13話
幸いな事にフォルスがぶつ切りにしたプテルスは、流されていると言う事も無く、三人で再び集めた薪で焼く事にした。
「あれですね、ディアナさんは王都に用事がありクロさんも付いて行くとなるとあたしも付いて行っていいでしょうか?現金な話、あたし褒美が欲しいんですよね。」
枝を刺されたプテルスの切り身を囓りながら欲望に忠実なフォルスが聞いて来た。
ディアナは手持ちのナイフで身を解しながらディアナを見ると
「良いけど、身の安全は保証しないわよ。」
等と意味の分からない噛み合っているのかさえ怪しい会話を繰り広げている。
それを横目に俺は、完全に消えた脇腹の傷と生えて来た右手をプテルスを食べながら擦ってみるが、あれは幻や夢だったのかと思わせる位に五体満足の状態だ。
「ふむ。このプテルスって白身で意外と美味しいな。所で何だけど王都に行って俺を引き渡すとしてディアナはその後どうするんだ?」
「何言ってるのよ、あんたは家族みたいなもんでしょ引き渡す訳が無いでしょ。」
何の気なしに聞いてみると 意外な答えが返って来た。
多分俺が意外そうな顔をしていたのだろうディアナは
「下僕のあんたが居ないと不便でしょ!」
そう言うと目を逸らしプテルスを解し出した。
ディアナの相変わらずなよく分からない反応に苦笑いを浮かべつつフォルスを見てみると何だかニヤニヤとしながらプテルスに噛り付いている。
小さな体で大きな肉を食べている様子はリスみたいだなと、未だ空腹感も満腹感も無い自分の腹を撫りながらボンヤリと考えていた。
結局、大した会話も無く食べ終わると、焚火を囲んだまま眠気の来ていない俺に見張りを任せ二人共眠ってしまった。
しばらくすると疲れていたのか二人共静かな寝息を立て始めた。
「はぁ……何だろう色々あり過ぎて何だかちゃんと考えれてないけど……俺は何だろう、何処から来たのか誰なのか……ディアナは剣士だって言うけどそれすらも分からないし何より……」
右手を見つめ頭を振り
「俺は人間なのか?」
紫色の空に吐き出した。
何事もなく朝日が昇る頃、もぞもぞと起きたディアナは何時もより少しばかりボンヤリした目で
「あんたねぇ、普通交代するでしょ……起こしなさいよ、寝不足で倒れても知らないわよ。」
「あっごめん次はそうする」
心配してくれたディアナに謝り、今日の予定を聞こうとした所で丸まっていたフォルスから声がしてきた。
「大丈夫ですよ今日の昼頃には近くの村に着きますから。夜は宿にでも泊まりましょう。知らない村って訳じゃ無いので案内は任せて下さいね。」
赤いポニーテールを揺らしながら胸を張るフォルスに笑みを浮かべながら、俺達は焚火に土をかけズンズン進んで行くフォルスを追いかけた。
河から少しずつ離れ草原を歩くフォルスは時たまニコニコしながら振り返ると、村に一軒だけある食堂が絶品だとか門番のおじさんの娘が可愛らしい等々楽しそうに教えてくれた。
「フォルス本当にその村によく来るのね。」
楽しそうに会話する二人を眺めつつ前の方に目を凝らすと畑を耕す老人の姿が見えその奥に村であろう家々が見えて来た。
畑の奥の小屋の横に居るおじさんに気付いたフォルスが手を振ると和かに手を振り返して来た。
小屋のある所が村の入り口の様で手を振り返して来たおじさんの他に槍を持った男の人も何人かいる様だ。
「何だか随分物々しいけど何かあるの?」
「えっこんなものだと思いますけど?」
不思議に思った俺はフォルスに聞いてみるが、どうやら気にし過ぎたみたいだ。
村の入り口が近付くにつれ村人が集まって来たのか小屋の周りにはちょっとした人垣が出来、旅人が珍しいのかやたらジロジロと見られる。
フォルスは知り合いと思われる人達に手を振り大声で挨拶を繰り返しながら先さきと行ってしまった。
「何だかジロジロと嫌な雰囲気だね」
と、横に居るディアナに小さく呟くと苦笑いをして
「あんたの顔とか髪色は珍しいんだから諦めなさい、ジロジロ見られても一緒に居てあげるから。」
そう言うと俺をチラリと見て右手を掴みフォルスを追いかける様に引っ張り出した。
……子供じゃないんだけどなぁ……
何だか納得の出来ないまま引っ張られて居ると、前に見える人垣が割れ黒いマントを靡かせ男の人が歩いて来た。
「やあどうも、そこの君転生者?転移者?」
足を止めた俺達に訳の分から無い事を話し掛けて来たのは黒い髪をした少しばかり平たい顔をした青年だった。




