スキル
次の日、僕とナムルさんは、王宮内にある講義室にいた。
僕は、鍵のついた鎖で椅子に何重にも縛られ、ナムルさんは、これまた鍵付きの鎖でグルグル巻きにされた宝箱をニコニコ顔で持ちながら。
僕達が何をしているのかというと・・・
数時間前のこと、僕が昨日と同じように書庫で本を読んでいると、誰かに僕の居場所を聞いたのだろう。
ナムルさんが書庫にやってきて、練習を少し早く始めると言い、僕をここに連れてきたのだ。
それからは、早かった。
ナムルさんは、僕が反応出来ない様なスピードで僕を書き付きの鎖で椅子に縛ったのだ。
「な、何をするんですか!?」
「今日の訓練だ。今日の訓練は、君のスキルの訓練なのだが、まずこの状況と訓練内容の説明をしようと思う。今から君には、その鍵全てを訓練の時間中に解いてもらう。そして自分を縛っている鍵を解けたら次はこっちだ。」
ナムルさんは、そう言って抱えている宝箱を振った。
「時間内に君を縛っている鍵と宝箱の鎖の鍵、それと宝箱本体の鍵、これらを全て解くことが出来たら宝箱の中に入ってる物を君にあげよう」
時間内に全部って、多くない?
大体の僕達は、午前中に4時間、訓練をして昼食を食べ、その後は自由時間だ。
ということは、ナムルさんは、4時間でこのぱっと見ただけでも3桁はある鍵を開けろと行っているのだ。
「あぁ、ちゃんとスキルの使い方は、教えるからその辺は、安心してくれ。それとその日に解いた鍵は、次のスキルの訓練の時には、ちゃんと解けた分だけ少ない状態で始めるから、訓練時間内に全部と言ったが正確には、何日にも渡って解いていくことになる」
4時間でじゃないのか、良かったぁ・・・
それからナムルさんによるスキルを使う為の説明が始まった。
まずスキルとは、2種類あって「〜魔法」の様な適正系のスキル、いわゆる、才能があるから発動しているというスキル。
もう一つは、身体強化の様な自分の任意のタイミングでスキルの発動のオン、オフを切り替えられるスキルだ。
こちらの種類のスキルは、発動している間、常に魔力を使うので魔力が少ないと使いづらいという欠点がある。
僕の鍵開けのスキルも後者に分類されるのだが、何事にも例外はあって、鍵開けを使う時は、鍵1つに一定の魔力しか使わない。
その辺は、魔力のない僕には、とても嬉しいことなのだが、スキルを使うのが結構難しいのだ。
鍵開けを使うには、まずスキルを使う対象となる鍵のを決め、その鍵に魔力を流し込んで、その魔力で、鍵を開けるのだ。
つまりは、魔力によるピッキングだ。そしてそれが鍵開けが"使えない"と認識される最大の理由だ。
そもそも魔力を動かす、というのは、体内ならまだしも、体の外で動かすのは、とても難しいのだ。
それこそ熟練の魔導師が何年も修行してやっと身につけるレベルで難しいと言う。
つまり動かすのもほぼ不可能な物を使って繊細な作業を要求されるピッキングは、不可能だと言っていいだろう。
そんなことを練習するくらいなら、魔力てはなく、自分の手で行うピッキングを練習した方が早いし楽なのだ。
そんなことがあり、訓練が始まっておおよそ2時間程、僕は、自分の鍵の1つすら解けないでいた。
自分の手の近くにあった鍵、1つを掴んで魔力を流し込んだのは、いいが、そこからどうすれば鍵が開くのかわからない。
そもそも魔力が全く動いてくれないのだ。
魔力だけに神経を集中させていて喋れなかったので目線だけでナムルさんに助けを求めてみることに
「ふっふっふっ・・・やっぱり君は、鍵の構造なんて知らないのだろう?だが安心しろそんなこともあろうかと私が自分で調べて来たのだから!」
ナムルさん調べたってことは、ナムルさんも分からなかったんだな・・・ていうか、なんかナムルさんのキャラ最初と変わり過ぎじゃない!?
それから図を使った鍵の構造の説明は30秒程で終わった。
それほど単純な構造だったのだ。
この世界のセキュリティ・・・大丈夫なんだろうか?
「鍵の1つについては、こんなものだ。それと魔力の操作については、体の中で動かす訓練の延長だから反復練習しかないだろう」
はぁ、またあれをやるのか・・・今度は、さらに難しくなった、習得までどれくらいかかるのだろうか・・・
そんなことを考えながら溜息を吐いていると、ある方法を思いついたので、やってみることにした。
まずそれまで魔力を流し込んでそのままだった鍵に意識を集中させてその鍵に全力で魔力を流し込んでいく。
すると、鍵が少しずつカタカタと震えだし、やがて、
ピシッ
魔力を流していた鍵に小さいヒビが入った。そのヒビが引き金となり。次々と大きい亀裂が出来始め、さらに広がっていく、そして遂に、鍵が限界に達した瞬間。
パキンッ
鍵の内部から破裂したように鍵が壊れた。
僕が今、何をしたのかと言うと、鍵が受け付けられる魔力の量を超える、魔力を注ぎ続けたのだ。
書庫にあった本に書いてあったのだが、以外と上手くいった。
「これは、驚いたな。それを躊躇なくやるとは・・・だが、そんなことをすれば魔力量の少ない君がやればすぐに魔力枯渇に陥るだろう」
ナムルさんの声は、聞こえるがなんだかはっきり聞き取れない。これが魔力枯渇の症状なのか?
あっ、もうだめだ。
そこで創真の意識は、途切れた。




