15話
「え?物凄く見られてるけど……どうした?」
視界が戻って来た俺は立ち上がり何だか凝ってる首を鳴らしていたのだが、尋常じゃ無く見られてる。
どう言う状況なんだ……村の人達が化け物を見る様な目で此方を見て来る。
周りを見ても何も居ない、もしかして後ろに何か居るのかと振り返って見るが何も居ない。
村人達に目を凝らせば顔をビチョビチョにして目を剥いているフォルスが逞そうなおばさんの後ろに見えた。
記憶を遡ってみる、コウイチの最後の言葉を思い返すに何らかの方法で俺の意識を奪いディアナを連れ去った……
「……はっ、ディアナはどっちに連れて行かれた?今すぐ追えば間に合うか」
状況を思い出し、どれくらい気を失っていたかは分からないが走り出そうとする俺を呼び止める声が聞こえた。
「待って……クロさんだよね……とりあえず待って欲しい。」
いつもより少し震える声のフォルスが立ち上がり俺を見ている。
「クロさん……素早いゾンビだったのですね、ズルいと思います……」
涙と鼻水を拭いたフォルスが真顔で訳の分からない事を言ってくる。
「いやいやいやっ!俺だって一生懸命生きてるから!確かに弱っちいしボロボロだけれどもいきなりそんな酷くないか!!」
俺らしくないと自分でも思うが思わずつっこんでしまった……
そんな俺を村の人達は遠巻きに見ていたのだが、小さな男の子が恐る恐る寄って来て俺の顔を見ながら
「いってぇ!何しやがる!」
クソガキは脛を蹴り上げそそくさと逃げながら
「お化けの兄ちゃん生きてたー」
と、親と思われる人に話し掛けている。
脛を擦りながらクソガキを睨む俺に小屋の所に居たおっさんが近寄って来る。
近寄って来ると物凄く大きく何処かで見た事ある様な気がしてきた、赤銅色の角の生えた……
「小僧どんな魔法かは聞かねぇが取り敢えずは無事なん「おっさん鬼族なのか?カムラのゴードンさんの知り合いだったりするの?」……」
思わず遮ってしまったが、おっさんは少しばかり目を見開きニヤリと笑うと俺の肩を叩いて来た。
「おうおうあいつの知り合いか、ゴードンはオレの親友だぞ。それならそうと早く言えよ、ハッハッハ。取り敢えず中に入ってけ。」
おっさんはフォルスを手招きし、俺の肩を叩きながら村の入口の小屋に入って行く。
石を組み上げて作ったと思われる小屋はなかなかの広さで十人ぐらいなら寝泊まり出来そうな部屋の中に槍やら斧やら鍬やらが乱雑に置かれていた。
キョロキョロと見ているとおっさんは部屋の真ん中に敷いてある大きな毛皮に俺を座らせ、自分も座った。気が付けばちゃっかりとフォルスも座っている。
「で、だ小僧、名前は何て言うんだ?フォルスの嬢ちゃんの事は知ってるがお前の事は何も知らねぇ。」
おっさんはさっきまでの柔らかい表情を崩すと俺に聞いて来た。
「お前は何者でこの村に何の用だ?」
流石は鬼族って事なのかおっさんからの圧力がとんでもない、正直なところ今すぐ回れ右してディアナを追い掛けたいがこのままではどうにもなりそうに無いし、フォルスも何だか不安そうな顔で此方を伺っている。
「俺は記憶が無いんだ、ゴードンさんが言うには魔女の拐い人らしく賢者の森で死にかけてた所をディアナ……さっきの白い髪の女の子に助けて貰ったんだ。」
気持ち震えてる声を抑え剣と脱いだプテルスの上着を目の前に置き
「その後、森で亜人に襲われ河まで走った所でゴードンさんに助けて貰った。その時に貰ったのがこの剣と上着なんだ。なんせ手ぶらでボロボロだったから心配してくれたんだと思う。で、ゴードンさんの所を出て途中でフォルスと会って仲良くなってこの村に辿り着いたんだ。……俺の事はこれ以上説明しようが無い……」
「て、事は正体が分からねぇ怪しい奴ってのを否定出来るものは無いと……」
俺の話を聞いたゴードンがフォルスを見ながら確認してくる。
「あたしがディアナから聞いた話と一緒だからマトロさん大丈夫だよ……」
フォローしてくれているフォルスの言葉が終わる前に、おっさんは俺の置いた剣を掴むと伸ばした俺の右手首を切り飛ばした。
「っおっさん!!」「マトロさんっ!?」
俺は慌てて血を吹く手首を抑え、フォルスはおっさんの肩を揺らす。が、おっさんは慌てる事も無く俺の右手首を指差すと何か感心したかの様に
「それが魔女からの能力って訳だな。まぁ首が飛んでもってのはやり過ぎだと思うがな。」
おっさんに指摘され右手首を見ると血だらけの手首の先には綺麗な右手が付いていた。




