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ーーキィーッ!!
目の前に迫ってくる鉄の塊。
家に帰る途中にある信号が青になったので、交差点を横切ろうとした時だった。
黄色になった信号見て、スピード上げたが、間に合わなかったのか、そのまま青になった交差点に突っ込んできたのは、1台のトラックだった。
そのトラックは俺の目の前まで迫って来て、そのまま俺はーー
ーーキィーッ!!ゴガンッッ!!
「っぶねー!!んだよこのトラックっ!!ざけんなはげぇーっ!!爆ぜろっ!!」
いきなり突っ込んできたトラックに驚き、尻もちをついてしまい、そのお陰で轢かれることは無かった。
無かったが、流石に一歩間違えたら死んでいたかもしれないので、つい口から罵倒が出てしまった。
「クソッ!なんなんだよコイツ!?信号青だろーが!見ろしハゲ!後ちょっとで死ぬとこだったぞっ!」
幸い、と言っていいのか、怪我をしたのは通行人には見当たらず、トラックの運転席はここからでは良く見えない。
だが、もし怪我をしていても自業自得だろう。
俺はこの後にバイトが入っているので、サッサと帰ることにした。警察を呼んだりとかは、他の人がやってくれるだろう。
その後は何も起こらず(普通は何も起こらないが、事故りかけた後だからか、少しビクビクしながら)家の前に到着した。
「つか、まじで危なかったなー。あのままコケてなかったら、良くて入院、悪くて死んでたな。あー、慰謝料とか貰えたのかねぇああいうのって?しっかし、トラックかー。異世界転生とかあったのかねぇ?死んで目が覚めたら神様から、『あなたは死にましたー』とか言われて......。まぁんな事ある訳ねーか、ハハッ」
馬鹿なことを言いながら鍵を回す
「あれー?鍵、開いてる?閉め忘れた?おっかしいなー、閉めたと思ったんだけど?......まさか泥棒とか入ってないよな......?」
開いていたドアをくぐり、自分の部屋へ向かう。バイトまで時間が迫ってきていたためすぐに準備してむかわなければ、間に合わなさそうな、ギリギリの時間だ。
「ヤッベー、早く行かないと店長や先輩にドヤされる。遅れたら事故のせいにしよっ。よしゃ、いくかー」
準備が終わり、自転車の鍵をもってバイトに行くために玄関に向かう。
ーーカサッ
「ーーん?」
今、何か聞こえたような......?
「......気のせいか?やべっ!遅れる!」
風かなにかかと思い、音について何も気にすることはなく、そして時計の針がバイト開始時刻に刻々と迫っているのを見て、音のことは、完全に頭から抜けてしまった。
ーーそれが自分の生命を左右するとは露にも思わずに......。
ーーザクッ
「......は?」
後ろから、いきなり衝撃が来た。
その後、背中に熱を感じた。
グラッーーバタン!!
「......は?............え?」
コケた。
何故かコケた。
何が起こったのか理解できない。
なんだ?何が起こったの?
フッと影が降りた。
なんだ?
なんとか体を動かし、その影を作ったものを見る。
人。
人がいた。
ニット帽にマスク、サングラスをかけた、全体的に黒い男。
なんで俺の家に知らない奴が居るんだ?
なんでコイツは鈍く光る刃物を剥き出しにして持ってんだ?
なんでその刃物に血がついてんだ?
その血は、誰のものだ......?
それら全てを理解した時、激痛が走った。
「......ッガアアアッァッァアァッァア!?アアアアアァアァアァアッァアァアア!!!!」
痛い!!痛い痛い痛いいたいイたいいたイイタいイタイいたいぃィィいぃいぃいィィイイぃいいいィィぃぃぃい!!!!
背中が焼けているように熱を持っている。
刺された。
そう、俺はどうやらこの男に刺されたようだ。
「あ......ガアァァァ!あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
痛い。とても、とてつもなく痛い。
背中を刺されたくらいでそんな大袈裟な、とか思うかもだが、普通に暮らしていれば、痛みなんてぶつけた痛みとか、料理で指を切ったとか、そんな程度の痛みしか経験しない。
だが、今回はそんな程度じゃなくてズブリと刃物が半分以上も背中に沈んだのだ。それは痛い。もう言葉が出ないぐらい痛い。喋ろうとしたら悲鳴が代わりに出るほどだ。
「あ......が......」
どんどん血が流れ出ているのか、何だか寒くなって、眠くなってきた。
トラック事故に遭って、もう今日の不運は無くなったと思ったが、強盗に刺されて死ぬ、という不幸まで来るとは......。
あー、そういえば、ラノベの新刊とか、買い忘れとかまだ買ってなかったなー。積んであるラノベも消化してないのめっちゃあったし。あーぁゲームもやってないの多いのに......。
そんな事を考えながら、俺は、死んだ......。