ちぐはぐな戦争
今回は天使族側と人族側、両方の話です。
月が天頂に差し掛かった頃、それは起きた。
森の中にあった転移陣が光り出し、魔力の充填が終わったことを示している。
これは人族が攻めてくるという合図であり、同時に開戦の合図でもある。
転移陣を見張っていた天使族が全速で今回の戦いで司令基地となる、街の中央部へと向かって飛んだ。
「報告致します!ただ今、転移陣の魔力充填が終了した模様です!」
報告を受けたバーナルドは、今まで瞑想をするかのように閉じていた瞼を上げた。
その瞳に写っていたのは燃えるような闘志、今回の作戦、司令塔として戦いには出れないバーナルドには、戦に出れなくとも、気持ちだけは負けない。そんな気概が見て取れた。
「皆の者、此度も奴らは、五年前と同じように我らを捕えようとしている。だが、そんなことはさせてたまるか!今回こそ我らがただの素材ではないと、奴らに教えてやろうぞ!」
「オォォォォ!!!」
バーナルドの決意の言葉にその場にいた全員が沸き立つ。
「皆、配置につけ、森の部隊は少しでも相手に被害を出せたのなら直ぐに自陣まで下がってこい、そこからが本当の勝負だ」
皆の士気が高まったのを見たバーナルドが指令を出していった。
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一方、人族側でそれは静かに始まった。
「プロメギル様、転移陣の用意が完了いたしました」
「うむ、ご苦労。全員、揃っているな?では、この国を害そうとする外道どもに目にもの見せてくれよう」
静かにだが強く告げるプロメギルの前には転移陣により突入する、斥候部隊、本隊、そして人族の切り札たる勇者のパーティが並んでいた。
そして、その彼らが見上げるプロメギルの先には魔力が最大まで充填され準備の終わった光り輝く転移陣が光っていた。
これは天使族は、自らの存亡のもと、人族は偽りの情報のもとに行われる、ちぐはぐな戦争であった。
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まだまだ未熟な文章ですが、日々努力いたします。




