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最後の一粒 ~缶入りコーンポタージュ~

作者: イワトノアマネ

寒い日に駅のベンチでひと休み。

こんなはずじゃなかった。

ちょっと覗いただけだった。

何も無ければ良かった。

でも、僕は知ってしまった。

きみの存在を……。


僕は今、きみを見つめている。

きみから目が離せない。

僕は、きみを受け入れたい。

きみを僕の体で包んであげたい。

なのに、きみに僕は触れることすらできない。


きみは暗く狭い部屋の奥で動かない。

入り口が狭くて僕は入れない。

どうすればいい。

もう手遅れなのか。

あきらめるしかないのか。


すべて僕の責任。

こうなる事はわかっていた。

なのに、何もしなかった。

僕が満たされることだけしか考えなかった結果だ。

きみの事をひとつずつ、ゆっくり知るべきだった。


冷たくなったきみから目をそらす。

こんな事になるなら出会わなければ良かった。

満たされ、温もりのあるうちに振っておけば良かった。


僕はゆっくりと立ちあがり歩き出す。

僕はきみを捨てた。

真っ暗な穴の中に……。


きみと出会ったのは、寒い冬の朝。

駅のホームに並んだ自販機。

ボタンを押して携帯をかざす。

手にした熱い缶を両手で握ったり転がしたり。

僕はベンチに座って、缶を振った。

ふたを開けて味わいながら暖まる。

きみ達が僕の中へと入って来る。

そして、きみだけが残った。

最後の一粒。

~缶入りコーンポタージュ~

叩き落してやる! って感じのアクションものにもなりそうな優秀な飲み物。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 缶の底に張り付いた最後の一粒が取れないもどかしさ、すっごく分かるなぁって思いました。 ココノハさまの手で描かれると、ちょっぴり切ない恋愛もののようなロマンチックなストーリーになって、映画…
2019/09/02 19:00 退会済み
管理
[良い点] 悪魔の飲料ですよね。 今のブームは一つ残ったタピオカですね。 あいつがなかなか吸えないのです。
2019/07/28 16:52 退会済み
管理
[一言] すぐそばにあるのに手が届かないものですよね~。 と、ロマンチックにいうもののムカつきますよね。あれ。かと言ってないと物足りない。
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