりををしつつ
「ごめんなさい、カール君は旅の仲間なんです。差し上げる事は出来ません。」
体が小さく全くカール君を隠せて無いが、隠そうとする様子を見て、恍惚とした表情を浮かべるハヤト
それらを見てトキヨミ様は笑みを浮かべ、悪戯っ子の様な表情をすると
「冗談じゃ、妾は生き物は喰わぬ。しかし土の民の娘よ、そやつはメスぞ。いずれチカラになる、大事にしてやるといいぞえ。」
そう言ってひとしきり笑った後、腕を組み俺とディアナを見る。
うん、裸で腕組みって目のやり場に困る……などと考えていたのだが、
「何じゃ不死者の小僧、色欲はまだ残っておるのかえ?」
不思議そうなトキヨミ様の発言に皆の視線が俺に集まる……
ディアナとフォルスからは視線だけで殺されそうだな……
困惑する俺に、したり顔のトキヨミ様が手招きをして来いと言う。
俺が恐る恐るトキヨミ様に近づくと、トキヨミ様が手を伸ばして来た。
一度後ろを振り返りディアナを見ると、顎で行けと合図されてしまい覚悟を決めた俺はトキヨミ様の手を取った。
俺がトキヨミ様の手を握ると、そのまま引き寄せられ胸に抱き締められてしまった。
狼狽える俺と何やら後ろから聞こえる叫び声。
そんな事を一欠片も気にせず、トキヨミ様は俺の耳元で
「不完全な不死者よ、お主の傷は魔女の魔力が癒し魔女が傷付けばお主も傷付く。お主が死ねる時は魔女が死ぬ時じゃ、大事ならば守るが良い。しかしの、今のままの剣術を知らぬお主には守る事は出来ぬ故、昔の剣聖の記憶をやろう、精進せよ。」
そう言うとトキヨミ様は俺に口付けた。
濁流の様な情報が俺の頭の中を駆け巡り、俺は襲い来る頭痛と共に気を失った。
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トキヨミ様に抱き締められ、口付けをされたあの馬鹿は頭を抑えよろめきながら倒れてしまった。
倒れたのは心配だが、何だろう胸がモヤモヤと苦しい
「我が同胞が育てし未熟な魔女よ。」
さっきから魔女、魔女といったい何なの?
「トキヨミ様、申し訳ありませんが魔女とはどう言う事なのでしょうか?私には意味が分からないのですが。」
少しばかり苛つきながら言う私を見て、実に楽しそうに
「何じゃ聞いておらぬのか?妾の同胞から魔女を拾ったと聞いておるがのぉ。」
拾われたのには間違い無いが、魔女?大婆様から聞いた事も無い。
「何かの間違いでは……」
「妾は間違いは犯さぬ。不死の眷族を連れておるのが魔女の証拠になろうぞ、ただお主の文言が完全には届いておらぬ故、少々不完全ではあるがな。」
不完全な不死の眷族……クロのことよね?
確かに言葉が伝わらなかったとか言ってた様な……
私があれこれと考えているとトキヨミ様が手招きをする。
小さく溜息を吐き出し近付くと、トキヨミ様は私の左胸を指差す
「ここにあるであろう?二匹の蛇がお主と小僧を繋ぐ証じゃ。小僧は欲が完全に消滅する事なく残っておる。お主と共にで無いと、死ぬ事も叶わぬと言うのに……哀れよの」
責められている気がする……確かにあの時返事を待たなかったけど……
「けど!あの時私と契約をしていなかったらクロは死んでたわ!!」
トキヨミ様に言われたのが悔しくて声を上げてしまった。
トキヨミ様は今迄の笑顔を潜め鋭い眼差しで私を睨み
「ふん、妾は魔女が嫌いじゃ。契約を守る素振りも見せず厚顔無恥にそのチカラを使う、お主達、魔女が嫌いじゃ!」
声を張り上げたトキヨミ様は、私との話は終りとばかりに目を閉じナダちゃんを指差し呼んだ。
ナダちゃんと何やら和かに話すトキヨミ様をただ呆然と見つめる私に、俯いたフォルスが近寄って来て
「ディアナちゃん……ディアナさんは何も悪くないです!ディアナさんが契約したからクロさんだって……」
顔を上げたフォルスが目に涙を溜め私を慰めてくれる……
今にも涙が溢れそうなフォルスを抱き締めると私まで泣きそうになる
「ありがとう。けど私がちゃんと知りもしない契約を、言葉の分からないクロに勝手にしたんだから……トキヨミ様の言う通り可哀想なのはクロなの……」
未だトキヨミ様の横に倒れたままのクロに私達は目を向けた。




