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23話

 板目の綺麗な床に置かれた楕円形の円卓を囲む様に、俺達は少し硬めの椅子に腰を下ろすと、ナダちゃんが静かにお茶を並べ始めた。

「それで、取り敢えず聞きたいんだけど転生者とかって何なの?」

 お茶で口を潤したディアナが、早速とばかりに聞くのだがハヤトはニコニコと笑みを浮かべたまま

「クロさんディアナさん怪我は治りましたか?」

 珍しく真面目な顔のハヤトに言われ皆の視線が集まる。


 俺達はお互いを見やると、今しがた迄あった数々の裂傷が綺麗に無くなっている。

「なっ……ハヤト何をしたんだ。」

 驚きに目を見開き尋ねる俺に、ハヤトは誇らしげに扉の横に立つナダちゃんを指差す。


「お客様、差し出がましい事ですが森人の薬をお茶に混ぜさせて頂きました。」

 ニコリと微笑み小さく頭を下げたナダちゃんがそう教えてくれた。

「貴方も海老の真似……」


 ディアナが何やら呟いているがそれよりも、

「森人……エルフと言った方が伝わりますよねクロさん。」

 ハヤトがそう教えてくれたが全く意味が分からず首を傾げると、何故かハヤトも首を傾げる。


 不思議そうな顔をしてディアナやフォルスを見て

「えっクロさん日本人でしょう?転移者ではないんでしょうか?」

「ニホンジン?ごめん分からないけど……ディアナ分かる?」

 ハヤトの口から何やら聞き覚えの無い単語が出て来たのでディアナに聞いてみるも首を横に振る。


「ハヤトさん、クロにも私達にも分かる様に教えて貰ってもいいかしら?」

 ディアナが気になったのかハヤトに質問をしてみると、ハヤトはお茶を一口飲み話始めた。


「僕の生まれ育った所は地球と言う星の日本と言う国なんです。で、何らかの形でこの世界に来たのが転移者や転生者なんですよ。」

 そう言い部屋の中をぐるりと見回し

「選ばれた極一部の人が死に、神様にチカラを貰う訳です。そして、そのままの姿でこっちに来たのが転移者、黒髪の一族や勇者と呼ばれてる人達です。そして神様との記憶を持ったままこの世界に生まれ変わったのが転生者と言う訳ですね。」


 そこで区切るとハヤトは俺をまじまじと眺め

「クロさんの顔は明らかに此方の人達とは違う、日本人顔なんですよ、凹凸の少ない顔ですから。地球にも此処の人達の様な顔の人達、人種は居ますがこの世界に日本人顔の人種は居ないんです。」


 あまりの事について行けず言葉を失う俺だが

「クロは賢者の森で倒れてたのよ、最初は聞いた事もない言葉を話して居たけど……急に言ってる事が分かる様になったのよ、早く早くってね。で、話を聞くと記憶が無いと……だから場所が場所だし魔女の拐い人なんだろうなぁって……実際どうかは知らないわ、けど……こいつは私の下僕で家族なの、ニホンジンかどうか何てどうでも良いわ。」

 ディアナは早口で捲し立てるとズビビとお茶を飲み干した。


「ふむ、分かりました。それでは次に魔女と不死者ですけども……フォルスたんどうしました!」

 眼鏡を直し難しい顔をしていたハヤトだが、フォルスがおずおずと手を挙げると途端に喜色の顔になった……こいつは……俺は呆れ大きく息を吐く


「あたし不死者に関しては心当たりが……」

 その言葉に目を見開くディアナとハヤト。フォルスは俺を見てから

「不死者と言うのはクロさんで間違い無いと思います、怪我が瞬く間に治り首が飛んでも生きていますから……」

 ディアナが見開いたままの目で俺を見つめ

「あんた、私との契約はどんな傷も治るなの、ただし私も魔力を消費するんだけど、首が飛んでもってどう言う事なの?」

 聞かれても記憶が無いから答え様が無いんだが……


「ディアナさん、ひょっとしてですけど……どんな傷もって首が飛ぶ様な傷も適用されてるのでは無いでしょうか……」

 フォルスの言葉を聞きディアナは顔を顰め、ハヤトは眼鏡を外した

「ふむ、クロさんの不死性がディアナさんとの契約なのか、魔女の拐い人としての能力(ギフト)なのか、はたまた転移者として神様から貰ったチカラなのか……現状では分かりかねますねぇ。」


 何だか重くなった空気から逃げたくて、ふとカール君に目をやるとナダちゃんが撫で回して居る。

 が、視線を感じたのか目が合ったナダちゃんはそそくさと元の位置に戻ってしまった。ちらりと髪の間から見えた長く尖った耳を見ていると、横の席にいるディアナに蹴られた。

 思わず睨むと睨み返されてしまった……俺が何をしたと言うんだ……


「ではディアナさん魔女と言うのは?」

 そう、気になるのはそこだ。俺の記憶を奪ったのは魔女らしいし、ディアナは何か知ってるのか?

 ハヤトは眼鏡をかけ直しディアナに問い掛けた。


「分からない、大婆様からも何も聞いて無いし……私は只の人間よ。」

 少しだけ俯いたディアナがそう呟く

「ふむ、大婆様に聞きたい所ですが、ご存命ですか?」

「まだまだ死なないわよ、多分千年ぐらいは。大婆様はエントだもの。」


 何故か扉の横のナダちゃんが大声を上げた。







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