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始まり

「お世話になりました」そう言って出てきたのは、俺が懲役何年かを過ごして来た刑務所だ。


毎日毎日寝床と食事を用意してくれたのは本当に有り難い。これからどうやって過ごして行こうかなってぼんやり考え過去を少し振り返ってみた。


俺、山梨健児は、もう少しで50になるオジサン。あまり認めたくないが…世間的にはオジサンと呼ばれる年齢だ。

白髪混じりのボサボサの髪をガリガリ掻きながら、考える。

俺の家族は両親と妹の絵里がいた。両親は服役中に他界し、妹には絶縁されてしまっている。確か、実家はまだあるとか言っていたな…帰ってみるか。と目的地が決まり少し嬉しくなった。

駅に向かう途中にそもそも何で刑務所に入ったんだ?と思った。


そうだ獣だ!


獣というのは俺の心の中にいる黒い大きな犬か狼かという感じの、鋭い牙を持った相棒だ。こいつに願うと常人を超えた力が手に入る。しかし間違った使い方をすると、この通り刑務所に入る事になる。確か20代の頃に俺の中に入って来て住み着いてしまった。


医者に話したら人格傷害を疑われて、それからは誰にも話した事がない。しかしこの獣の力を借りると、非常に疲れるので余り使いたくないのだが、今回は、男に襲われている女の子がいたから、助けようとした。だけど相手は思っていたより大人数でナイフや武器を持っていた、仕方なく俺は獣の力をかりたんだ…だけど、勢い余って大怪我を負わしてしまった。俺は無傷だったし助けた女の子は怖がって引きこもった、男どもは武器なんて無かった、ただのナンパだって言い張った。俺の言い分は認められず相手の言い分が通った感じで刑が言い渡された。


っとまあ、そんな事を考えながら、駅から電車に乗り何年かぶりの実家のある駅に着いた。風景は凄く変わっているが、何処と無く面影はある。


確か、ここを曲がって、ここだ!っと、さすがに誰もいないのは直ぐに分かった。鍵は勿論無いし長年放置されていたのだろう。完全に廃墟だ。家の周りを回ってみると硝子戸が割れていたので、そこから入る事にした。


時間も時間となり辺りは暗く、疲労と空腹で眠気が来た。

実家にいるのが妙に心地よくて久し振りに母の手料理が食べたくなった。すると、急に寂しさや死に目に牢獄にいたという申し訳なさが感情をぐちゃぐちゃにした。「母さんごめん……」誰にも聞こえない謝罪を口にし涙した。どこで間違えた?やり直したい!そんな気持ちがぐるぐる頭を廻った。





「仕方のない子」




とても優しい女性の声が聞こえた気がして眠りに落ちた…




ちゅんちゅんと朝日と共に小鳥の囀りが聞こえ目を覚ました。

「おかあさーん、ティッシュどこ~?お兄ちゃんは~?」

「はい。ティッシュって、もうこんな時間!お兄ちゃん起こして来て!」

「お兄ちゃ~ん!ご飯出来たよ~!」

どこかで聞いた事のある日常的な自分には関係のない会話が聞こえる。

「だからお兄ちゃんってば!」

ガラッっと扉が開いて女の子が近付いて来る!

「えっ!?」

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