12話
なんでフォルスが能力の事をと少し警戒して見ていると、水に薙ぎ倒された木々の間からひょこっとディアナが顔を出す。
俺と目が合ったディアナは、走り寄って来ると泣きながらいきなり抱き付いて来た。
さっきまでの警戒や疑心、疲れや怒り全て吹き飛ばしてしまう衝撃の一撃だ。
真っ白な思考の俺にディアナは怪我がどうの欠損がどうのと言っているみたいだが、耳を駆け抜けて行く音でしかない。
「あーごほんごほん、お熱い所で申し訳無いですけど出来れば二人の時にして下さいな。」
フォルスの声が届いたのか、ディアナは今更赤い顔をして飛び退いた。
その衝撃で俺が尻餅を付いたのはここだけの話にしてもらいたい。
「……あんたの身に良くない事が起きた気がしたの!そう言うのじゃないんだからね!」
……ディアナが何だか言ってるが……そう言うのってどう言う事だよ。
「まっ……まぁとりあえずは無事だから、俺も含めて皆落ち着こうよ。」
小さく息を吐き二人を見た後周りを見回してみる。
ディアナは何だか赤い顔でぶつぶつ呟いているし、フォルスは含み笑いをしながらディアナを見ている。
周りを囲んでいた木々は少しばかり離れた所から薙ぎ倒され、流された様でごっそりと無くなっている。しかしあれ程の濁流だったのにも拘わらず、地面や残された木々が濡れている様にも見えない。
木々が無くなり開けた上空には見た記憶が無い程の星達が輝き思いの外明るい。
「凄いな……これが魔法ってやつか……」
俺の小さく呟いた声が聞こえたのかフォルスが話し掛けて来る。
「この規模の魔法は初めて見ましたよ。けど、凄いなって感心してますけどクロさんの能力も凄いんですよね?」
言われてハッとする。
「そうだ!能力ってお前何を知っている、何者なんだ」
咄嗟に距離を取りディアナを庇う様に剣を構え睨み付けた。
目を白黒させたフォルスは両手を上げると小さく笑い、はっきりと俺達に告げる。
「クロさん、ギフトって言うのはちょっと分かりませんけど、黒髪の一族が神様から貰ったとしか思えない様な人外の能力を持ってる何て常識じゃないですか。王都でも黒髪の一族を探し保護しているらしいですし。で、クロさんの能力はさっきの足の速さですか?人外ですよねちょっと地味ですけど」
「地味って酷くないかい?大体さぁ……」
少しばかり癪に障り噛み付いてやろうかと思い喋り出すと横から手が伸びて来て遮られてしまう。
「クロはね記憶喪失だから色々知らないの。フォルスのその保護してるって言う話、私も初めて聞いたんだけど良かったら詳しく教えてくれない?」
ディアナは微笑むとそう話し掛け俺を制した。
仕方ないと頭をポリポリと掻き、ちょうど良さそうな倒木に腰掛け聞き役になるとするか。
「ちょっと前の話らしいですけど、王都の賢者様達が未来を見たとかで、各地に散らばっているらしい黒髪の一族を集め出したのが始まりらしくて、何でも黒髪の一族を連れて行くと大層な褒美が貰えるらしいですよ。」
説明をしてくれているフォルスすらも半信半疑なのかどうもはっきりとしない。
「うん……フォルスも正確な所は分かって無い訳ね。詳しい所は不明だけど、どのみち王都には行く訳だから途中で色々情報を集めたら大丈夫かな?まぁあまり信憑性の無い話だけど……」
ディアナは俺を見つつどうやら話には乗ってみるみたいだ。
「ところでさ、そもそも何をしに王都に行くんだ?」
俺は前々からの疑問を聞いてみると、ディアナは俯き何だか少しばかり冷たく聞こえる声で
「お世話になった人達にお返しよ。」
そう言うと踵を返し歩き出した。
俺とフォルスはお互いに見やり、
「いい加減お腹がペコペコです。私のプテルスは何処でしょう?」
フォルスの声と共にディアナを追い掛けた。
暗い林の中をスタスタと行くディアナに追い付き
「所でさ、人間って手が千切れても生えたっけ?」
何となくディアナにだけ聞いてみると
「……は?あんた何気持ち悪い事言ってんの?寝言は寝てから言った方がいいわよ。」
……相変わらず何故俺への当たりがキツいのだろうか……




