24話
「そんな訳ありません!!っ……申し訳ありません。」
いきなり声を上げたナダちゃんに驚き皆なの視線が集まると、頭を下げ後ろに下がった。
ナダちゃんを見た後、軽く頭を下げたハヤトは
「申し訳ない、この森を守ってる森人達が本当に守っているのは、この森に居を構えているエント様なんですよ。ナダやこの森に住む者達にとっては神様なので、育てられたと言うのが信じられないんでしょう。」
そう言いハヤトはナダちゃんを一瞥して、俺達にまた軽く頭を下げる。
「いいわよ……」
ディアナが小さく小さく呟いた。
「しかし、そう言う事でしたらエント様達に聞きに行かねば駄目ですね。……ナダ、長に連絡を」
ハヤトの話が終わるや否やナダちゃんは頭を下げ部屋を出て行ってしまった。
「それじゃあ行きますか。あっフォルスたんは僕と手を繋ぎましょう、迷子になると困りますからね。」
そう言い手を出す、ぶれないハヤトからそそくさと逃げるとディアナの後ろに行きカール君の手綱を握るフォルス。
俺とディアナは苦笑いを浮かべながらハヤトの部屋を出て、何もない無駄に長い廊下を通り外に出た。
玄関から出るとそこは、賢者の森よりも遥に大きい木に囲まれた小さな集落だった。
首が疲れる程高い木に見とれ思わず呟く
「ここの木々は樹齢何百年何だろう?」
「この村を囲む木々は千年はゆうに超えております。」
突然聞こえて来た声の方に向くと、長い金髪を靡かせ尖った耳を見せる腰の伸びた皺深い老人とナダちゃんが立っていた。
「ハヤト様お帰りなさいませ、お客人はようこそいらっしゃいました。ワシはこの村の長のヌギと申します。」
そう言いハヤトとヌギは握手をすると俺達を見やり、何度か頷き
「それではエント様達の所まで案内致しましょう。此方です。」
とても老人と思えない足取りで、俺達を先導するヌギは大木の間を滑らかな馴れた足取りで歩いて行く。
途中、所々で木々の上から視線を感じ上を見ると金髪の人達が手を振ってくれる。
カール君がやたらを木に体を擦り付けながら来るので遅れ気味だが、フォルスが引っ張りながら一生懸命着いて来ている。
やがて木々に囲まれた拓けた場所迄案内してくれたヌギは軽く頭を下げると
「此処で暫くお待ち下さい。」
そう言うと元来た道を歩いて行く。
残された俺とディアナ、フォルスとカール君は見慣れない木々に見惚れ、ハヤトはチラチラとフォルスを見やり、ナダちゃんは緊張した面持ちでハヤトの斜め後ろに控えている。
俺は目の前の大きく、そして曲りくねり蔦の絡みついた古木に見惚れていた。
その周りの木々よりも一回りもふた回りも太い雄々しい幹を摩ると、僅かに動いた気がし
「なぁディアナ、この木動いた?」
軽く聞くと頭を叩かれてしまった。
「あんた、失礼な事をするのは辞めなさい。」
そう言うディアナは一歩下がると上を見ろと言いながら小さく頭を下げる。
フォルスが小さな悲鳴を上げるのを聞きつつ見上げると、古木の節の様に見えた所が瞬き二つの目が現れた。
「随分……面白い客……だの。魔女と不死者……土の民に……魔物、我が民に……人間よ……トキヨミ様が……呼んでおる。」
話し掛けられ、俺とフォルスは腰が抜ける程驚いたのだが、ディアナは全く驚きもせず挨拶をしている。
ディアナの大婆様もこんな感じなんだろうか?
エントは少しばかり目を細め、俺とディアナを睨み付けると
「ビワの所の……魔女と不死者……森で……の我が同胞を……焼き、折った事……は、今は……許そう……いずれ芽が……出……また元に……もどる。着いて……来るが……いい。」
俺とディアナは顔を見合わし大きく頭を下げる。
ゆっくりと独特のイントネーションで話す古木のエント様は、大きく大地を響かせ森の更に奥に進んで行く。
流石のハヤトもトキヨミ様と聞き、少しばかり挙動不審になり、ナダちゃんは今にも倒れてそうな顔色だ。
ズシンズシンと歩くエント様の前の木々が左右に幹を揺らし、避ける様に道を作っていく。エント様は大きな歩幅で歩いて行くので、遅れない様に俺達は必死で走った。
ややあってエント様はその大きな歩みを止める。
この森では小さな部類に入る木の前で足を止めたエント様は、大きな手の様な枝を使い俺達を前に押し出し、節の様な目を静かに閉じた。
そこで見た物に言葉を失う俺達。
この森では小さいと言っても十分大木の部類に入る、木の幹の中程より下の方から、ディアナの様に白い髪をした裸の女の人の上半身が生えているのだから……




